
国連の場における演説
第62回国連総会第三委員会(議題64「社会開発」)
黒崎伸子政府代表代理によるステートメント(仮訳)
平成19年10月8日
(英文はこちら)
(序文)
- 高齢者、障害者、児童などの社会的弱者は、自然災害によっても容易に脅威にさらされる恐れがある。近年我が国は度重なる大地震を経験し、特に高齢者を中心に甚大な被害を受けた。また、平均余命は伸び続けているものの高齢者は支えを必要とする者が多く、自然災害が起きれば生命の危機に直結する。他国においても、環境破壊や地球温暖化の影響により自然災害が頻発している。この経験に基づき人間の脆弱性に着目し、人道問題上のパートナーとの協議を通じて情報を共有しつつ、社会的弱者の問題に引き続き積極的に取り組んで行きたい。
1.人間の安全保障
- 我が国は、貧困・環境破壊・紛争・地雷・難民問題・麻薬・感染症など多様な脅威に適切に対処するために、人間一人ひとりに焦点を当てた「人間の安全保障」の推進を外交政策の柱のひとつとしている。我が国は、これらの脅威から人々やコミュニティを守り、脅威に対応する能力を強化することを通じ、個人がその生命、生活、尊厳を全うできるような社会の実現に貢献するべく、国際社会と協力しながら、人間の安全保障基金やその他二国間のスキームを通して支援を行っている。
2.障害者
- 我が国が障害者の問題について、講じている包括的な施策として、例えば、2006年10月に障害者自立支援法が全面施行され、障害者への就労支援を強化するなど、より利用者の立場に近いサービスを提供している。
- 障害者の自立と社会参加を促進する施策として、2006年12月に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」が施行され、バリアフリーの範囲を道路、路外駐車場、都市公園まで拡大する等の措置が促進された。また、人々の心のバリアフリーを進める上での教育の重要性は言うまでもない。
- 教育の分野では、重複障害のある児童生徒のニーズに応じた教育を実施すべく、本年4月より改正学校教育法が施行された。
- 本年9月28日、我が国の外務大臣が障害者権利条約に署名した。本条約の成立に至った障害者問題への国際的な関心の高まりを踏まえ、我が国は締結に向けた検討を更に進めていく。
3.高齢化
- 2007年は「高齢化に関するマドリッド国際行動計画」が採択されて5年目にあたり、本年2月の第45回社会開発委員会にて活発なレビュー・セッションが行われたことを評価。高齢化が最も速く進む国の一つとして、右行動計画の枠組みの中で引き続き高齢化に関する政策・プログラムを実施していくとともに、同じ問題を抱える他国と広く情報を共有していく所存。
- 我が国は世界で前例のないスピードで高齢化が進んでいる国の一つであり、2005年時点で総人口の5人に1人が65歳以上の高齢者であり、将来さらに高齢者の割合が増加し続けると予測されている。こうした人口構成の変化に対応するため、我が国は就業と所得、健康福祉、学習・社会参加、良好な住宅環境など総合的施策を立案し、実施している。
(結句)
- 誰もが相互に尊重し合い、ひとりひとりが平和で安定した生活を送れる社会の実現を図ることは、国際社会共通の目標である。この実現のために、我が国は引き続き国際機関や各国とも協力し、問題の解決に取り組んで行く所存である。