平成18年4月4日
於:ニューヨーク
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議長、
この重要な委員会の議長への就任を祝福いたします。また、我々の討議のために報告書を作成された事務局の方々のご尽力に敬意を表します。
本セッションのテーマである「国際移民」は、広範にわたり影響を与える多面的側面を持った問題であります。個人は様々な理由で移住します。戦争、社会不安、政治的迫害から逃れる目的の者もいれば、貧困、飢餓をきっかけに、自分のため、そして家族のために、より良い生活を求めて移住する者もいます。また、トラフィキングの被害者として、不本意ながら故郷を去る者もいます。従って、国際移民について討議する際には、開発、経済、人口、外交政策、そして国際法の観点から考慮されなければなりません。
しかしながら、国際移民は基本的に人権と尊厳の問題であり、この点において「人間の安全保障」の概念に当てはまります。「人間の安全保障」とは、個人の保護とエンパワーメントを重視し、開発事業の焦点を国家からコミュニティー及び個人レベルへ移行するものです。グローバル化が進む今日、国際移民に関する問題は、国家だけで対応することが益々困難になっており、集団的な行動が必要であります。我々は、「人間の安全保障」が、このような国際協力の概念的枠組みになるものと信じております。
今年2月、我が国がメキシコ政府と共催した「人間の安全保障ワークショップ」でも協議されましたが、国際移民は、労働移民、難民、国内避難民、トラフィキング被害者の4つに分類することができます。ここで、我が国の国際移民に関する政策を紹介したいと思います。
第一は、移民労働者についてです。我が国は、戦前及び戦後しばらく、主に中南米地域を中心に多くの移民を送り出していました。しかしながら、今日、我が国は他の多くの先進国同様、移民の受入国となっています。この背景には、現在我が国で進行する少子・高齢化という問題があります。我が国の人口は、2000年には約1.27億人で、そのうち17.4%が65歳以上でした。2050年には、人口は約1億人まで減少し、他方、65歳以上の人口はほぼ倍増すると予想されています。これらの傾向を踏まえ、我が国は1999年に閣議決定された「第9次雇用対策基本計画」を基に、我が国の経済、社会への貢献や国際化に資するものとして、技術を持った労働者を受け入れています。
第二に、我が国のトラフィキングに対する取組みについてです。トラフィキングは、深刻な人権侵害であり、迅速かつ決定的な対策を必要とするものであります。我が国は、二国間ODAや「人間の安全保障基金」、国際移住機関(IOM)を始めとする国際機関への貢献を通じて、特にアジアを中心とする、トラフィキング被害者の送出国によるトラフィキングの防止、及びその被害者の社会復帰のための努力を支援しています。例えば、先月、「人間安全保障基金」を通じた協力として、我が国はタイ及びフィリピンにおけるトラフィキング犠牲者のための事業に関し、約200万ドルの資金援助を行いました。また、IOMの人身取引被害者帰国支援事業を支援しており、先月末までに67名の被害者の帰国・再定住が実現しました。
また、自然災害の被災地域におけるトラフィキングの脅威について認識を持つことが重要です。女性や子どものような弱い立場の人々を保護しなければならないとの考えから、我が国は国連児童基金(UNICEF)、国連人間居住センター(UN Habitat)、IOMや世界保健機関(WHO)といった国際機関に対して約8,600万ドルを拠出し、「津波被災子ども支援プラン」を実施しました。
このような国際協力に加え、我が国は国を挙げてトラフィキングの問題に取り組んでいます。2004年に人身取引対策関係省庁連絡会議を設置し、人身取引の防止、取り締まり強化、被害者保護に焦点をあてた包括的な国家行動計画を策定しました。また、昨年は「国際組織犯罪防止条約人身取引議定書」及び「国際組織犯罪防止条約密入国議定書」の締結に関して国会承認を得るとともに、刑法を改正し、罰則を伴う行為の範囲を拡大し、厳しい刑罰を課すことで、より効果的にトラフィキングに対応できるようになりました。
第三に、我が国は恒久平和と基本的人権及び自由の尊重の推進のため、努力を続けて参りました。国際機関に対する財政支援を通じて難民を支援し、また、人道的理由だけではなく、東南アジアの平和と安定への貢献との観点から、1979年以来、インドシナ難民を受け入れてきました。また、「難民の地位に関する条約」への加入に伴い、難民を支援するため「入管法」の改正いたしました。
議長、
最後に、国際人口・開発会議(ICPD)の「行動計画」及び「ミレニアム開発目標」(MDGs)の達成に向けた我が国の貢献について改めて確認するとともに、「人間の安全保障」の観点を踏まえた、国際移民及び人口問題への取組みの必要性を強調いたします。我が国は、今後も国際社会と協力して、これらの問題に対する問題に取り組んでまいります。
どうも有り難うございます。