平成20年2月3日
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2002年2月の小泉元総理の施政方針演説に端を発する。今日の経済活動において知識が生み出す付加価値の重要性は、以前に比べて格段に高まってきており、イノベーションが持続的に生み出される仕組みを整える必要があるとの認識に立脚し、知的財産戦略を国家戦略として位置付け、官民一体となって「知財立国」のスローガンの下、政府としての本格的な取組みがスタートした。同年11月にはこうした背景や基本的な取組を含め、知的財産戦略の推進体制を明確化した知的財産基本法が成立し、右に基として翌年3月には総理大臣を本部長とする知的財産戦略本部を設立した。同年7月には、知的財産に関する施策の具体的な取組の行動計画をまとめた「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」(知的財産推進計画)を初めて策定した。以来、毎年5月乃至6月に改訂され、2007年5月には5年目となる「知的財産推進計画2007」を策定した。
我が国においては、企業や大学等民間の意見を取り入れながら、関係各省が協力しつつ政府が一体となって知的財産戦略を推進している。全閣僚及び知的財産の創造、保護及び活用それぞれの分野に関し優れた識見を有する10人の民間有識者より構成されている知的財産戦略本部が我が国の知財施策の推進をしていく上で中心的役割を果たしている組織であり、各省庁は同本部が毎年策定する知的財産推進計画の具体的施策について責任を持って取り組むこととなっており、その取組については内閣官房に設置された知的財産戦略本部の事務局によりフォローアップが行われている。
知的財産推進計画においては、知的財産の「創造」「保護」「活用」の循環、すなわち「知的創造サイクル」の考え方を基に、官民でなすべき様々な具体的行動が示されている。具体的には、右サイクルは、知(技術、コンテンツ等)を創造し、その創造の成果を知的財産として適切に保護するとともに、製品化、事業化、標準化に活用し、活用から得られた収益を新たな知の創造に振り向けていくというものである。以上のような「知的創造サイクル」の好循環が自律的に起こる経済社会こそが、知識経済の到来に向けて、「知財立国」として我々が目指すものであり、これは各国とも共有できる目標であると考えている。
なお、知的財産推進計画を策定・実施することによって、これまで得てきた主な成果は次のとおり。1)知財高裁の設置、2)模倣品・海賊版の水際取締りの強化、3)2006年度末までに30本以上の知財関連法の成立。
模倣品・海賊版対策については、先述した水際取締りの強化のほか、知的財産侵害に関する刑事罰の引上げ、映画の盗撮防止に係る新規立法、インターネット・オークション上の流通対策、官民協同・連携体制の確立、在外公館におけるサポート体制整備、政府におけるワン・ストップの相談窓口整備等、関係省庁が一体となって政府を挙げた総合的な取組を推進してきている。また、アジア地域を中心にキャパシティ・ビルディングを精力的に実施していること等、諸外国との協力・連携にも注力してきている。
知識経済において知的財産権の推進・保護は先進国・途上国を問わず影響力を及ぼす、広くグローバルなイシューとなっており、国際機関及び、各国間の連携・協力は非常に大きな役割を担っている。グレンイーグルズ・サミット以来、2007年のハイリゲンダム・サミットまで、様々な模倣品・海賊版対策の取組を行ってきており、これまで着実に成果を挙げてきている。
我が国が本年議長国を務めるG8プロセスにおいても、気候変動や開発に加え、世界経済も重要な柱。中でも、未だ世界にとって模倣品・海賊版の拡散が大きな脅威となっていることから、引き続き模倣品・海賊版に対する知財エンフォースメントの強化について議論を進めると共に、如何に知的財産制度が、創作活動の促進や生産性の向上しを通じて、持続可能な経済成長に資するものであるかについても議論を交わしていきたいと考えている。洞爺湖では、以上を踏まえて、首脳より良いメッセージを打ち出せればと考えている。