平成19年10月30日
(英文はこちら)
議長、
人権は全ての国の人々が当然与えられるべき権利であり、いかなる国家も、人権を擁護し促進するという責務から逃れられない。また、、ウィーン人権宣言及び行動計画に規定されているとおり、全ての人権の推進と擁護は、国際社会の正当な関心事項である。
しかし、人権の保護・促進を実現する上では、歴史や慣習や文化について、関係する各国の固有の事情にも配慮する必要がある。
議長、
人権理事会の設置は、世界的に人権を促進する上で画期的なことである。人権理事会の制度構築に関する決議5/1は、今後の同理事会業務の基礎となる。同決議が、今次総会で無修正で早急に採択されることを希望する。
人権委員会が達成してきたものを基に、人権理事会が協力と真摯な対話という原則に基づき、人権の促進と擁護に貢献することができる場に発展することを期待する。理事会は、各国が人権に関する責務を遵守する能力を強化すべきである。また、同理事会は、国際社会が特に大規模かつ深刻な人権侵害に断固として、また常に関係国の情況や事情に呼応しつつ対応できるよう、一層実効的に機能することを期待する。
我が国は、人権理事会理事国として積極的・建設的な役割を果たしていく。また、国連人権高等弁務官による各国への支援強化の努力を支持する。
議長、
近年、全般的な世界の人権状況は、民主化の一般的な傾向及び法の支配への尊重の高まりにより改善している。しかし、世界各地には依然として深刻な人権侵害が存在する。国連及び国際社会は、まさにこうした問題を効果的に取り上げていく必要がある。
この関連で、我が国は、北朝鮮人権状況特別報告者であるムンタボーン教授の取組への高い評価を表明したい。北朝鮮が、国際社会の呼びかけに応え、特別報告者の入「国」を速やかに受け入れることを求める。
北朝鮮による拉致問題は、人間の尊厳に対する重大な挑戦である。拉致被害者とその家族が再会し、かつて味わっていた幸せを再び味わえるよう、拉致問題の一刻も早い解決を求める力強いメッセージを国際社会が発出することが不可欠である。
日本は、日朝平壌宣言にのっとり、日朝間の拉致問題や「不幸な過去」の清算を含む諸問題の解決に向け、引き続き対話に取組む。今後、このための具体的な行動につき北朝鮮と協議し、その実施を確保する考えである。北朝鮮にも、六者会合で合意したとおり、我が国の要求に応え、拉致問題を始めとする懸案事項の解決に取り組むよう求める。
議長、
ミャンマーの情勢も懸念される。最大限自制すべきであったにもかかわらず、治安当局が平和的なデモに対して実力行使を行い、邦人1名の死亡者を含む多数の死傷者が出るに至ったことは遺憾である。
従って、我が国は、ミャンマー情勢に関する安保理議長声明と人権理事会決議を歓迎する。
我が国としては、ミャンマー政府がデモによって示された国民の要望をふまえながら、民主化を進めることを期待する。そのためにも、我々は、ミャンマー政府に対し、事態を平和的且つ根本的に解決することにより国民和解を達成するために、真の対話を行っていくことを求める。
我が国は、国連事務総長の周旋努力及びガンバリ事務総長特別顧問による活動を支持しており、ガンバリ特別顧問による11月の訪問を歓迎し、ミャンマー政府が国連に全面的に協力することを求める。また、我が国は、ミャンマー政府による、ピネイロ・ミャンマー人権状況特別報告者を受け入れるとの決定を歓迎し、同特別報告者の訪問を注視している。
議長、
人権状況の改善と共に、民主主義及び法の支配の実現に向け取り組んでいる国に対しては、国際社会が後押ししていくべきである。我が国は、人権・民主主義が各国において十分に整備されることが、平和で繁栄した社会の確立、ひいては、国際社会の平和と安定に資すると考えている。その観点から、我が国はネパールやカンボジアにおける最近の前向きな進展を歓迎し、今後も各国の自助努力を支援していく所存である。
特に、本年6月、クメール・ルージュ裁判(KR裁判)において、裁判過程の加速化につながると期待される同裁判の内部規則が採択されたことを歓迎する。我が国は、同裁判の総費用の約4割に相当する約2,160万米ドルを拠出し、本裁判の上級審に判事を派遣している。右プロセスが早急かつ適正に取り進められ、凶悪行為を行った者が裁かれることを強く期待する。
我が国は、国際社会における「法の支配」の重要性を踏まえ、本年10月に「国際刑事裁判所(ICC)に関するローマ規程」に加入した。
議長、
継続は力なり。人権の保護・促進のためには、各国がこれに不断に取り組んでいく必要がある。我々は、その努力を中断したり、将来への希望をあきらめてはいけない。各個人のエンパワーメントが人権侵害を防止する最も効果的な手段である。如何なる侵害も許してはいけない。我が国は、国連と協力しつつ、人権状況の改善に取り組んでいく所存である。