演説

国連の場における演説

北岡伸一日本政府代表部次席大使による演説
(仮訳)
第60回国連総会第三委員会
議題69 人種主義・人種差別撤廃

2005年11月8日
於:ニューヨーク

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議長、
 歴史を通じて、多くの人々が、人種に基づくのみならず、肌の色、性別、言語あるいは宗教、同様に、歴史的、社会的、文化的、経済的理由による差別に苦しめられてきました。差別は、元も深刻な人権侵害の一つであり、最も非難すべき人権侵害です。国連が人権に関する様々な規範とメカニズムを発展させていく中で、国際社会は、例えばアパルトヘイトの撤廃のために、一致団結することができました。その一方で、グローバル化、移民労働者、技術発達といった新たな事態が、新しい形態の人種差別、人種主義を生み出すような新たな状況を生み出しています。更に、紛争下では、人種差別や人種主義が大量虐殺を引き起こす重要な要素となっています。

 ディエヌ特別報告者の報告書(A/60/283)を大きな関心を以て留意しました。同報告書で「人種主義、差別とアイデンティティーに関する網羅的研究実施の重要性」及び「あらゆる形態の人種主義及び差別を同等に扱うことの必要性」を挙げていることは興味深いと思います。特別報告者が指摘するとおり、人種差別、外国人排斥とアイデンティティーの関係は、常に問題の発生をはらんでいますし、差別についてその原因を十分に理解し、あらゆる形態の差別を同等に扱った上で、差別をなくすための努力をしていくことは重要です。

 日本においては、政府と地方自治体が、公教育の実施や啓蒙活動といった差別撤廃のための措置をとってきています。それらの措置は、状況改善に効果を上げてきていますが、未だに問題があるかもしれず、更なる努力が必要となっています。このことは、国内の外国人の数が増え続けている状況では特に重要です。過去数年にわたり、日本政府は、人権擁護法案の成立に努力してきています。人権擁護法案では、人種に係る差別禁止を規定しており、差別的取扱い・差別助長行為を禁止しています。この法案により日本の人権状況が更に改善されるでしょう。できる限り早期に法案が成立することが望まれています。

 人は生まれながらにして人種差別者ではなく、無知と偏見によって育成されるものであり、教育と意識向上が多文化で寛容的な社会を創り出すためには必要不可欠です。学校教育カリキュラムの一環として、若者たちは国内外の異なる文化の人々並びに異なる社会階層の人々とどのように共存するかについて教えられるべきです。同時に、教育と意識向上活動によって、そのような将来の人種主義者や人種差別主義者を育てない方法が可能である。我が国では、政府は青年交流プログラムと、外国人学生のための奨学金を強化してきました。また、外国の青年たちを小中学校での教育の補佐のために招聘してきています。地方自治体やその他の団体も、同様のプログラムと意識向上キャンペーンを実施しています。相互理解と相互協力を推進するためのこれらの努力が多文化社会の強い基盤の情勢に役立つと確信します。

 これらの例が示すように、我が国は差別の撤廃に向けて、不断の努力を続けています。そのような中で、ドゥドゥ・ディエヌ特別報告者が我が国政府の招待を受けて、昨年7月日本を訪問してくれたことを評価しています。訪問に際しては、我が国政府関係機関は、可能な限りの支援を行いましたし、特別報告者が明年の人権委員会に向けて報告書をとりまとめる過程において、更なる支援を行う用意があります。我が国は、報告書が発出された際には、日本社会の改善のための更なる措置導入のためにその特別報告者報告と勧告を慎重に検討します。

 人種差別、外国人排斥の全くない国は、世界中におそらくほとんどないでしょう。人種差別は全ての国々が取り組むべき課題です。日本政府は、国内に存在する問題となっているあらゆる差別の撤廃に真摯に、かつ効果的に取り組んでいきたいと考えています。同時に、世界各地に見られる様々な差別の撤廃に向けた国際社会の努力に引き続き貢献していきます。

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