平成20年11月25日
我が国政府は、明年5月に北海道トマムで「第5回太平洋・島サミット」を開催することを決定致しました。皆様にお集まり頂きました太平洋島嶼国支援検討委員会は、その開催に向けた準備として、第4回太平洋・島サミットで我が国が打ち出した太平洋島嶼国支援策である「沖縄パートナーシップ」の実施状況・成果のレビュー、及びそのレビューを踏まえた上で、我が国の今後の対太平洋島嶼国における支援のあり方につき検討して頂くものであります。委員の任をお引き受け頂き、感謝申し上げます。
後ほど担当幹部より発言があるかと思いますが、我が国は約10年前の1997年に第1回太平洋・島サミットを主催し、以降3年に一度、我が国としてこの地域の発展に関与すべく支援策を打ち出して参りました。
我が国の大洋州地域に対する支援の中核をなすODAについてみると、昨今のODA予算をめぐる厳しい状況の中、太平洋の島国への援助実績は近年、我が国二国間ODAの約1%強の割合で推移してきています。
他方、この間、大洋州地域のリーダー的存在である豪州やニュージーランドは、太平洋島嶼地域への支援を強化してきています。特に豪州については、昨年誕生したラッド政権がこの地域との関係強化を図っており、同政権の今後の太平洋島嶼国との関与の在り方を、「ポートモレスビー宣言」なる文書の形で打ち出しています。
また、中国や台湾がこの地域のインフラ整備等で存在感を示しています。12カ国ある太平洋島嶼国のうち、中国と国交を結んでいる国が6カ国、台湾と国交を結んでいる国が6カ国と、拮抗しており、この地域で援助合戦ともいうべき外交戦が繰り広げられています。その証左として、開催形態は異なるものの、中国、台湾ともにそれぞれと国交のある島嶼国首脳を対象とした、いわば中国版・台湾版太平洋・島サミットを開催してきています。また、フランスも、この地域との歴史的係わりを有していることから、PIF首脳を対象としたサミットを開催してきており、存在感を維持しています。EUも欧州開発基金を活用し、太平洋島嶼地域の持続可能な開発、特に気候変動問題への取組に対する支援を今後強化していくようです。一言でいえば、日本の存在感は依然として高いものの相対的には低下しつつあるのではないかと危惧しています。
我が国は、島国の友人として、同じ視点に立ってこれまでも気候変動、持続可能な開発等島国が抱える種々の課題に取り組んできました。しかしながら、島サミットプロセスが約10年を経過した今、次の10年を見据えた戦略・ビジョンが求められています。今回の委員会は、太平洋島嶼地域に造詣の深い専門家のみならず、開発の分野にそれぞれの立場から関わってこられた大学の先生、NGO、経済界の方等に幅広く声をかけさせて頂き、様々な角度からこの地域への支援・関与の在り方につきご意見を伺わせて頂ければと思います。また、今後、島嶼国からもゲスト・スピーカーを招き、現地のニーズについても意見を聴く機会を設けることを検討しております。こうした議論を通じ、明年春に有意義な提言をおまとめ頂き、次回島サミットが日本、島嶼国双方にとり節目となるような会合になるよう準備したいと思います。尚早ではありますが、有意義な議論がなされることを祈念し、私の挨拶とさせて頂きます。