演説

国連の場における演説

大島賢三日本政府国連代表部常駐代表による演説(仮訳)
第60回国連総会第三委員会

平成17年10月31日
於:ニューヨーク

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議長、
 まず始めに、第三委の作業における議長及びビューローメンバーに対する当代表団のあらゆる支援と協力を約束します。

 全ての特別報告者による報告に対し感謝します。

 人権の促進は、開発、平和と安全などの他の主要な目的と並び、国連の重要な目的の一つとなっています。このことは、2005年首脳会合成果においても各国首脳によって再確認されました。この分野における数々の歴史的な国際的人権規約及び国内法の採択並びにこれらに基づく実際的な措置の導入当の多くの成果が上がっています。しかし同時に、世界の人権状況を改善するために、これらの規約や法文書の規範を確実に実現する上で、多くの挑戦と課題が残っています。人権の保護と促進は、国際社会の重大関心事として留められなければなりません。

 実際的な観点から言えば、特定国の人権状況の改善を達成するためには、次の3つの行動が相伴う必要があります。第1に、各国の状況に関する対話を通じた相互理解の促進。第2に、人権保護の強化を目的とした当該国との効果的で実質的な協力。第3に、深刻な人権状況が継続しているケースにおいて、それらを断固として非難することです。

 日本は、アジア及びその他の地域の特定国の状況に取り組むために、上述のアプローチを採用してきました。例えば、カンボジアにおいては、平和の定着、国民の和解及び復興への支援を通じて、同国の人権状況の改善を手助けすることを試みてきました。不処罰との闘いを奨励し、法の支配を強化するために、近年我が国はカンボジア政府や同じ考えを持つ国々及び国連と緊密に協力しつつ、クメール・ルージュ裁判の実現に向けて多くの支援を提供しています。

 ミャンマーにおいては、民主化及び国民和解に向けた同国政府の「7段階のロードマップ」の第1段階として、国民会議が2004年5月以来断続的に開催されています。我が国は、ミャンマー政府が、ロードマップ・プロセスに明確に表明された政策を実施するためにとる行動と措置を注視していきます。また、我が国は、特使を通じ、状況改善のためにミャンマー当局を関与させていく事務総長の努力を引き続き支持します。また、ミャンマー政府、ASEANメンバー諸国及び地域のその他の国々と協力し、ミャンマー政府が、民主化、国民和解及び国民の人権・人道状況の改善に向けたロードマップ・プロセスに表明された目的を、包括性と透明性をもって達成するための取り組みを加速化するよう奨励していきます。

議長、
 国際社会は、北朝鮮における深刻な人権侵害の状況について繰り返し懸念を表明してきました。本年の人権委員会は、再び、この問題に関する決議を採択しました。人権委員会は、同国において「組織的、広範かつ重大な人権侵害が継続的に報告されていることに対し深い懸念」を表明しました。また、北朝鮮が、「特別報告者のマンデートを同国が受け入れず、特別報告者に対して如何なる協力も行っていない」ことに重大な懸念を表明しました。このような状況及び態度は国際社会にとって遺憾であり受け入れられません。
 北朝鮮代表団が、そう遠くない過去において、多くの朝鮮人民が朝鮮半島から日本に連れて行かれたとの言及をしました。そして、その数字を数百万と述べました。この関係で、日本政府が、朝鮮半島の多くの人々が過去に不幸な状況に陥ったことは否定できないと考えており、過去の歴史に関し様々な機会に深い反省とお詫びを表明してきています。しかし、北朝鮮代表団が言及した数字は、大きく誇張されており、受け入れがたいものです。
 特別報告者が指摘したとおり、日本人拉致問題の解決に向けた進展は何ら見られていません。我が国からの拉致問題に関する度重なる要請にもかかわらず、北朝鮮は誠実に対応していません。北朝鮮当局が、本問題を真剣に取り上げ、特別報告者の訪問受け入れをはじめ、人権委員会決議に明記された諸措置を実施することを改めて強く要請します。

議長、
 我が国は、2005年首脳会合成果において、国際社会が世界の人権状況の改善に向けた努力を強化するために人権理事会を設置することについて合意したことを歓迎します。人権理事会が本年末までに設置されるよう、現在継続中の活発な協議により、詳細について早期に合意が達成されることを望みます。人権理事会は、人権委の強みに基づき、また、欠点を克服しつつ、強力で効果的な機関として設立されなければなりません。我が国代表団は、ヤン・エリアソン総会議長、パナマ及び南アフリカ大使の共同議長の下で実施されている非公式協議に各国が積極的に参加していることを歓迎します。

 人権理事会の設置に劣らず重要なのが、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の強化について、各国首脳が合意したことです。効果的なキャパシティー・ビルディング、技術協力その他の必要な活動を通じて、OHCHRが人権規範の実施促進を支援し、現地における人権状況を改善することを可能たらしめるには、同事務所にこれにみあった体制と能力と、リソースが与えられなければなりません。この観点から、各国における取り組みの強化を第一に取り上げている人権高等弁務官の行動計画を支持します。

議長、
 国際社会は、人権規範の実施を進め、世界の人権状況の改善を図っていくための努力を増進しなければなりません。そのためには、我々のアプローチに信念を持ちつつ、個別の状況に対応するために採用する方法については柔軟に対応しなければなりません。このことは、人権分野における我々のアジェンダの重要事項として掲げられるべきであります。現在我々全員が関与しているこの歴史的な改革によって、より多くの人々の人権状況の改善を追求する上で、更に多くの行動をとることが可能となるよう強く希望します。我が国としても、この追求への関与を継続し、可能な限りこれを支援していきます。

 ありがとうございました。

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