演説

国連の場における演説

国連総会非公式テーマ別討論「地球規模の課題としての気候変動」
における鶴岡公二地球規模課題審議官ステートメント(仮訳)

2007年8月1日

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 気候変動は人類の直面する喫緊の環境問題であり、国際社会全体の取組みが求められています。この課題に対処するにあたっては、持続可能な開発を促進することにより、環境と開発の両立を確保しなければなりません。加盟国が結集して議論が行われることは、気候変動に対するグローバルな取組みに向けての重要な第一歩として歓迎するものです。本件会合を開催するに当たっての事務総長及び総会議長のリーダーシップに日本政府として感謝申し上げます。

 わが国は、国際社会において責任ある立場にある国家として、また、京都議定書を採択した議長国として、地球温暖化への対応に率先して取り組んでいます。本年5月に安倍総理が発表した新提案「美しい星50」はその決意によるものです。

 温室効果ガスの濃度を安定化させるためには、国際社会は長期的なビジョンを共有しなければなりません。「美しい星50」は、2050年末までに世界全体の温室効果ガスを現状に比して半減するという目標を世界の共通認識として形成することを提案しています。これは世界が行動を起こすために必要な長期的ビジョンとなるものです。同時に、この目標を達成するためには、ゼロエミッション型石炭火力発電等の革新的技術の開発を推し進めることが必要です。

 現在、2013年以降の国際的枠組みの構築が国際的な議論の焦点となっています。全ての主要排出国が参加した実効性のある枠組みを作るべきであるというのが我が国の基本的な立場です。

 このような考え方の下、わが国は、(1)主要排出国が全て参加し、京都議定書を超え、世界全体での排出削減につながること、(2)各国の事情に配慮した柔軟かつ多様性のある枠組みとすること、(3)省エネなどの技術を活かし、環境保全と経済成長を両立させることの3つの原則を提案しました。

 これらの原則を実現するため、我が国の提案を支持し、温室効果ガスの排出抑制と環境にやさしい形での経済成長を両立させようとする志の高い途上国に対し、広く支援を行っていきます。そのために、相当規模かつ長期的な支援を提供するための新たな「資金メカニズム」を構築していきます。このメカニズムを通じて、温室効果ガス排出削減、気候変動への適応、クリーンなエネルギーの利用促進のための途上国の努力を支援していきます。

 さらに、我が国はエネルギー対策面から問題にアプローチするとともに、自主的な省エネルギー目標・行動計画の策定に向けた取組みを推進していきます。

 地球温暖化対策には、技術の開発・普及はもちろんのこと、人々の意識改革とライフスタイルの転換が必要です。「美しい星50」においても、気候変動に対応するに当たっては各個人の関与が必要であることが言及されています。我が国では、夏の間、ネクタイ及びジャケットを着用しないことにより、冷房設定温度を下げなくても済むようにする「COOL BIZ」といった様々なキャンペーンを通じて世論を喚起しています。他にも「1人、1日、1キログラム CO2削減」キャンペーンを進め、低炭素社会を推し進めることにより二酸化炭素排出量を削減することを呼びかけています。国連においても、建物の冷房設定温度を28度にする、会議の開始・終了時刻を厳守する等、足元からの取組みを実施することを提案したいと思います。

 9月の国連ハイレベル会合、12月のCOP13など、今後12ヶ月の間、気候変動に関する一連の国際会議が予定されています。来年我が国が議長を務める北海道洞爺湖サミットにおいても、気候変動は重要な議題として取り上げられる見通しです。これらの会合が、地球温暖化に関する効果的な国際枠組みの構築につながる成果を生み出すことを期待します。

 アフリカは気候変動の影響に最も脆弱な地域の一つです。本年3月にナイロビで開かれた「TICAD持続可能な開発のための環境とエネルギー閣僚会議」において、適応及びエネルギー・アクセスがアフリカの開発にとって重要課題であるとの認識が共有されました。来年5月に開かれるTICAD IVにおいても、環境及び気候変動は主要な三つのテーマのうちの一つとなる予定です。TICADの成果はG8プロセスにもつながっていきます。

 気候変動は後回しにできる問題ではありません。G8サミットを含め、様々な国際的なプロセスでの議論がUNFCCCにおける議論に収束されていくことが不可欠です。我が国は、国連が2013年以降の効果的な枠組みの構築のために中心的な役割を果たすことを期待しています。

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