議長、
はじめに、日本政府を代表してダウナー豪外相の議長就任を心よりお祝い申し上げます。豪州のリーダーシップの下、今回の会議が国際社会に対し、CTBTの早期発効の重要性について力強いメッセージを送ることができると確信しています。先週の国連首脳会合の成果文書において軍縮不拡散に関する言及が落ちたことに鑑みれば、我々としてはCTBTの重要性を一層認識し、その早期発効に向けて更に努力を強化していく必要があります。
議長、
1996年の国連におけるCTBT採択から9年の間に署名国は176ヶ国に、批准国は、発効要件国33ヶ国を含む125ヶ国に増大しました。核実験の禁止は国際社会において多数の支持する国際規範として確立しつつあります。
CTBT発効に向けたモメンタムを維持する上でCTBTO準備委による検証体制の着実な整備は重要です。我が国は、トート準備委員会新事務局長の就任を歓迎し、同事務局長の下で更に検証体制の整備がはかられることを期待します。
CTBTOによる検証技術は民生及び科学の発展にも役立つものです。そのような観点も踏まえ、2004年5月、我が国は独と共催で「CTBT検証技術の民生及び科学への応用に関するシンポジウム」を開催しました。また、現在、準備委においてIMSデータの提供による津波警報機関への貢献について技術的な試験が行われています。昨年末のスマトラ沖地震に伴う津波の甚大な被害を想起するまでもありませんが、かかる貢献は人道的にも有意義であると考えます。
議長、
今年は広島・長崎の被爆から60年を迎えます。日本は、世界で唯一の被爆国として平和と核軍縮・不拡散に明確にコミットしています。そのような我が国にとって、CTBTの早期発効は国民の悲願であり、我が国は、そのために真剣に取り組んできました。そのような我が国の取り組みについて3点紹介します。
第一に、我が国はあらゆる機会を利用して、未署名・未批准国への外交的働きかけを行っています。NPT運用検討会議を前にした本年4月には、町村外務大臣が未批准国の外相に対して批准を呼びかける書簡を発出しました。5月のNPT運用検討会議及び先週の国連首脳会合がCTBTの早期発効を含む実質的事項に関して何の合意にも至らなかったことは極めて残念でした。国際社会が同じ轍を踏まぬためにも、我が国は国際社会に対して速やかにCTBT批准に向けた政治的英断を行うよう求めます。とくに、未批准あるいは未署名の発効要件国11ヶ国が早期に署名・批准を行うことを強く求めます。
第二に、我が国は国際場裡で核兵器の廃絶に向け、現実的かつ漸進的なアプローチによって積極的な役割を果たしています。我が国は国際社会の核廃絶に向けた新たな決意を示すためにも、CTBTの早期発効を含む具体的措置を盛り込んだ核廃絶決議案を本年も国連総会に提出する予定です。同決議が圧倒的な大多数の国の支持を得て採択されることを強く希望します。
第三に、我が国は、CTBTOの検証体制の整備に積極的に協力しています。具体的には、2002年11月にCTBT国内運用体制を立ち上げ、我が国における国際監視施設の建設・暫定運用及び国内データ・センターの強化に最大限努力しています。また、我が国は途上国の検証技術の向上のため、地震観測分野の技術研修を実施しており、すでに63ヶ国から97名の技術者を受け入れました。
議長、
1996年のCTBT採択前に、すべての核兵器国は核爆発実験モラトリアムを宣言しました。98年に核実験を行ったインド、パキスタンも同宣言をしました。モラトリアム宣言は、条約の代用となるものではありませんが、我が国は、これらのモラトリアムを評価するとともに、CTBT発効までの間、その政策を堅持するように強く訴えます。私は、また、全ての国がいかなる場所においても核兵器の実験的爆発を実施しないよう強く訴えます。
最後に、CTBTの早期発効に向けて我が国としても引き続き国際社会とともに真剣に取り組んでいく決意であることを改めて表明します。
ご静聴有難うございました。