平成18年10月30日
(英文はこちら)
議長、
基本的人権は普遍的価値であり、いかなる国家も、自国民の人権を擁護し促進するという基本的責務から逃れることはできません。自由で民主的な社会においては、基本的人権を尊重し保護することは、政府と市民にとって非常に重要なことです。
国内においてのみではありません。ウィーン人権宣言及び行動計画に規定されているように、全ての人権の推進と擁護は、国際社会の正当な関心事項となっています。
現実の世界でこの目標を達成するためには、人権の推進における「理念」と「実施」のバランスをとることが必要です。我が国は、当該国の歴史や伝統、文化など固有の実情にも配慮しつつ、普遍的価値である人権の保護促進を実現するために努力します。
国連は、人権分野での規範設定に重要な役割を果たしてきました。最新の成果として、人権理事会の最初の成果の一つとなった強制的失踪条約、アド・ホック委員会での長きにわたる交渉の結果まとまった障害者人権条約があります。日本は、これら条約案が総会において、可能な限り早期に採択されることを切に希望します。
議長、
人権理事会の創設は、国際社会における人権の主流化に向けた重要な一歩を象徴しています。新設された人権理事会は、人権委員会が達成してきた成果、特に人権規範設定における成果を基礎として、国家とコミュニティーが、原則や規則、規範を実施する能力を強化することに貢献し、現場における人権の保護促進に顕著な変化をもたらすフォーラムへと発展することが期待されています。
しかしながら、これまでのところ、人権理事会の活動は、私たちの期待に十分応えていないのではないかと懸念されます。人権理事会が、早急に、人権分野での新たな国際協力の新たな精神を育成し、人権問題を扱う実践を構築するための方途、特に、大規模かつ深刻な人権侵害に機敏かつ柔軟に対応するための方法を見つけ出すことを、真剣に期待しています。このために、我が国は、人権理事会理事国として建設的な役割を果たしていきます。
我が国は、人権高等弁務官が、支援を必要としている国に対する支持と支援を強化し、それぞれの国の状況に応じた複合的な対応を実施することを通じて、人権高等弁務官事務所による各国への関与を強化していく努力を支援します。
議長、
世界の人権状況は、この数十年の間に大きく改善し、世界の多くの地域で民主化と法の支配に格段の進展が見られました。しかしながら、世界には人権侵害がまだ多数存在していることも事実です。国連は、まさにこうした人権侵害解決のために活動を続けなければなりません。このために、国際社会が可能な限り一致して行動し、そのような人権侵害に対して明確なメッセージを送る必要があります。
我が国近隣におけるひとつの例が北朝鮮です。北朝鮮においては、重大な人権侵害が継続しており、改善の兆しはありません。北朝鮮工作員による日本人を含む外国人の拉致問題は未解決のままです。北朝鮮当局は、かつて我が国に対して日本人を拉致した事実を認めている一方で、11名の拉致被害者に関し、被害を受けた家族の悲しみにもかかわらず十分な情報を提供していません。
我が国は、北朝鮮に対して、拉致被害者の即時本国返還を含め、人権侵害の問題に真剣に対処するよう求めます。また、昨年総会により採択された人権状況決議における呼びかけに真摯に応え、同時に、北朝鮮が、国際社会の人道問題に関する懸念に応えることの重要性を強調した安保理決議1718によって表明された懸念に対しても真摯に対応することを求めます。
本日、この議場において、拉致被害者の家族とその支援者が第三委員会の審議を傍聴していることを申し上げたいと思います。我が国代表団は、この委員会での審議が、人権・人道上の懸念に十分配慮しつつ、この人間の尊厳に関わる痛ましい事件を早期に解決して欲しいという彼らの切なる願いへの支援となることを強く望みます。
この関連で、我が国は、北朝鮮人権状況に関する特別報告者であるムンタボーン氏の真摯な対応振りを評価しています。我が国は、北朝鮮が、国際社会の呼びかけに応え、特別報告者を可能な限り早期に受け入れることを求めます。そうすることは、市民の人権を気遣う国家であれば、最小限すべきことです。北朝鮮当局が、共通の価値を最低限尊重していることを示し、核実験やミサイル発射による威嚇ではなく、国際社会との対話に関与することが期待されているのです。
議長、
最後に、世界中の全ての人権の保護促進のために、私たちの努力を強める時です。我が国としては、この目的のために、国際社会、特に国連と協力しつつ建設的に活動を続ける所存です。