
国連の場における演説
第45回社会開発委員会
議題3(b):社会集団の状況に関する国連の行動計画・プログラムのレビュー
高瀬国連代表部公使ステートメント(仮訳)
平成19年2月12日
(英文はこちら)
(序文)
- 議題3(b)「社会集団の状況に関する国連の行動計画・プログラムのレビュー」の議論に参加できることを喜ばしく思います。人間中心のアプローチが開発政策の様々な分野に取り入れられていることに励まされます。我が国は、人間中心のアプローチを通じて、個々の人間の安全保障を強化することを我が国の経済協力の重要な目標の一つとしており、この視点に基づいて社会開発の促進を支援することをお約束します。
- 以下、我が国が重視してきた高齢者、障害者及び青年に係る問題について我が国の取組及び経験をいくつかご紹介します。
(高齢化)
- 昨年、本委員会は、決議44/1の中で、「高齢化に関するマドリッド国際行動計画」の最初のレビュー及び評価の具体的手順を決定しました。我が国は、右に従い、2002年以降に我が国がとった施策をとりまとめ、文書の形でメンバー国に配布しました。世界で最も高齢化が急速に進行している国の一つとして、我が国の経験を共有することは他のメンバー国にとって有益であると期待します。
- 我が国では、65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合(高齢化率)は、昨年、20%を超え、少子高齢化社会は日本社会にとり深刻な問題となっています。
- 我が国は、政府が推進すべき基本的かつ総合的な高齢社会対策の指針として、高齢社会対策大綱を平成13年12月に策定し、右大綱を踏まえ、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境等の分野別の施策を展開してきました。以下、「高齢化に関するマドリッド国際行動計画」に示された論点に従い、我が国が実施した施策のいくつかを文書の中からご紹介します。
- 「高齢化に関するマドリッド国際行動計画」の優先すべき方向性1.の「高齢者と開発」の論点2.「労働と労働力の高齢化」に関し、我が国は年齢に関わりなく均等な雇用機会を確保するため、公共職業安定所による行政指導を中心として、求人の年齢制限の緩和に努めています。また、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入等を行った事業主、及びそれに伴う高年齢者の雇用割合が一定割合を超える事業主を対象として、助成金の支給を行うことにより、継続雇用制度の推進及び定着を図っています。
- 「世代間連帯」及び「所得保障、社会的保護/保障、貧困予防」に関し、少子高齢化が進行する中、将来にわたって持続可能な安心できる公的年金制度を確立するとともに、将来の現役世代の負担が過重なものとならないよう配慮し、世代間・世代内の公平性を確保することを目的として、2004年6月、年金改正法が成立しました。事務総長報告パラ18が指摘するとおり、負担の範囲内で年金給付水準を調整することも改正内容の一つとなっています。
- 優先すべき方向性3.の「活動可能かつ支援的な環境の確保」の「介護と介護者支援」に関し、我が国は、高齢化の進展に伴い、これまで老人福祉と老人医療に分かれていた高齢者の介護に関する制度を再編成し、利用しやすく公平で効率的な社会的支援システムを構築するため、2000年に介護保険制度を導入しました。右制度は、2005年に見直しが行われ、制度の持続可能性を確保するために、予防重視型システムへの転換を内容とする介護保険制度の改正が行われました。
- ご紹介したのは、初期調査の一部ですが、我が国はこのような成果を基に、本年後半に予定されている地域レベルの諸活動を含め、社会開発委員会のレビュー及び評価の作業に積極的に参加していく考えです。
(障害者)
- 2006年12月、第61回国連総会本会議において障害者権利条約と選択議定書が全会一致で採択されたことを歓迎します。我が国は、2002年7月に第一回障害者権利条約アドホック委員会が開催されて以来、本条約交渉に積極的に参加してきました。この交渉過程は、日本国内における障害者施策をめぐる議論の高まりと時期を同じくし、少なからぬ影響を与えました。国内では、2004年5月に障害者基本法が改正され、それまでの憲法における法の下の平等に加え、障害を理由とする差別の禁止が初めて個別法に明記されたほか、この2年ほどの間に、雇用、福祉サービス、教育、公共施設・交通機関におけるアクセシビリティの各分野で障害者の自立と社会参加を大きく促進させる法制度改正が行われたところです。
- 今後、障害者の権利の保護促進のため、本条約を実施に移していくことが重要であり、我が国としても、本条約の署名、さらには締結に向けて真剣な検討を行っていく考えです。
(青年)
- 最後に、青年に係る問題について触れます。青年は持続可能な経済成長及び社会的発展に重要な貢献をすると同時に、雇用を通じて彼らの人間性の尊厳を高めることができると考えます。我が国は、開発途上国の青年、特に社会的弱者である女性に重点を置いた雇用機会の向上、技術教育・職業訓練を通じ、積極的に支援を行っています。
- 我が国は、「人づくり」は国造りの成功に直接的に関わるとの考えから、開発途上国における青年、特に女子の教育に重点を置いた基礎教育、高等教育の質の向上及び職業訓練の充実に向けた支援を行っています。教育分野の政府開発援助は、過去10年間で100億ドル以上の支援を実施しています。
- アジア太平洋地域において、我が国は、30年以上にわたって「人づくり」の分野においてILOを通じた技術協力を行ってきました。2004年12月、「グローバル化と若者の未来に関するアジア・シンポジウム」をILO及び国連大学と共催し、「若者は資産である」というメッセージをアジアから世界に向けて発信しました。我が国は、これからも若年者の雇用のための支援を実施していく所存です。
(結語)
- 本会合のレビューが、全ての人ひとりひとりが、より良い、そしてより健康的な人生を送ることができる世界を創ることに貢献することを希望します。
有り難うございました。