演説

国連の場における演説

中東和平問題に関する国連安保理公開討論における大島国連大使演説(仮訳)

平成17年7月21日

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  1. デ・ソト特別調整官の着任以来初のブリーフィングに感謝いたします。8月半ばに予定されているイスラエルによるガザ地区及び西岸北部からの撤退の開始に向けて、我が国はデ・ソト特別調整官の指導力に大いに期待しております。特別調整官がプロセスの周到なハンドリングをなされるものと期待しております。
  2. 我が国はガザ撤退の開始を歓迎するとともに、イスラエルが国内の反対論にかかわらず揺るぎない決意でガザ撤退を進めていることを評価しております。他方、最近のパレスチナ武装勢力とイスラエル軍による暴力の応酬の再発が、平穏化(タハディア)の継続を脅かしていることに憂慮を表明せざるを得ません。かかる状況の下、アッバース大統領が力強い指導力を発揮してパレスチナ諸派の自制を確保することが重要です。この点、ハマス等パレスチナ諸派が引き続き平穏化を遵守していくことを確認したことを評価しています。イスラエル及び国際社会はアッバース大統領の努力を効果的に支援すべきです。
  3. 今後ガザ撤退の円滑な実施を確保し、撤退後ロードマップ履行の再開につなげていくことがポイントであり、当事者が最大限努力すると同時にドナー諸国が資金面その他で支援していくことが極めて重要です。特にアラブ諸国の積極的資金支援が重要です。
  4. パレスチナ側においては、治安対策につき引き続き抜本的取組みが必要です。パレスチナ自治政府にとり、暴力を減少させやめさせることは課題です。これは単にガザ撤退を成功させるため、イスラエルとの和平を進めるためにのみ必要なのではなく、国家としての基礎的な機能を獲得したかを証明するためにも必要なものです。我が国はアッバース大統領の改革路線を強く支持するとともに、ウォード米治安調整官の努力を支援するものです。
  5. 日本はまた、ウォルフェンソン特使が推進する、流通路確保のための移動制限緩和措置や安全回廊建設等に関する調整を支持します。我が国は、安全性を確保しつつパレスチナ側の人と物流の効率性を高める措置がとられるよう、イスラエル側の一層柔軟な対応を期待します。
  6. 我が国は、和平プロセス前進のために引き続き積極的な関与を行っていくこととしております。そのために、シャロン首相とアッバース大統領各々を訪日招請し、本年5月アッバース大統領が訪日しました。その際我が国はガザ及び西岸における撤退・復旧を促進する新たな支援として一億ドルの支援を表明しました。この支援については可能な限り速やかに実施することとしております。これを受けて、6月に現地訪問した有馬龍夫中東和平担当特使は、イスラエル、パレスチナ双方に、ガザ撤退の成功こそロードマップ復活の大前提であるという我が方認識を伝えました。日本は、ガザ地区及び西岸北部における民生安定のための緊急支援及びパレスチナ経済自立化に向けた中長期的支援を含め、引き続き経済支援及び和平プロセス支援に積極的に関与して参ります。
  7. 壁問題に関しては、本年2月に南部地域における計画中壁経路の相当部分がグリーン・ライン上に変更されるという前向きの進展がありました。しかしながら他の地域ではグリーン・ライン内の壁建設は継続されてきました。改めて本問題についての我が国の立場を述べさせて頂きます。まず、パレスチナ過激派のテロにより多数の尊いイスラエル人の生命が犠牲になっており、パレスチナ自治政府はテロ抑止のために最大限の努力をする必要があります。次に、グリーン・ラインの内側における壁建設はパレスチナ人の生活に悪影響を及ぼしかつ最終的地位交渉の結果を予断するものであり、ICJの勧告的意見において国際法に反するとされたこの壁の建設は停止すべきです。現在もグリーン・ライン内の壁建設が継続していることは遺憾です。特に東エルサレム区間の壁建設には、とりわけ懸念しております。本件は、ガザ撤退の成功に向けて事態の慎重なハンドリングが必要とされる時期に行われております。また同区間は最終的地位交渉における極めて困難な争点の対象地域であるに位置しているとともに建設により生活に悪影響を受ける住民数が多い地域に係るものでもあるからです。
  8. 壁建設及び入植地問題の根本的解決は、ロードマップの着実な履行の中においてしか図り得ないものと考えます。これら問題を解決するためにも、ガザ撤退を成功させ、それをロードマップ前進の再活性化につなげる必要があります。我が国としては、平和的に共存するイスラエル・パレスチナ2つの国家の樹立に向けたロードマップを前進させる両当事者の努力を引き続き最大限支援する所存です。
  9. レバノンでは19日にセニオラ内閣が発足したことを歓迎いたします。レバノンは機微な処置を求められる多数の課題に直面しているところ、セニオラ首相及び新政府が早急に指導力を確立し、これらの課題への取り組みを開始することを期待しています。
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