演説

国連の場における演説

第61回国連総会第4委員会
議題33「すべての側面における平和維持活動の問題全体の包括的レビュー」
に関する神余隆博国連大使ステートメント

2007年2月26日

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議長、

 5年前、PKOは、軍事要員・警察要員約4万人であり、PKO予算は、約26億ドルでした。2006年末において、PKOは約8万人の軍事・警察要員を抱えており、文民部門を含めればフィールドには10万人が展開しており、現時点での予算は52億ドルに達しており、今後、この規模がさらに拡大することが予想されます。

 こうしたPKOの拡大は、PKOが紛争の恒久的解決に果たす役割に対する国際社会の期待及び評価の反映でもあります。この国連の活動の中で極めて重要な位置を占めるに至っているPKOについて、総会として、全ての観点から検討を行うPKO特別委員会の役割も、さらに重要性を増しています。我が国は、議長の指揮の下、PKO特別委員会において、有意義な議論が行われ、この極めて大きな資源を投入する活動が、より効果的、効率的に実施されることに資することを望みます。

議長、

 増大するPKOは、さまざまな課題を投げかけています。

 第一に、PKOの拡大は、加盟国に対して人的資源、財政資源の一層の負担を求めることになります。日本は昨年までの2年間、安保理メンバーとして、アフリカや中東、アジアにおけるPKOの設立や拡大に関わってきましたが、今後とも協力及び支援を続ける用意があります。我が国としては、これまでPKO予算のほぼ約5分の1を負担してきた最大の財政貢献国の一つとしての立場も踏まえ、PKOの設立、拡大及び適切な出口戦略策定等のプロセスへの適切に関与して行く立場にあります。しかしながら、PKOの設立やマンデートの変更に際する主要財政貢献国との協議は十分に行われておらず、この面での改善を引き続き求めて行く考えです。また、事務局の加盟国に対する説明責任の向上及び加盟国が提供するリソースの効率的かつ効果的な活用等について大きな関心と責任を有しています。特に、今後PKOの拡大が続いていくとすれば、同一地域のミッション間の協力やPKOと他の機関との協力等を通じ、活動の効率化のために一層の努力が図られるべき点を強調したいとと考えます。

 人的資源に関しては、質の高い要員の確保、性的搾取・虐待対策を含む要員の訓練の充実が引き続き重要な課題となっています。PKOにおける軍事・警察要員の規律の維持とそれに必要な訓練について部隊貢献国は主たる責任(primary responsibility)を有しています。我が国は、部隊貢献国として、高度に訓練された部隊の提供に重大な関心を払っており、派遣部隊の規律の維持に関する責任を重く受け止めております。

 また、PKOのマンデートの拡大から、ミッションの文民部門においてそれぞれの分野で優れた専門的人材を配置することが不可欠になっています。事務総長が報告しているように、かかる専門的人材の確保は容易ではなく、その結果がミッション職員の充足率の低下につながっている状況を懸念しています。この観点から、我が国は、昨年8月に、東京において、国連大学と共催で「アジアにおける平和構築分野の人材育成に関するセミナー」を開催いたしました。このセミナーでの議論も踏まえて、我が国として、PKOミッションにおいて活動できる専門的人材の育成を特にアジアにおいて実施する仕組みの構築について検討しているところです。

議長、

 第2に、PKOミッションのフィールドにおける活動の円滑な実施のため、戦略的なガイダンス、支援を有効に実施できる組織作りが重要です。

 この様な問題意識を踏まえ、事務総長はPKO局の改編を提案しています。我々は、急激に拡大している国連平和活動を適切に支えるためには、マネジメントの強化が必要であるとの事務総長の認識を共有し、事務局改編に係る事務総長のイニシアティブを評価します。事務総長の提案については、PKO特別委員会を含め、適切な委員会で議論が行われることが必要であり、我が方としてもこれに積極的に関与していきます。

 我が方としては、事務総長が提案する事務局改編が、フィールドの要求に適時適切に応え、PKO全体の効果的実施につながる体制となるか、財政規律を含めて加盟国に対するアカウンタビリティを高めるものであるか、との点に関心を有しており、これらの観点から事務総長提案が精査されるべきと考えます。

 また、特に軍事部門についての本部機能の強化に関し、現在13名しかいない軍事計画要員の拡充の必要性について、事務局の問題意識を共有します。これらに対応するには、先ずは、事務局における、効果的な管理体制の確立、既存のリソースの効率的な活用が重要であり、一層の努力を促したいと思います。その関連で、昨年設立された戦略軍事セル(SMC)などの他の機構との関係も合わせて検討する必要があります。

議長、

 ミッションにおける文民職員の採用について言及したいと思います。我が国は、ミッションにおいて依然として存在する地理的バランスの不均衡に懸念を表明し、代表性を改善するための措置の必要性を強調したいと思います。

議長、

 最後に、部隊貢献国等と安保理との間の関係強化について、PKO特別委員会の報告書は、従来から、安保理と部隊貢献国等との間の相関関係の向上の重要性について指摘してきました。

 昨年末、安保理PKO作業部会が安保理に対して提出した報告書においては、安保理作業部会は、安保理がミッションの設立や、ミッションの任務等と大幅な変更を伴うマンデートの延長を行う際には、部隊貢献国のみならず例えば、主要財政貢献国などの主要なステークホルダーを招いて作業部会を開催する努力を行うべきである旨勧告しています。

 PKOミッションの設立、マンデート変更に際して、主要なステークホルダーとの意思疎通は極めて重要であり、勧告が実施されるよう、安保理の外においても働きかけが行われることが重要であると考えます。

議長、

 我が国は、PKOという重要な問題を審議する本委員会を極めて重視しており、積極的に貢献する用意があることを改めて強調し、私の発言を終えます。ありがとうございました。

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