
国連の場における演説
第61回国連総会 議題44「平和の文化」
神余大使演説(仮訳)
平成18年11月3日(金曜日)午前
場所:総会本会議場
(英文はこちら)
(序文)
- 昨年の第60回総会において、各国首脳は「平和の文化に関する宣言及び行動計画」及び「文明間の対話のグローバル・アジェンダ」を推進していく必要性を再確認した。ユネスコが主要な実施機関として、「児童のための平和の文化及び非暴力のための10年(2001-2010年)」の実施状況の中間レビューを行ったことを評価する。
- 「平和の文化」は、人権の尊重、民主主義と寛容、開発の促進、平和のための教育、自由な情報の流れ、暴力や紛争の防止における女性の幅広い参加等、様々な分野に関わるものであり、国連の全ての活動は「平和の文化」の促進に貢献している。レビューの結果、国連機関、政府及び市民社会が「平和の文化」を一層推進していくための世界的な枠組みを強化するための効果的なアプローチを見つけることが重要である。
- 我が国は、持続的な平和のためには、人間が重大な脅威から解放され、尊厳をもって生活できることが不可欠であるとの考えの下、「人間の安全保障」の概念と右に基づくアプローチを推進してきている。ここで、我が国が特に関心を向けている「教育」及び「文明間の対話」について簡単に述べたい。
(教育)
- しばしば指摘されるように、平和、開発と人権は相互に補完し合うものであり、戦後60年の我が国自身の経験はこのことを証明している。我が国は、基礎教育は基本的人権であり、教育への投資は国造りの基礎となるべきであるとの考えの下、過去5年間で教育分野において約47.18億ドルに上るODA支援を行った。開発途上国における「万人のための教育(EFA)」の目標の達成を支援するため、我が国は2002年にG8カナナスキス・サミットにおいて「成長のための基礎教育イニシアチブ(BEGIN)」を発表し、開発途上国が基礎教育の質を改善するために支援を行うことを表明した。開発途上国のオーナーシップを尊重しつつ、教育の機会確保、質の向上、マネジメントの改善に向けた支援を実施している。
- また、2005年、小泉総理(当時)は「国連持続可能な開発のための教育の10年」(ESDの10年)を提案した。我が国は、教育は持続可能な発展の達成の主要な要素の一つであるとの認識の下、推進役を担うユネスコ及び他の国際機関や関係機関とともに、ESDの10年の推進に貢献してきており、今後とも引き続きESDの10年の推進を呼びかけていく。
(文明間の対話)
- 2005年9月の首脳会合の成果文書の中で、首脳は世界の多様性を認識し、全ての文化及び文明は人間性の向上に貢献することを確認した。グローバリゼーションの進展は、異なる文化や文明が直接接触する機会を生み、社会に大きな利益をもたらすと同時に、自分と異なる文明に接した時に人々の間に不寛容を生み出すことがある。このような不幸な状況に取り組むためには、寛容の精神と深い相互理解にたった文明間の対話が重要である。
- 我が国は、特に、ユネスコが「文明間の対話」の促進において果たしてきた主要な役割を高く評価。ユネスコは文明間の対話のグローバル・アジェンダの枠組みにおいて、文明間の対話をテーマに地域に焦点をあてた広範な活動や会合及びシンポジウムを開催してきている。
- 我が国は、世界の多様な文化及び文明間の相互理解を促進し、異なる文明に属する人々の相互発展と尊厳を高めることが「平和の文化」の促進に寄与するとの考えの下、様々な文化・文明間対話に関する取り組みを行っている。日本は、2005年7月、伝統を維持しつつ近代化に取り組む各国の経験を共有するため、世界文明フォーラム2005を開催した他、中東文化交流・対話ミッション等を実施している。今後とも各国と協調して、文化及び文明の対話全般を推進していきたい。
(まとめ)
- 「平和の文化」とは全ての人間に関わる問題である。全ての人が人間性の平等と尊重の原則に基づいて暮らすことができる調和と平和の世界を構築するため、異なる文化、文明間の対話や意見交換を促進するための相互の緊密な協力が極めて重要である。
- 「平和の文化」の促進に向け、日本として一層努力をしていく所存である。