平成19年5月7日
(英文はこちら)
殿下ならびにご列席の皆様、
まずはじめに、ウィレム・アレキサンダー皇太子殿下に対し、本件会合の議長を務めていただいたこと、及び国連「水と衛生に関する諮問委員会」の業務への強いコミットメントに関し、心から感謝の意を表させていただきます。これから、国際衛生年に関する日本の考えを紹介させていただきます。
水の開発問題に取り組むに当たっては、水と衛生の問題を一体として考えなければなりません。水の汚染を避けるためには、排水を管理するとともに、排泄物を分離することが不可欠となるからです。安全な飲料水の確保は、この方法によってのみ実現可能となります。衛生の改善の必要性は、安全な飲料水の確保よりも優先順位が低くなりがちですが、衛生施設(トイレ)へのアクセスは、人間生活にとって最も重要なことであると認識しなければなりません。
2003年、第3回世界水フォーラムのプログラムの一つとして、子ども水フォーラムが開催され、多数の国から子どもたちが議論に参加しました。そこで、バングラデシュの生徒が、同国においては、およそ半数の学校に衛生施設がなく、多くの生徒、特に女子生徒が、そのために学校に来ないということについて話をしました。我々は、この問題を子どもたちの貴重な教育を受ける機会を失わせる深刻な問題として認識すべきです。
ミレニアム開発目標の一つに、2015年までに安全な飲料水と基本的な衛生施設を利用できない人の割合を半減するというものがあります。安全な飲料水を欠いている人の割合は、1990年の23%から、2002年には17%に減少しており、ある程度の進展が見られたと言うことができると思います。他方で、基本的な衛生施設へのアクセスがない人の割合は、1990年の52%から、2002年には41%までしか減少していません。明らかに、衛生の問題については、地方、国家、国際レベルで取り組むための抜本的な措置をとることが必要です。
そこで、昨年、国連総会は2008年を「国際衛生年」とすることを決定しました。日本は、この決議の推進に主導的役割を果たし、57カ国もの共同提案国を得ることができました。これは、如何に衛生の問題が深刻であるかを反映した数字です。
「国際衛生年」の主な目的は2つあります。第1に、政治レベルを含む、あらゆるレベルで意識を啓発し、人的及び財政的資源を動員すること、第2に、2008年への準備及びそれ以降の年に向けて関係者が取るべき行動を示したロードマップを作成することです。それぞれの関係者が、何をすべきかについてはっきりとした意識、及び適切なスピードで行動をとる責任感を持つことが非常に重要です。
日本は、水と衛生問題に積極的に取り組んでおり、他のドナー、国際機関及びNGOと協力して、「水と衛生に関する拡大パートナーシップ・イニシアティブ(WASABI)」を通じ、引き続きこの分野での支援を行っていきます。WASABIを通じて、日本はそれぞれの地域の状況にあわせた支援を提供してきました。人口が密集した都市のプロジェクトでは、ODAに加え、民間資金の活用を図ることによって、下水の開発など、大規模なインフラのニーズに応えています。村落地域では、安全な飲料水や基本的な衛生の重要性について情報を普及させるための活動を支援しています。
ODAで得られた経験から、我々は、衛生施設を使ったことのない人々に対しては、それを単に供与するだけでは十分でないことを学びました。彼らは衛生施設の重要性を認識していないため、それを家畜小屋や倉庫として使ったりしてしまいます。さらに、清潔に保つことの必要性についても十分な理解を持っていません。この関連で、施設を建設するだけでなく、特に、子どもたちに対して、衛生に関する適切な教育を行うことが重要になってきます。
残念なことに先進国においては、世界レベルで基本的な衛生へのアクセスを改善するための更なる努力が必要であることが認識されていません。したがって、世の中の関心を高めるとともに、さらなる取り組みへの支援を呼びかけるために、国際衛生年の機会を有効に活用することが不可欠です。