演説

国連の場における演説

「国際法の強化:法の支配と国際の平和と安全の維持」に関する安保理公開討論における北岡国連大使ステートメント(仮訳)

平成18年6月22日

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議長、

 国際法は、安保理が国際の平和と安全を維持していくにあたり基盤となるものです。この基盤を強化していくために安保理の果たす役割について議論する本日の会合開催をわが国として歓迎します。ムラー・デンマーク外相に対し、この重要な会合の開催と議長を務められていることに謝意を述べるとともに、ヒギンズ国際司法裁判所長及びミシェル国連法律顧問に対してもそれぞれの深みのある啓発的な演説をいただいたことを感謝いたします。

議長、

 貴議長は、安保理の役割のうち紛争及び紛争後の事態における法の支配の推進、国際犯罪の不処罰の終了、国連制裁レジームの効率性と信頼性の向上及び紛争の平和的解決という4つの側面に焦点を当てられました。これらはいずれも安保理が直接かかわる重要な側面であり、特にこの10年間に大きな進展が見られました。安保理がこれら問題への今後の対応を検討する必要がある点について、わが国としても同意します。

議長、

 正義と法の支配を推進することは、紛争後の脆弱な社会が再び紛争の被害に陥ることなく、社会を再構築し、持続可能な平和を構築することを可能ならしめることに他なりません。紛争及び紛争後の事態に対して安保理が法の支配を推進するための支援を検討するに当たっては、これらの事態に置かれた住民の支持と参加を確保することが必須です。このため、特にマイノリティ、女性、子供といった社会的弱者にとって法律が公正に適用されることが必要であり、また広報活動や啓蒙活動の重要性も見落としてはなりません。

 さらに、法の支配を推進する処方箋は一つだけではありません。新たな指導者や彼らを支援する関係者の判断を助けるために、国連としてベスト・プラクティスを提示することは大いに参考となりましょう。

 国際犯罪の不処罰に終止符を打つことは、新たな国家や社会を構築する上で必要な一段階です。とりわけ、重大な犯罪に責任を有する者を処罰し、法と秩序に対する尊重を高めることが重要です。国際刑事裁判所が本格的な活動を行っていることを踏まえ、今後安保理としてこれまで設置に関与した旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)、ルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)等の国際法廷の出口戦略を真剣に検討する必要があります。

 紛争後の社会に対する支援を決める際、また新たに設置された平和構築委員会での議論において、不処罰への対応を含めた法の支配に十分な配慮が払われることを期待します。

議長、

 安保理がターゲット制裁を採用することによって、制裁の効率性は増しました。しかし、制裁対象として個人や団体に焦点が当てられることにより、誤って制裁対象とされた者やもはや制裁対象に値しない者をめぐる扱いから、同制裁の透明性、効率性及び信頼性に疑問が投げかけられていることも事実です。わが国として、制裁は国際の平和と安全の維持に有効な手段たり得ると考えています。その観点から、制裁をめぐる手続きをより明確にし、真の制裁対象者が制裁を回避する可能性を減じ、そして制裁対象リストへの掲載に不満を持つ者の声が制裁委員会にできるだけ届くようにすることによってかなり懸念は解消できると考えます。これらの要素を達成することによって、制裁レジームに対する加盟国よりの信頼性を向上させることができると信じます。

議長、

 最後に、政治、経済、文化その他における国家や社会の相互接触が増大することに伴い、紛争の数は増大するものです。しかし、重要なことは、これを拡大させることなく、できるだけ法的手続に沿って坦々と処置することです。これこそが、国連、特に安保理が、国際司法裁判所等の司法機関と緊密に協力しながら、努力すべきことです。この観点から、法に対する尊重の気風を強化していくこと、そして国際法が国の大小を問わず平等に適用されることが重要と考えます。

 安保理は、平和を取り戻した社会に法の支配を根付かせる努力をしてきました。安保理には、今後もそのために最大限の努力を継続する使命があり、安保理の国際的な法秩序形成と適用が国際社会より強力に後押しされる必要があります。安保理はこの分野でも改善すべきは改善する態度で活動に取り組むことが重要です。今後わが国としても、そのために最大限の協力をしていきたいと考えます。

 有り難うございます。

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