平成18年10月10日
議長、
われわれは、昨年の「北京プラス10」ハイレベル会議及び世界首脳会合において、ジェンダーの平等が開発、平和と安全を進展させるために不可欠であることを再確認しました。わが国はこの価値と原則を共有し、北京宣言・行動綱領の効果的な実施なくして、ミレニアム開発目標を含む国際的合意や開発目標を達成することはできないと考えます。社会において幅広く重要な役割を担う女性が、潜在能力を十分発揮できる男女共同参画社会を実現するためにはさらなる努力が必要です。
議長、
社会経済情勢の変化に対応し、人々の暮らしの改善につながる分野での女性の一層の参画が望まれています。
我が国では、改定された男女共同参画基本計画(第2次)において、「新たな取組を必要とする分野」として環境、防災などの分野を明確に位置づけました。さらに「2020年までに指導的地位に占める女性の割合が少なくとも30%程度となるように期待する」という目標を明記しています。
今年、我が国は雇用の分野における性差別の禁止等を規定している「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)」を改定し、性差別禁止の範囲の拡大、妊娠等を理由とする不利益取扱いの禁止等を定めました。この改正法が社会におけるさらなる女性の参加を促進することが期待されます。
この分野に関する国際的取り組みとしては、本年6月に東京において、「東アジアにおけるジェンダーの平等をめざして」のテーマのもと、東アジア男女共同参画担当大臣会合を主催しました。グローバリゼーション、女性の権利、意思決定過程への女性の参加等に関する意見交換が行われ、ジェンダーの平等を促進するための方策について話し合われました。会合の最後には、模範的な活動や教訓の共有を目的とした東アジア地域のネットワークを促進する「東京閣僚共同コミュニケ」を採択しました。
議長、
我が国は、本総会に提出された「女性に対する暴力に関する事務総長調査報告(A/61/122/Add.1)」を歓迎します。この包括的な報告書は、女性に対する暴力の問題について様々な観点から分析を行い、女性に対する暴力撤廃に向けたグッド・プラクティスや教訓を示唆しています。日本はこの分野におけるUNIFEM(国際婦人開発基金)の役割を重視し、その活動を支援しています。我が国は、国連諸機関が、女性に対する暴力撤廃に向けたプログラムやプロジェクトを効果的かつ効率的に実施するために、その政策や戦略を充実させていくことを期待します。
女性に対する暴力の根絶に向け、我が国が国内で実施してきた活動を紹介します。まず、配偶者からの暴力の問題を総合的に規定した法律である「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」に基づいて、地方公共団体は2006年9月1日現在全国170箇所に配偶者暴力相談支援センターを設置しており、これらセンターが被害者である女性に対して必要な支援を行っています。
また、人身取引は重大な犯罪及び人権侵害であり、迅速・的確な対応が必要との認識の下、我が国は「人身取引対策行動計画」を2004年に策定し、同行動計画に基づく対策を実施しています。人身取引の防止と根絶にむけて、国際的には関連諸国間の緊密な協力が必要です。我が国はフィリピン、タイ、コロンビア、インドネシア、ロシア等に政府協議調査団を派遣し、先方政府関係機関、NGO,国際機関、宗教団体等と人身取引対策について協議し情報を交換しました。
議長、
我が国は、昨年に発表した「ジェンダーと開発(GAD:Gender And Development)イニシアティブ」に基づいて、ODAの実施に関する全ての過程や分野において、ジェンダー平等の視点を取り入れるよう努めるとともに、ジェンダー平等な社会の達成に努力する開発途上国への支援を強化してきました。また人間の生存、生活、尊厳に対する深刻かつ広範な脅威から人々を守り、人々の豊かな可能性を実現するために人々の能力強化を図ることを目的とする「人間の安全保障」の概念を推進しています。我が国は、このような保護と能力強化を通じて、社会における女性の参加が促進されると考えます。
我が国が、人間の安全保障基金を通じて「人間の安全保障」の実現に向けて行っている支援の具体例を紹介します。
東チモールにおける「アイナロ・マナトゥトゥにおけるコミュニティ復興プロジェクト」ではコミュニティの活性化を目的として、500万ドルの支援を行っています。このプロジェクトでは機織りや篭作りといった所得生成活動も実施しており、女性が参加することでコミュニティ開発に貢献できることを目的としています。
アフガニスタンにおいては、UNIFEMの活動を支援し、女性の難民や国内避難民の社会的再統合を促進しています。この支援は、職業訓練、セミナーの開催、所得生成活動等を行っています。
議長、
最後になりましたが、日本政府は、国内・国外における男女共同参画社会を実現するとの我が国の決意を再確認し、この目標に向け、国際機関及びNGOを含む市民社会との緊密なパートナーシップのもと活動を続けていく所存です。
ありがとうございました。