演説

国連の場における演説

第62回国連総会におけるハイレベル対話
「平和に向けた異なる宗教間・文化間の理解及び協力」
神余隆博大使によるステートメント(仮訳)

平成19年10月5日

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(序)

議長、
 昨年の第61回国連総会は、決議221において、「宗教や信条の違いに基づく、不寛容・差別や、宗教的な不寛容を動機とする暴力、脅迫及び抑圧が世界各地で増加し、人権と基本的な自由の保障を脅かしている」と警告しました。
 右決議は、このような「宗教・信条の違い等による差別、暴力、脅迫及び抑圧を根絶するために、文化や宗教・信条の多様性の尊重、対話及び理解を強化」することの必要性を強調しています。
 2005年の「ASEM異なる信仰間の対話」バリ宣言は、右決議と同様の関心に基づくものであり、右宣言、特に教育、文化、メディア及び宗教・社会の各分野における決意を想起する必要があります。
 このたびのハイレベル対話は、バリ宣言や右決議の目的を実現するための重要な機会であり、このような機会が与えられたことに感謝したいと存じます。

(教育の重要性)

議長、
 私どもは、異なる宗教間・文化間の対話の促進は、相互理解に寄与し、紛争の解決だけでなく、その予防をももたらすと考えています。
 そのような相互理解を実現するために忘れてならないのは、教育の重要性です。国、地域を含め社会の様々なレベルで、自分たちの宗教・文化と共に、世界には他の多くの宗教・文化が存在することと、それらへの寛容さが、国際的な平和・安全と、人権と基本的な自由の保障の実現にとって不可欠であることを伝えなければなりません。

(民間団体・地方自治体の役割の重要性)

議長、
 異なる宗教間・文化間の対話の促進には、NGOを含めた民間団体及び地方自治体の活動も重要です。全国連加盟国は、これまで開催されてきた宗教指導者による非公式会合「平和に向けた異なる信仰間の対話」や、今回のハイレベル対話における各宗教団体からのメッセージを尊重すべきです。また、国レベルだけでなく、地方自治体レベルでの啓発も必要です。

(我が国の取組等)

議長、
 続いて、我が国の取組について簡単に述べます。
 我が国は、ユネスコが中心となって推進している「文明間の対話」に積極的に取り組んできています。2001年には、国連大学において、南東欧諸国の他、ユネスコ、ユニセフ、欧州評議会の参加を得て、南東欧教育・文化遺産保護セミナーを開催し、民族・文化の多様性を認める教育の在り方を議論したところです。
 2005年には、東京において「世界文明フォーラム2005」を開催しました。
 日本は、本年5月にシンガポールで開催されたARFテロ対策関連会合において共同議長国を務め、ARFで初めて「異なる文明間の対話」を議論することに貢献しました。
 そして、本年7月には「文明間の同盟」フレンズ・グループに加入しました。

 我が国は、本年5月にASEM第5回テロ対策会議を主催しました。同会議においては、テロ対策を進める上での異なる文化・宗教・文明間の対話の重要性が指摘されました。
 その他、日本はこれまでに、先述のとおり、2005年に「世界文明フォーラム」を開催したほか、「イスラム世界との文明間対話セミナー」を5回開催し、「対中東文化交流・対話ミッション」を3回派遣し、インドネシアのイスラム寄宿塾関係者の訪日招聘を行う等、文化・文明間の対話に関する様々な取組を継続的に実施してきました。

議長、
 最後に、「人間の安全保障」について述べます。「人間の安全保障」は、人間一人ひとりの保護と能力強化を図ることによって、人々が恐怖と欠乏から解放され、尊厳ある生命を全うできるような社会をつくることを目指すものです。
 この考え方は、「異なる宗教間・文化間の対話」の目的、すなわち、「人権と基本的な自由の保障の実現」と共通するところが多くあります。したがって、我々は、「異なる宗教間・文化間の対話」を促進するに当たって、「人間の安全保障」の視点が重要であると確信しています。

ありがとうございました。

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