平成19年10月23日
(英文はこちら)
議長、
1948年12月10日、世界人権宣言は、人権と基本的自由の分野における「全ての人民と全ての国とが達成すべき共通の基準として」採択されました。
世界人権宣言の採択から、来年で60年が経過します。その間、我々は人権の保護と促進において、目覚ましい進展を見ましたが、一方で、世界各地で未だ重大な人権侵害が起こり続けていることも認めざるを得ません。現実には、基本的人権とは当然に手に入るものではなく、個人、市民社会及び国家の、断固とした、かつ不断の努力によって初めて獲得し得るものです。
議長、
我が国は、人権が普遍的価値であり、世界のあらゆる場所で人権が促進され擁護されなければならないと固く信じるものであります。この関連で、人権高等弁務官及び人権高等弁務官事務所が果たす役割を称賛し、同弁務官及び同事務所と引き続き協力・連携を深めていきたいと考えています。また、新たに設立された人権理事会が、国際社会に期待された役割を果たせるよう、我が国としてもその活動を支持し続けたいと考えています。
議長、
また、我が国は、6つの主要な国際人権条約を締結し、その国内実施に誠実に努めるのみならず、世界人権宣言採択の翌年から、同宣言採択日である12月10日を最終日とする1週間を毎年「人権週間」と定め、人権尊重の考えを普及・促進させるため、全国的に啓発活動を行ってきました。本年、第59回人権週間においては、女性、子ども、高齢者、障害のある人、外国人、HIV感染者やハンセン病患者の人権尊重等を呼びかける予定です。また、今日では、世界人権宣言の採択時には予期できなかった新たな人権侵害も起きていることに鑑み、インターネットの濫用による人権侵害についても取り上げる予定です。
議長、
我が国は、人権分野の普遍的な基準・規範の形成における国連の役割を非常に重視しています。我が国は、本年2月の強制失踪条約の署名に続き、本年9月、障害者権利条約に署名しました。我が国は、この条約が障害者の人権と基本的自由の完全な保障の確保・促進のために極めて重要であると考えており、今後、可能な限り早期の締結を目指して検討を行っていきます。
議長、
近時、現在の主要人権条約の報告制度については、重大な問題があると指摘されてきました。すなわち、締約国による政府報告作成の負担が過重であること、その結果としての政府報告提出遅延・不提出、委員会による政府報告審査の遅延です。また、人権条約が増加すればするほど、条約体の作業、委員数、委員会の総会期数が増大し、財政的負担が増大するという問題もあります。我が国としては、政府報告のストリームラインにも取り組んでいきたいと考えております。
他方で、これらの問題の解消に向け、人権高等弁務官が先に示した統一条約体の設立構想については、統一条約体の作業方法、専門家委員の確保、運営経費などの点につき、問題があると考えています。
我が国は、人権高等弁務官及び各条約体の努力について謝意をもって留意しつつ、条約体制度をさらに効果的かつ効率的なものとすべく、今後とも積極的に議論に参加していく所存です。
我が国の経験が示すとおり、平和と繁栄のためには基本的人権の尊重が不可欠です。我が国は、引き続き国際連合及び国際社会と緊密に協力しつつ、人権の保護・促進のためにあらゆる努力をしていきます。また、かかる信念が、より多くの国家に共有され、世界人権宣言採択60周年の記念すべき年において、国際連合及び国際社会で指摘されている重大な人権侵害が克服されることを願ってやみません。
ありがとうございました。