演説

国連の場における演説

第6回国連軍縮京都会議における
中根軍縮不拡散・科学部長冒頭挨拶

平成17年8月17日

 ご列席の皆様、

 本日、第6回国連軍縮京都会議の開催にあたり、日本政府を代表して、ご挨拶する機会を得ましたことを、大変光栄に思います。会議開催のために尽力された、国連軍縮局及び国連アジア太平洋平和軍縮センター、また、開催地として準備に尽力された京都府、京都市の皆様に対し、心から敬意を表します。また、世界各国からこの地を訪問された参加者の皆様を暖かく歓迎したいと思います。

 我が国における国連軍縮会議の開催は、1989年、ここ京都における第1回会議から今回で17回目を数えるに至り、これまで多くの成果を上げてまいりました。この伝統ある会議が、我が国の伝統文化を体現した平和都市でもあるこの京都の地で、六回目の開催となることは、誠に意義深いものがあります。この会議は、軍縮・不拡散に対する国際的な議論を活性化する上で、大きく貢献しており、国内外から高く評価されております。今次会議が国際的な軍縮議論に大きな知的貢献をしてくれることを祈念すると共に、京都府民及び京都市民の皆様、更には日本国民にとって、国連の役割や軍縮・不拡散と平和の問題をより身近なものとして捉えるための良き機会となることを心より願うものであります。

 現在の国際社会は、大量破壊兵器の拡散やテロ等の平和と安全に関する新たな脅威の他、貧困、感染症、人権侵害といった多くの課題に直面しています。これらの問題に有効に対応するためには、国際社会が一致して協力することが重要です。

 国連創設60周年を迎える本年は、国連を21世紀の世界を反映し、多様な課題に効果的に対処する機関へと改革するための歴史的好機です。国連が開発、安全、人権といった今日の世界が抱える基本的課題に有効に対処しうるよう、国連の機能強化・改革の必要性を改めて訴えたいと思います。とりわけ、「国際の平和と安全の維持」に第一義的責任を負う安全保障理事会を改革することが最も重要です。この機会に安保理改革の決定を行うことが出来るか否かは、将来世代に亘って大きな影響を与えるものです。国際社会に対して様々な貢献を行っている我が国が常任理事国となることは、安保理が国際社会の平和と安全に対する諸課題により効果的に対処することを可能とするものであり、国際社会にとっても大きな利益となるものと確信しています。日本は、国際社会の責任ある一員として世界平和のためにリーダーシップを発揮することを通じ、安保理改革そして我が国の常任理事国入りの実現を目指していく決意です。

 本年は被爆60周年でもあります。60年前の夏、世界で初めて核兵器の惨禍を経験した我が国は、それ以来、核兵器が再び使われてはならないという強い決意を持ち、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずという非核三原則を堅持しております。我が国は唯一の被爆国として、広島・長崎の悲劇を人類の記憶に留めることが重要な使命であると考え、核兵器のない平和で安全な世界の実現を目指し、国際社会の先頭に立って軍縮・不拡散を推進する様々な外交努力を行ってきています。

 核不拡散体制の礎として重要な核兵器不拡散条約(NPT)は、北朝鮮やイランの核問題やテロリストによる大量破壊兵器入手の脅威等、様々な挑戦に直面しています。このような状況で、本年5月に開催されたNPT運用検討会議では、最終的に実質的事項に関する合意文書を作成できませんでした。我が国は、NPT体制の維持・強化のために力強いメッセージを発出することをめざし、外交努力を積み重ねて参りましたが、期待されていた実質的事項に関する合意文書を作成できなかったことは非常に遺憾であります。我が国はここで立ち止まらず、今回の結果を踏まえて、今後ともNPT体制への信頼を強化するため、積極的な貢献を果たして参ります。

 例えば、我が国は、1994年以降毎年、国連総会に核軍縮決議案を提出しています。この決議は、現実的、漸進的なアプローチにより核兵器のない平和で安全な世界を目指すものであります。「核兵器の全面的廃絶への道程」決議案として提出されたこの決議案は、昨年も圧倒的多数で採択されました。今後も核兵器のない平和で安全な世界の実現のために、全面的核廃絶に向けて国際社会が優先して取り組むべき具体的課題を示した核軍縮決議案を国連総会に提出していきます。また、CTBTの早期発効やFMCTの早期交渉開始、IAEA追加議定書の普遍化のための外交努力を強化していきます。

 軍縮の問題は、大量破壊兵器だけにとどまりません。国際社会には、過剰な小型武器や対人地雷が存在しています。実際に毎年多くの犠牲者を出している小型武器や地雷をいかに規制していくかも国際社会における緊急の課題であり、我が国も様々な取り組みを行っております。昨年12月にケニアのナイロビで開催された対人地雷禁止条約の第1回検討会議では、河井外務大臣政務官が首席代表として出席し、「平和の構築」への貢献、「人間の安全保障」の視点の重視、産官学民の連携及びその一環としての技術開発への取り組みという、我が国の新地雷政策三原則を発表し、対人地雷問題の解決に向け、我が国が積極的に取り組む姿勢を強く印象づけました。また、小型武器の問題についても、日本は2001年の国連小型武器行動計画の採択に向けて主導的な役割を果たし、今次会議に出席される猪口教授が軍縮代表部大使として第1回中間会合の議長を務めるなど、その後も一貫して国際社会における行動計画実施に貢献して参りました。特に、小型武器の主要な被害地域であるアフリカへの関心が高まる中、来年夏に予定されている初の国連小型武器行動計画履行検討会議に向け、我が国としても取り組みを強化していく考えです。具体的には、違法な小型武器の流通を防止するための国際的な規範作りに貢献していくとともに、小型武器回収・廃棄事業や現地政府の行政能力向上支援といった現場でのプロジェクトへの協力を強化していく考えです。今後とも、地雷や小型武器の問題に積極的に対処していきます。

 軍縮・不拡散の問題は、各国の安全保障と密接に関係するため、主要な軍縮交渉は時には何十年も時間のかかる息の長い取り組みとなります。そのため、我々の軍縮に関する知識や志を次世代に受け継いでいくことが大切です。我が国は、軍縮・不拡散教育を促進するべく様々な取り組みを行っています。例えば、1983年以降、国連による軍縮フェローシッププログラムの一環として、毎年、若手の外交官が広島・長崎を訪問しています。昨年は、世界中から29名の若手外交官がプログラムに参加しましたが、広島・長崎での被爆者との意見交換などを通じて、それぞれが軍縮・不拡散にかける決意を新たにされたと聞いています。軍縮フェローシップの参加者の中には、既に軍縮外交の一線で活躍している外交官もおり、彼らの多くは、本プログラムは非常に有益であったと述べています。我が国としては、今後もこうした取り組みを継続していく考えです。また、我が国は、この国連軍縮会議自体も軍縮・不拡散教育の大きな柱の一つとして位置づけています。

 以上、安保理改革に対する我が国の決意及び軍縮・不拡散分野における主な取り組みにつきまして、申し述べました。最後に改めて、国連軍縮京都会議で、皆様の活発な議論により、世界平和に向けた道筋が示されることを期待しております。

 どうもありがとうございました。

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