演説

宇野外務大臣政務官演説

イラク・コンパクト第1回年次レビュー会合
宇野外務大臣政務官 ステートメント

平成20年5月29日
於:ストックホルム

(写真)


フレーデリック・ラインフェルト・スウェーデン首相閣下、
ヌーリー・アル・マーリキー・イラク首相閣下、
潘基文国連事務総長閣下、
ご列席の皆様、

冒頭

 はじめに、イラク・コンパクト第1回年次レビュー会合の開催を歓迎します。スウェーデン政府に会議のホストを深く感謝するとともに、会合の開催に向けたイラク政府及び国連のイニシアティブを高く評価します。

イラク政府・国際社会への評価

 イラク・コンパクトが発足してから約1年が経過しました。この間、イラクでは年次報告書にもあるように、多くの点で進展が見られました。特に最大の問題であった治安が改善しつつあることを、喜ばしく思います。困難な状況の中でもねばり強く問題解決に当たっているマーリキー首相のリーダーシップを高く評価するとともに、多くの国・機関による継続的な支援を賞賛したいと思います。
 また、政治状況については、今年に入り、「責任と公正」法案、一般恩赦法案、地方自治法案が議会で採択される等、国民和解に一定の弾みがついてきたと認識しています。今後、地方選挙法の早期成立による選挙の実施、石油・ガス法案の本年の早い時期での成立を強く期待しています。特に、後者の早期成立は石油・ガス分野における外国企業との安定的なビジネス環境を整備する上でも極めて重要であり、我が国としても特に重視しています。
 我が国はこれまで2回にわたりイラク各派の代表を日本に招き国民融和セミナーを開催しましたが、今後も政治面での協力を継続します。

コンパクト年次報告書

 今回の報告書の中で、イラク政府が「経済・投資」に焦点を当てていることは特に重要です。我が国としても、イラクのニーズに合った協力を行っていきます。この点、我が国は「開発に向けたパートナーシップ(Partnership for Development)」と名付けられたイラク政府からの6つの提案についても、イラクの強いオーナーシップの表れとして高く評価します。

我が国の協力

 経済分野における、我が国の協力の柱は、1)円借款、2)無償資金協力、3)キャパシティ・ビルディング、4)経済交流、の4点です。

(1)第1の円借款については、2003年にプレッジした35億ドルのうち、12案件約24.5億ドルへの供与を決定しています。円借款によるこれらの支援は、電力、運輸、石油、灌漑、上下水道など、現在、イラクが抱えている課題に対応するものであり、それらが早期に効果を挙げるよう、イラク政府による迅速かつ適切な対応を期待します。

 また、我が国としては残りの約10.5億ドル分についても、支援案件をできるだけ早期に決定できるようイラク側との協議や調査を引き続き進めていきます。その際、国民融和と、イラク全土の均衡な発展の観点から、中西部スンニー派地域における案件を重視しています。

 また、債務削減もこれまで着実に実施してきています。

(2)第2の、無償資金協力については、2003年に15億ドルのプレッジを行いました。タジ、モースル、サマーワなどにおける発電所建設等の電力分野や、保健・医療、治安などの分野で既に約17億ドルに上る支援を実施しています。

(3)第3のキャパシティ・ビルディングに向けた協力については、我が国政府はこれまでに約3,500人のイラク人に対し、多岐に亘る分野の研修を実施しています。これらの人材が研修で得た知識を十二分に発揮し、イラクの復興に貢献することを強く望んでいます。我が国の経験に鑑みても、イラクの復興には、イラク人自らによる主体的な取組が欠かせません。その観点からも、技術協力は特に重要です。

(4)第4そして最後に、経済交流の強化です。我が国は、イラク政府とクルド地方政府との協力により7月に、日本・イラク両国の官民が参加する「日・イラク経済フォーラム」をヨルダンで開催いたします。これは、イラクの本格的な復興・発展には、政府による支援だけでなく、民間セクターを含めた活発な経済交流によるイラクの経済成長が不可欠との観点から実施するものです。我が国は、科学技術先進国として、イラクに対し民間経済交流を通じた貢献ができると考えています。

結語

 我が国としても、今後も引き続きイラク復興に協力していく決意ですが、同時にイラク政府自身の継続的な自助努力が不可欠です。更に、イラク政府と国際社会の密接な協力が必要であり、その見地からコンパクトに明記されているイラク・コンサルタティブ・グループが早期に機能することを望みます。またバグダッドにおける大使館の開設を含めイラク政府とイラク周辺国の一層の協力促進を強く期待します。

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