2009年1月31日(土曜日)13時15分~14時30分
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ご列席の皆様、
本日は、錚々たる世界のビジネス界のリーダーの皆様と懇談する機会をアレンジいただき、シュワブ会長はじめWEFの方々に厚く御礼申し上げます。
私も約30年前に政界入りする前、ビジネスに身を置いていました。競争力を失った石炭鉱業の会社を、セメントを中心とするビジネスに変革・多角化する指揮をとりました。その時代から、一貫して「ピンチはチャンスである」との信念を持ってきました。いま世界は100年に一度といわれる経済危機にあります。私の問題意識は、この危機を次の飛躍につなげることです。
日本は、この半世紀で、2つの大きな経済的危機を乗り越えました。
一度目は、73年と79年に起きた石油ショックです。2回の危機を通じて、国際石油価格は約13.5倍になりました。原油の海外依存率約99%にある日本の経済や生活は大きな打撃を受けました。しかし、我が国はこの困難を官民挙げての努力で克服し、今日、世界で最もエネルギー効率の高い社会を実現しました。例えば、日本の発展の中で、石油への依存度は、石油ショック前は73%もありましたが、原子力や天然ガスの導入により現在ではわずか11%にすぎません。
二度目の危機は90年代の金融危機です。バブル経済崩壊の結果、90年から約15年間で日本の市街地における不動産価格は87%下落し、GDPの約3倍の資産が帳簿から消えました。しかし、我が国は、金融面では資本注入、預金の全額保護、不良債権買取り、実体面では積極的な財政出動を通じて、GDP約5兆ドルを維持し、この金融危機を克服しました。
今日、日本は、世界的な経済危機、地球温暖化、高齢化問題といった3つの挑戦に直面しています。このようななかにあっても日本は技術革新を通じて新しい市場と雇用を創出することにより、世界のモデルとなるような活力のある社会と市場を実現させたいと考えています。
私は、本日ダボスにおいて、世界的な経済危機及び地球環境の解決への鍵は制度や技術を革新し、その成果を途上国を含めた世界に普及させるメカニズムを構築していくことであると訴えました。また、そのための精神的エネルギーと情熱を持つために、楽観主義を保つことが重要であることを申しました。これは過去半世紀の日本そして私自身の経験によるものです。
ピーター・ドラッカーは、「未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ(The best way to predict the future is to create it)」と言っています。未来を創るのは私たち自身です。この言葉を胸に、それぞれの国、それぞれの企業が直面する課題に打ち勝っていきましょう。