演説

麻生外務大臣演説

第52回国際東方学者会議への大臣祝辞

平成19年5月18日
於・日本教育会館


 私挨拶をせよと仰せつかりまして、今回シンポジウムで発表されるペーパーの題名をざっと拝見いたしました。

 「朝貢から互市へ」というタイトルが見えます。これは中国の交易関係を論ずるものでしょうか。From Tribute to Mutual Tradeという英語の題名を見ますと、なんとなく中身の想像がつきます。ほかには、「分岐か独自か・アジア史とグローバルヒストリー」、かと思いますと、「風景の発見・日本文学の場合」などなど、題名から想像を逞しくするほかありませんが、大いに関心をそそられるテーマが並んでおります。

 東方学会に集う研究者の皆さんが、現代と歴史を盛んに往復なさる尽きない好奇心をお持ちであることをよく理解できる気がいたしました。

 皆様の研究分野は、苦心して本になさっても、ベストセラーになどならぬものと心得ます。一つの研究に、おそらくは短くても数年、十年やそこらは、ざらにかかるというものでありましょう。それにしては、割に合わない分野であろうと、アマチュア歴史ファンとしては常々思って参りました。

 しかしそのような、いわば当座の用ではなく、悠久の歴史に真理を求める学問に精を出す人が、社会の中で必ず一定比率いるということ。そこに私は、日本の底力を支える見えない担保があると思うものです。さらに申せば、そのような方々が、日本の歴史を通じて、脈々と絶えることなく、必ずいつもいたおかげで、私どものアジア地域に対する理解が常に一定の量と質を保ってきたのであろう、しかもその質・量たるや、世界のどこに出しても見劣りせぬどころか、大いに胸を張ってよいものであったのだろうと、思っております。

 素人考えをこれ以上申し上げますとボロが出ますので、本日ここに、第52回目の国際東方学者会議を開催なさいますことに心よりお慶びを申し上げ、皆様方のさらなる精進を期待申し上げまして、私の挨拶と代えさせていただきます。

 外務大臣
 麻生太郎

(広報文化交流部参事官代読)

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