平成20年8月27日
会議の開会に際し、歓迎の挨拶を行う柴山政務官
(於:浦和ロイヤルパインズホテル)
議長、ご列席の皆様、
本日、「第20回国連軍縮会議in さいたま」に政府を代表して、ご挨拶する機会を頂きましたことを、大変光栄に思います。会議開催に尽力された、国連軍縮部及び国連アジア太平洋平和軍縮センター、そして、開催地として準備にあたられたさいたま市の皆様に心から敬意を表します。また、埼玉県選出の一国会議員としても世界各国からの参加者の皆様を心から歓迎したいと思います。
現在の国際社会は、北朝鮮やイランの核問題、核テロの脅威など、核拡散の厳しい挑戦に晒されています。中でも、昨日、核無能力化の中断が報じられた北朝鮮、及びイランの核問題は、依然として国際的な核軍縮・不拡散体制に対する重大な挑戦であり、これらの問題に国際社会として有効に対応するため、NPTを基礎とする軍縮・不拡散体制の維持・強化を含めて国際社会が一致団結して協力することがこれまでになく重要になっています。
しかし一方で、近年、核兵器のない世界の実現に向けて注目されるべき新しい流れがあります。特に、2007年1月及び本年1月に、アメリカのキッシンジャー元国務長官ほか有識者が、核兵器のない世界に向けて行った提言は、注目すべき動きです。またこれらの呼びかけに応える形でイギリスのリフキンド元外相等による提言も出されました。このような、かつて核政策を担当した閣僚級の人々による呼びかけは、我が国の核軍縮外交との共通点もあります。
このような状況の下、我が国としては、核兵器のない世界に向けて前進する長期的な視点から検討を進めるため、日本とオーストラリア両政府の共同のイニシアティブとして、核不拡散・核軍縮に関する国際委員会を立ち上げることと致しました。本日ご出席のエバンス元外務大臣及び川口元外務大臣に共同議長を務めていただきます。この委員会が2010年のNPT運用検討プロセスに有意義な提言ができるよう、我が国政府として、今後最大限の協力を行っていきたいと考えています。
我が国は、唯一の被爆国として、広島、長崎の惨禍を再び繰り返してはならないと堅く決意し、核軍縮・不拡散に向けた現実的かつ着実な外交努力を積み重ねてきました。特に、本年我が国が議長国を務めた北海道洞爺湖サミットでは、不拡散の問題を重要なテーマとして取り上げ、北朝鮮やイランの核問題の解決に向けて、首脳レベルでの結束を確認し、国際社会に力強いメッセージを発出しました。また、G8として、現在進行中の核兵器削減を歓迎するとともに、すべての核兵器国に対し透明性のある形での核兵器削減を求めました。
これに加えサミットでは、近年、国際的なエネルギー需要の増大と地球温暖化問題への対処の必要性から、温室効果ガスの排出量の少ない原子力エネルギーに関心を示す国が世界中で増加しているという新しい現象も議論されました。サミットにおいてG8の首脳は、こうした情勢を踏まえ、原子力の平和利用にあたっては、保障措置・核不拡散、原子力安全及び核セキュリティ、いわゆる3Sを確保することが最も重要であるとの認識を改めて表明し、我が国政府が提案した「3Sに立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアティブ」が開始されるに至りました。
更に我が国の核軍縮外交においては、よく知られているように、1994年以降毎年国連総会に核軍縮決議案を提出し、圧倒的多数の支持を得てきております。また、我が国は包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進を重視しています。CTBTの発効については、発効要件国である44か国の批准が必要です。このため、我が国は、昨年2月にコロンビア政府、7月にインドネシア政府の関係者を本邦に招聘し、早期批准を働きかけました。こうした働きかけもあり、未批准の発効要件国は残り9か国となりました。我が国としては、このような弛まぬ努力を今後とも継続して参ります。
さて我が国は、若い世代を含む、あらゆる世代において、軍縮・不拡散教育が果たす役割を重要視しています。とりわけ、被爆の経験を人類の記憶に留めておくことは、核兵器廃絶に向かうために大変重要な意義を有しており、この悲しい経験を世界と後世に伝えていくことは、我が国の使命です。今回の会議でも軍縮・不拡散教育が議題として取り上げられており、活発な意見交換が行われることを期待いたします。
我が国における国連軍縮会議の開催は、本年で20回を数えるに至り、これまでも多くの成果を上げてまいりました。昨年の第一回北東アジアさいたまシンポジウムに続き、この伝統ある会議がさいたま市で開催されることを大変喜ばしく思います。本会議が国際的な軍縮・不拡散の議論に大きく貢献するとともに、さいたま市及び近隣地域の市民の皆様、さらには日本国民にとって軍縮・不拡散と平和の問題をより身近なものとして捉えるための良き機会となることを心からお祈り申し上げ、私からの挨拶とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。