演説

国連の場における演説

安保理公開討論「女性と平和と安全」
北岡伸一国連大使によるステートメント(仮訳)

平成17年10月27日

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議長、

 議長国ルーマニアに対し、本件公開討論を開催して下さったことについて感謝申し上げます。また、洞察力と直の情報に富む基調スピーチを行なった発言者に対しても感謝します。

議長、

 我が国は、平和調停から平和維持、平和構築といった全ての平和と安全を維持するための全ての取組みにおいて女性の参加を保障することは重要であり、正にこの点を強調し、安保理決議1325の完全かつ効果的な実施に関する決意を再確認した2005年首脳会合成果文書を歓迎します。また、平和構築委員会の設置に関する決定を歓迎し、この分野における同委員会の貢献を期待します。

 女性たちは、現在行なわれている平和調停プロセスのやり方に懸念を抱いています。つまり、女性たちはしばしば草の根レベルで団結して平和を促進する活動を行なっている一方で、彼女たちが正式な和平プロセスへアクセスすることは限られているからです。なぜでしょう。その理由の一つとして、和平プロセスに関与するアクターが、和平交渉に女性が関与することによって得られる利点や、それが生み出す具体的成果について必ずしも十分な理解を得ていないということが考えられます。和平交渉のテーブルに女性がつくことによって、女性のニーズや視点を和平合意のなかに盛り込むことができます。そうすることによって、和平調整に続く平和維持や平和構築プロセス、そして紛争後の社会における女性の中心的な役割を保障することができるのです。

 ブルンジの和平プロセスでは、50名以上の女性が団結し、和平調停者に対して勧告を提示しました。右勧告のうち23の勧告が最終的な和平協定に取り入れられ、女性の権利と、民主主義・ガバナンス・平和と安全及び復興を進める活動に関与する機会を女性に与えることの重要性が強く認識されました。また、アフガニスタンでは、憲法制定ロヤ・ジルガに参加した502名の委員のうち75名が女性であり、法の下での男女同権を保障する条項がタリバン後初の憲法に挿入されたことに、彼女らが貢献したことは疑いの余地がありません。これらの成功例や教訓を引用しながら、平和と安全の達成に向けた全ての取組における女性の役割の重要性について効果的に啓発し、この重要な問題に対する理解を得、関心を高めるための努力を一層強化していかなければなりません。

議長、

 開発及び復興の初期段階を含む平和構築プロセスを成功させるために、現地の住民の自助努力とオーナーシップを醸成することは不可欠です。このような自助努力と現地住民のオーナーシップを育て、このプロセスにおける女性の参加を確保するためには、女性を保護し、また、エンパワーする必要があります。保護とエンパワメントは、人間の安全保障の中心的な構成要素です。

 ここで、この人間の安全保障の概念に基づいて、我が国が現場で行なっている支援について簡単に紹介したいと思います。我が国は、フィリピンにおいて、国際協力銀行(JBIC)を通じたコミュニティ支援プログラムと地域インフラ整備プロジェクトに対し、25億ドルの円借款を行なっています。これらのプロジェクトでは、コミュニティの住民から構成されるコミュニティ・グループが主導して、プログラムの具体的側面を策定し、実施します。このプロジェクトのユニークな点は、紛争で夫を亡くした未亡人が優先してコミュニティ・グループに参加できるように配慮されている点です。我が国は、右プロジェクトによって、女性たちが自信を取り戻し、開発と復興、そして究極的には永続的な平和に貢献する主要なアクターとしての役割を担うためにエンパワーされるものと信じます。

議長、

 我が国は、昨年の議長声明で指摘されたとおり、安保理決議1325の完全な実施のためには、包括的で、調整された、全システム的な取組みが不可欠であるという点に同意します。従って、先ほどマヤンジャ事務総長特別顧問により紹介された、同決議実施に関する事務総長の行動計画を歓迎します。右行動計画の詳細については今後さらに検討していく所存ですが、今日は2点だけコメントしたいと思います。

 まず、PKO要員派遣国による訓練・教育の不足が、PKO要員による性的搾取の主要な原因の一つと考えられていることから、行動計画の策定にあたっては、この点も然るべく考慮に入れられるべきであると考えます。

 次に、PKO活動におけるジェンダー・アドバイザーの配置及びその責任の拡大は歓迎されますが、ジェンダー・アドバイザーがいかに職責を果たしえたのか、また、幹部を含めPKOの組織がジェンダー担当官及びその活動について十分配慮しているかどうかについても評価する必要があると考えます。さらに、ジェンダー・アドバイザーを配置するにあたっては、児童保護アドバイザーなど類似のスキームとの重複を避けつつ、効率的な活動を確保しなければならないと考えます。

 ありがとうございました。

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