平成19年5月21日
(英文はこちら)
議長、
事務局長、
各国代表団の皆様、
ご列席の皆様、
私は、日本国政府及び日本国民を代表して、本総会を主催されたカザフスタン共和国政府及びアルマティ市民から受けた温かい歓迎に対し、深甚なる感謝の意を表明いたします。
議長、
日本が国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の前身である国連アジア極東経済委員会(ECAFE)に加盟したのは1954年のことでした。国連加盟よりも先立つものでした。それ以降、日本はアジア太平洋における域内協力の恩恵を受けて来ました。昨今、アジア太平洋地域との協力関係は日本にとって益々重要になっています。今後も、歴史を振り返るとともに未来を見つめ、ESCAP等を通じた地域の経済社会開発に引き続き協力し、地域諸国との友好関係を増進してまいりたいと存じます。
議長、
アジア太平洋地域はめざましく発展しています。他方、我々はグローバライゼーションの進展によりもたらされた新たな課題に直面しています。これらの課題に対応するため、ESCAPがアジア太平洋地域における最も包括的な政府間会合として重要な役割を果たすことを期待します。ESCAPは、包括的かつ統合した開発事業を提供するために、地域開発に携わる関係者全ての力を結びつけながら、主要分野における重要な専門的知識を提供することで、メンバー国主導の経済社会開発の媒体となることができます。
議長、
昨年11月、麻生太郎外務大臣は「『自由と繁栄の弧』をつくる-拡がる日本外交の地平」題する政策スピーチを行いました。この中で麻生外務大臣は自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済といった「普遍的価値」を重視しつつ、ユーラシア大陸に沿って「自由と繁栄の弧」を形成することを新機軸として打ち出しました。
日本は、教育、保健といった基礎的生活分野での支援、民主化定着のための支援、インフラ・法制度整備のための支援など政府開発援助(ODA)を活用した支援や、貿易・投資といった協力を通じ、共に自由で繁栄した社会を実現するため、基本的価値を共有する国々と協力します。これは、「自由と繁栄の弧」の形成の重要な要素となるでしょう。
この考えは日本が主張してきた「人間の安全保障」実現にも資するものです。深刻化・多様化する脅威に直面し、従来の国家安全保障の考えでは人々は守れません。開発、安全及び人権は、密接に関係しており、共に促進されるべきものです。国家の安全保障を補完するために、日本は人間一人一人の保護・能力強化を行うことにより、人づくり、社会づくりを通じた国づくりを進める「人間の安全保障」の考え方を重視し、国際社会において推進しています。この理念を実践するため、日本は国連の「人間の安全保障基金」にこれまで2億9,700万ドルを拠出しています。「人間の安全保障」の推進は、第60回ESCAP総会において採択された「上海宣言」の中でも謳われました。今後とも日本は、ESCAPにおける支援も通じて、アジア太平洋地域における「人間の安全保障」推進のため最善を尽くします。
また日本はMDGs実現にも強くコミットしており、モンテレイで構築された新たなグローバル・パートナーシップの考えを踏まえ、途上国、他の先進国、国際開発機関などのパートナーと協働して開発アジェンダに取り組んできました。MDGsの達成には、途上国自身の「オーナーシップ」が不可欠ですが、日本は、東アジアの経験を踏まえ、「人づくり」を進めることで「オーナーシップ」を醸成することを重視しています。
議長、
日本は、日本エスカップ協力基金への拠出を通じて、アジア・ハイウェイ・プロジェクト、クリーンな環境のための北九州イニシアティブ、障害者の権利に関するびわ湖ミレニアム行動計画等を支援してきました。今後も引き続きESCAPが実施する様々なプロジェクトを支援していく考えです。
議長、
さて、ESCAPの活動に重要な影響を与えている国連改革について述べさせてください。国連はマネージメント及び事務局改革の重要な時期を迎えています。日本は国連改革の議論に積極的に関わり、武見敬三氏が国連システムの一貫性に関するハイレベル・パネルメンバーとなりました。同ハイレベル・パネル報告において、ESCAPのような地域委員会の役割は見直されるべきことが勧告されました。このような背景の下、我々が繰り返し申し上げたいのは、ESCAPが他の国際機関との活動の重複を避け、新たな存在理由を見いだし、比較優位のある分野に集中することの重要性です。この文脈で、日本は、事務局長が強いリーダーシップをもってESCAP外部評価の報告に基づいたESCAP改革を進めることを切望します。
議長、
最後に、キム・ハク・ス事務局長に対して、事務局のビジビリティ向上に尽力し、アジア太平洋地域における全てのメンバーが参加する唯一の政府間会合であるESCAP総会を支えてきた、そのリーダーシップに感謝の意を表します。