演説

麻生外務大臣演説

東方学会創立60周年記念大会 大臣祝辞

平成19年6月23日


 東方学会がこのたび、人間に喩えますなら還暦に当たる創立60周年の嘉日をお迎えになりますこと、外務大臣として心よりお喜びを申し上げます。

 発足の年、昭和22年と申せば、我が国土は未だ荒廃の中にあり、人心また、必ずしも平安とは申せぬときでありました。皆様にとって欠くことのできぬ紙ですら、到底十分手になど入らぬ時代でありましたでしょう。

 まさしくそのようなうちにあって、我が国アジア諸学の力強い復興と前進を目指し、いち早く立ち上がられた先学諸氏の学問的情熱とは、今日顧みて、屹然、まことに振り仰ぐに値するものであります。

 記憶とは、人をして動物から区別せしめるものであり、その集合を共有するとき、国民は国民になるものでありましょう。これに厳密な実証の光を当てんとする歴史学において、どれほど豊かな蓄積を持ち得るか否か。これは、目に見えぬようでいながら、ある決定的な差を国民とその文化にもたらすものと信じます。本日、外務大臣として皆様の歩んでこられた長途を思い、達成を寿ぐことができますことは、わたくしの欣快とし、誇りとするゆえんであります。

 アジアと聞き、「停滞」の二文字を想起した時代は彼方に去りました。アジアが向上心の別名となり、次第に自由と繁栄の代名詞となった今日、学問の普遍性を信じて早くから研究の国際性を追い求めてこられた皆様の努力もまた、大いに報われようとしているのだと考えます。アジア各国との関係、ますます密な我が国にとって、東方学会に寄せられる期待はこれまでにもまして高まっております。

 今日までの皆様の孜々たる精進に改めて敬意を表しますとともに、東方学研究のさらなる拡充、発展をお祈りし、わたくしからの祝辞とさせていただきます。

 外務大臣 麻生太郎

(文化交流課長代読)

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