演説

小野寺外務副大臣演説

小野寺副大臣スピーチ
(分科会C:平和の定着・グッド・ガバナンス)

平成20年5月

 グテーレス国連難民高等弁務官、ディアラ国連事務次長、アデデジAPR事務局長、ご列席の皆様

 紛争は、国土を荒廃させ、多くの不幸な人々を生み出すだけではありません。難民や国内避難民の発生、地雷や小型武器の拡散といった人間の安全保障上の問題を長く残し、アフリカの経済成長やMDGs達成にとっての深刻な障害となっています。平和及び安定は開発の大前提と言えるでしょう。私自身、先般、スーダンのダルフールの難民キャンプを訪問し、また、UNAMID幹部と意見交換を行い、更には日本の支援を受けたNGOが国際機関と協力しながら人道支援活動に取り組む様子を見て、平和の定着が開発にとって大変重要であることを改めて実感してきたところです。

 現在、アフリカでは平和が進展し、全体的には安定の方向に向かっています。また、アフリカ平和安全保障アーキテクチャー(APSA)をはじめとしたアフリカの自助努力にも大きな進展が見られます。このような状況を踏まえ、私達は、今こそが、平和の定着とグッド・ガバナンス強化に向けたまたとない機会であると考えます。

 私達は、第二次世界大戦の荒廃の中から今皆さんがご覧になっている現在の日本を創り上げてきており、他のどの国にも増して平和の定着の重要性を認識しています。だからこそ、私達は、TICAD IIIの際にお約束したことを全て実行した上、過去5年で計7.6億ドルの平和の定着支援を実施してきました。本年1月、福田総理は、日本が世界の平和と発展に貢献する「平和協力国家」として国際社会において責任ある役割を果たしていく考えを表明しましたが、これは、今後とも私達がアフリカにおける平和の定着支援をしっかり実施していく姿勢の現れです。例えば、先ほど述べたスーダンに対しては当面2億ドルの支援を発表したばかりです。

 もちろん、ただ闇雲に支援を行えば良いというのではないでしょう。平和の定着を実効的なものにするために重視すべきポイントというものがございます。まず、第一に、平和構築には、紛争予防や、人道・復興支援、治安の維持・回復、民主的政治の実現といった多くのプロセスが必要となります。私達は、この様々なプロセスをドナー諸国や国際機関が一体となって継ぎ目無く進め、和平への動きが不可逆的に行われるよう確保することが大切であると考えています。特に、各プロセス間の移行が円滑に行われ、平和構築のための様々な事業が首尾一貫して行われることが重要です。理想的な平和の定着の取り組みを追求する上では、現在日本が議長を務め、アフリカの国々自らが議論に能動的に加わっている国連平和構築委員会の活動も重要な貢献をなすものと考えています。

 第二に、紛争予防に要するコストは、紛争処理に要するコストに比べてずっと少なくすみます。この観点から、紛争予防や万一紛争が発生したときに備えて被害を最小限に止める工夫をしておくことは、大変重要です。また、同時に、貧富の格差、水や土地、資源を巡る争いなど、紛争の潜在的要因を取り除くことにも努めるべきでしょう。

 第三に、平和を素早く回復するために、紛争の影響を受けた人々の早期の自立が重要です。紛争直後、住民に対する社会サービスが十分に提供されていないような状況においても、コミュニティの再建や職業訓練を通じた個々人のエンパワメントや自立支援を行うべきです。また、女性、高齢者、障害者等社会的弱者への特別な配慮、子どもや若者、地雷・不発弾の被害者の社会復帰や社会再統合といった視点も考慮にいれるべきでしょう。

 第四に、自ら継ぎ目のない支援の重要性を訴えるからには、これまで私達が苦手としてきた分野にも踏み込むべきです。その観点から本年、私達は、平和維持分野の新たな支援策として、UNDPと協力してアフリカ各国のPKOセンター支援を開始し、既にガーナやマリ、エジプトにおいてプロジェクトが動き出しつつあります。更に、平和維持には文民の役割が重要であるとの考えから、UNESCOと協力してNGOの能力構築にも乗り出し、また我が国自身も平和構築分野での人材育成事業を立ち上げました。私達は、今後とも軍、警察、文民の能力向上を含むアフリカの平和維持能力構築支援に積極的に取り組み、G8北海道洞爺湖サミットにおいてもこのような分野を重点的に取り上げる予定です。

 こうして得られた平和も、グッド・ガバナンスがなければ永続しません。これが、私達が重視している最後の点となります。近年、NEPADの柱、アフリカにおける相互審査メカニズム(APRM)の重要性がアフリカ大陸に浸透し、参加国が増えているのは喜ばしい限りです。ここで重要なのは、APRMによる審査の結果得られた国別行動プログラムをしっかり実施することであり、私達は、この実施を支援するプロジェクトをAPRMによる審査を最初に終了させたガーナで開始することを報告します。加えて、公務員の能力強化や司法分野の能力強化を引き続き支援していきます。

 以上、日本が平和の定着分野を重点的に取り組んでいることと、その際に私達が重視しているポイントについて発言させて頂きました。先般、福田総理は、平和の定着・グッド・ガバナンス全てのプロセスで大きな役割を果たすODAの倍増を約束しました。日本は、今後とも国際機関やNGOと一層連携を強化し、アフリカとも二人三脚で平和の定着に向けた取り組みを進めることをお約束して、発言を終えさせて頂きます。

 ご清聴ありがとうございました。

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