平成18年10月12日
(英文はこちら)
わが国は、子どもは将来の希望であるとの考えの下、児童の権利の促進・保護に努めている。世界中の子どもによりよい将来を保障するために、今後も引き続き、他の加盟国及び国際機関とともに努力していくことを約束する。
児童の権利に関して、わが国が特に関心を向けている幾つかの問題について簡単に述べたい。
わが国は、2002年の国連子ども特別総会のフォローアップに関する包括的な事務総長報告を歓迎する。わが国は、国連子ども特総の結論を完全に支持しており、採択文書「子どもにふさわしい世界」の宣言及び行動計画を引き続き実施していく。
2007年は、国連子ども特総が開催されてから5年目にあたり、総会において特総のフォローアップの審議が行われる予定である。過去5年間に加盟国、国際機関、市民社会により子どものためにいかなる取組が行われたかを振り返るとともに、「子どもにふさわしい世界」の目標達成に向け各国が直面する課題を分析することは重要である。わが国は、審議を通じて、人間中心のアプローチである「人間の安全保障」の視点に基づき、この目標を達成することを改めて約束する。
我が国は、「人間の安全保障」を日本外交の柱に据え、このアプローチにより、人々を貧困、環境破壊、紛争、地雷、難民問題、麻薬、感染症など、多様な脅威から守り、脅威に対処できるよう人々の能力強化を図ることができると信じている。
子どもは、グローバル化や増大する紛争を含む世界的趨勢に対して、脆弱な存在である。我々は大人として、子どもの健全な成長が保障されるように、子どもが脅威のない環境で生活する権利の保護を確保する責任を有している。
この概念の下で、わが国は、本年3月、ユネスコ及び世界保健機関(WHO)が紛争発生後のチェチェン共和国において学齢期の児童や教員の教育への復帰を支援するために、その心身の回復を支援する「チェチェンの児童・教師に対する総合的リハビリに係る能力開発プロジェクト」に対し、人間の安全保障基金を通じ、約97万7,900ドルの支援を行った。
独立専門家ピネイロ氏が「児童に対する暴力に関する事務総長調査」報告を提出したことを評価する。この調査は、国連が実施したこの問題に関する初めての包括的かつ世界規模の調査であり、調査の過程において自らが受けた暴力の経験を踏まえて児童自身が参加をしたという点で非常に意義がある。
本件調査により、児童に対する暴力は、家庭、学校、保護・司法機関、職場、地域社会など様々な場所において、また、虐待、搾取的労働、性的搾取、いじめ等様々な形態で存在しており、ただでさえ脆弱な子どもが多くの危険にさらされ、権利を享受できない現状が明らかになった。わが国は、この調査で示されたデータ及び指標が広く世界で共有され、この調査に基づいて、児童に対する暴力を直ちに撲滅するために、各国が一層取組を強化することを期待する。
我が国では、近年、児童虐待が早急に取り組むべき社会全体の課題となってきていることから、この分野における取組みを促進しており、2004年に児童虐待防止法、児童福祉法を改正した。また、2001年に第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議を開催した我が国としては、引き続き児童の保護分野での国際協力を促進していきたい。
2006年はグラサ・マシェル氏による「武力紛争が児童に与える影響」報告書が発出されてから10年の節目にあたる。この間、紛争下の児童の問題に対する関心が高まり、1998年に、安保理が本件を国際の平和と安全の議題の下で正式に取り上げるようになり、それ以降、「適用に移す時期」への重要なステップとなった安保理決議1612(2005)の採択を含め、安保理がこの分野で重要な役割を果たしている。
わが国は、安保理決議1612により設置された紛争下の児童の保護を促進するための監視・報告メカニズムがブルンジ、コンゴ(民)、ソマリア及びスーダンにおいて設立されたことを歓迎するとともに、紛争下の児童の状況について客観的かつ信頼できる情報が提供されることを期待する。
他方、紛争下で児童が置かれている現状は引き続き深刻であり、状況改善のために国際社会が取り組むべき課題は多い。多くの元児童兵は武装集団に再雇用されており、元児童兵の暫定武装解除・動員解除・社会復帰プログラムにより、元児童兵を保護することが重要である。わが国は、人間の安全保障の理念に基づき、平和の定着に向けた支援の一環として、国連開発計画(UNDP)やユニセフなどによる紛争下の児童に対する事業を支援している。本年2月には、国連開発計画による「大湖地域元児童兵社会復帰支援プログラム」を支援した。わが国は、今後も紛争下の児童の問題に対処するために、他の加盟国、国連機関及び市民社会と緊密に協力していきたい。
近年、インド洋津波、パキスタン大地震等、大規模の自然災害が頻発している。我が国は、津波災害に対し、ユニセフを始めとする国際機関に拠出した資金を活用し、総額約8,600万ドルの「津波被災子ども支援プラン」を実施した。同支援の柱は「子どもの生存」及び「子どもの保護」であり、感染症等を予防するとともに、児童の人身取引等の防止に貢献した。しかし、ユニセフの世界子ども白書が指摘するように、自然災害の被害を受け、引き続き基礎的なモノやサービスを享受できない子どもが依然多く存在している。このような経験を踏まえ、今後とも本分野での取組みを重視していきたい。