演説

樽井軍縮代表部大使演説

2007年BWC締約国会合における樽井軍縮代表部大使スピーチ「地域協力」(仮訳)

平成19年12月12日
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II. 条約履行における地域協力

 我が国はBWC履行における地域協力が果たす役割を重視しており、前回の専門家会合で行ったプレゼンテーションで紹介したとおり、これまでに、生物・化学テロ対策のために開催した地域セミナーにおいてもその効果が確認されている。

1.総論(地域協力の意義)

 BWCの完全な履行を確保するために、必要な国内措置を講ずることは各締約国の責任である。それに加えて、国境を越えて被害が拡大するという特徴を持つ生物学的脅威への予防及び対処、規制の緩い国においてテロリストのような非国家主体等が生物兵器の開発・製造を行うことの防止、地域の全ての国によってBWCが漏れなく履行されることを確保するために、地域的な協力も行うことは条約の強化に資する大きな意義があると考える。

2.我が国の立場

(1)地域協力の分野

 こうした観点から、条約の履行の強化に資する地域協力の分野として、国内法整備のための支援、輸出入管理、サーベイランス等におけるキャパシティ・ビルディング、法執行体制確立のためのセミナーの開催、警察、司法といった法執行機関や保健関連機関の地域ネットワークの構築、科学者や産業界に対する啓蒙活動のための地域セミナーの開催などが重要であると思料。これらの協力を通じて、地域におけるBWC実施能力を高めることにより、条約の強化につながると考えられる。

(2)地域協力のあり方

 BWC履行に係る地域協力のあり方について、これまでの地域協力への取り組みを通じて我が国が得た教訓は、BWCの履行のための地域的協力を進める際には、必ずしもBWCに特化した形で行う必要はないということである。WMD不拡散、テロ対策といった安全保障分野や感染症対策といった保健・衛生分野における地域協力の機会を広く捉え、そのなかでBWCの重要性を提起することにより、関係者の間で広く認識され、保健・法執行機関間の地域的な連携の強化に資するなど、BWCの履行の向上に有益である点を指摘したい。

(3)地域協力の副次的効果(普遍化のためのインセンティブ)

 また、これらの様々なBWCに関する地域協力の副次的効果として、地域のBWC未締約国が条約に加入するインセンティブとなり、普遍化を進めていくことも期待できる点についても指摘したい。

3.地域協力に関する今後の我が国の方向性

 我が国としては、地域的協力としてアジア諸国を対象とした地域セミナーを重視しており、本年までの5年間「生物・化学テロ対策セミナー」を実施し、また93年から毎年「アジア輸出管理セミナー」を東京で開催してきた。これらのような、BWCと関連する地域協力の機会をうまく捉え、BWCの重要性についても広く認識され、参加国の条約実施能力の強化につながるよう、今後とも努力を続けていきたいと考えている。

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