演説

国連の場における演説

第40回人口開発委員会
佐藤龍三郎国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長ステートメント(仮訳)

平成19年4月10日

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議長、

 この重要な委員会の議長への就任を祝福いたします。また、我々の討議のために報告書を作成された事務局の方々のご尽力に敬意を表します。

 本セッションのテーマである「年齢構成の変化が開発に与える影響」は、先進国、途上国を問わず、すべての国において避けて通り過ぎることのできない、共通のテーマであります。ひとつの国が経済的な発展を成し遂げていく過程で、この年齢構成が、若年人口が多いピラミッド型から、ベル型に変化し、やがて少子高齢化社会の特徴である紡錘型に移行するということは、一般によく知られているところです。

 これら年齢構成の変化に応じて、開発も影響を受けずにはいられません。

 最初に、年齢構成がピラミッド型を示す時代には、感染症対策や母子保健政策など基本的な保健医療政策の充実、必要な栄養と衛生的な水の確保、そして自然災害に対する適切な復興支援など「人間の安全保障」への速やかな対応が開発の重要課題となりましょう。

 次に、年齢構成がベル型へと変化した時代では、人々はより安定した経済成長とより良い教育を求めるため、工業化やインフラの整備、教育の充実がその時代の最も重要な開発目標となるでしょう。無論、開発の課程によって生じる公害や環境破壊など負の側面に配慮しつつ開発を進めていくことが重要です。

 更に、社会が円熟し年齢構成が紡錘型へと変化した時代では、テクノロジーが発展し、個々人がそれぞれの豊かさを追求する社会へと変わります。人々の価値観も変化し、結婚や出産を必ずしも選択しない人々も増え、その結果、少子高齢化社会を迎えるようになります。このような時代には、労働人口の減少と高齢者をはじめとする給付を受ける人々の割合の増加により、社会保障システムの需給バランスの変化が生じます。医療保険や年金などの社会保障を、将来にわたってどのように公平かつ持続可能な形で確保するか、また、来るべき労働人口の減少に対し、社会がいかに効果的な方策を講じることができるか、ということが、開発の重要な課題となりましょう。

 わが国は、先述の3つの年齢構成の変化を僅か60年の間に経験いたしました。

 わが国は、自らが体験した経験を、世界の友人と分かち合い助け合うため、「人間の安全保障」の概念のもと、保健医療、農業、水と衛生及び災害復興支援などの分野に支援を行って参りました。そして今日、紡錘型の時代を迎え、わが国は、自らの問題として、少子高齢化社会に特有な問題に取り組んでいます。わが国は、高齢者の増大に伴う、医療・年金・介護のニーズの増大に対応すべく、持続可能な社会保障の構築を目指し、2004年~2006年にかけて改革を実施し、年金制度や介護保険制度の見直しを行いました。

 わが国の社会保障改革の根底には、「高齢者に対しても、負担能力に応じた負担を求める」という考えと、人々が健康で長生きできるよう「予防重視という方針を明らかにし、健康寿命を延ばすための取り組みを強化する」という方針があります。これらの考え方は、高齢化問題に直面する他の国々においても参考となり得ると思います。

 また、少子化に伴う人口減少の中で、成長の基盤となる労働力をいかに確保するかという重要課題に対し、わが国は、若年層に対する、きめ細かな就職支援や実践的な職業能力開発の実施を、高齢層に対する、定年の引上げと雇用確保措置の円滑な導入を行いました。更に女性に対しては、保育の充実や育児休業制度の定着等により、仕事と子育ての両立支援をめざし、出産・子育てにより離職した者に対しても再就職等支援を行なっています。

議長、

 これらの改革を通じて、わが国は、紡錘型社会における適切なワークライフバランスの確保、即ち、労働者たる国民一人ひとりが仕事も生活も大切にしながら働くことのできる環境整備を行うことをめざしています。

 どうも有り難うございます。

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