平成17年4月26日
議長、
「欠乏からの自由」の下で扱われる課題は途上国をはじめとする全ての加盟国の中心的な関心事項です。9月の首脳会合の成功はMDGsの目標やより広い国際的な開発課題についてなしうる進展に大きく依存しています。事務総長報告はこの重要な目標についての明確な指針と現実的な戦略及び目標を提供しています。この機会に、指導者達はこれらを支持し、加盟国は先進国・途上国ともに行動を加速化し、拡大するための努力を惜しむべきではなく、世界的な開発課題へのコミットメントを新たにすべきです。
英国を議長国として行われるG8サミットやインドネシアで先般開催されたアジア・アフリカ首脳会議など、国連外における重要な会議やイニシアティブも同様に9月の首脳会合の可能性を高めるのに貢献するでしょう。
日本はこの共通の努力において信頼しうるパートナーであるとともに熱心な参加者であり続けます。モントレー合意とヨハネスブルグ実施計画、更には事務総長報告とサックス報告書の下、日本はMDGsを推進する応分の負担を担うために努力を強化していきます。国際社会の開発努力に向けた日本の重要な貢献は以下の要因に導かれています。
第一に、被援助国から20~30年の間に、新興援助国であると同時に被援助国である時期を経て、世界有数の援助国に至った国家としての独特の経験と洞察。第二に、アジア・太平洋諸国に端を発し、世界的に拡大してアフリカ及びラテンアメリカにも達した長年の開発パートナーシップから生まれた独自の経験。第三に、ドナー諸国が援助疲れに陥った90年代に持続的かつ集中的に開発協力を実践した独自の実績。1993年以降5年ごとに計3回開催されたTICADはそうしたイニシアティブの具体例です。第四に、経済成長を通じた貧困削減、人間中心の開発及び人間の安全保障の重視、及び開発協力におけるオーナーシップとパートナーシップの二つのコンセプトを促すアプローチの重視。途上国は常に開発の運転席に座るべきと考えます。
議長、
開発資金については、モントレーで達成された地球規模のパートナーシップ に基づく歴史的契約において途上国及び先進国相互の責任が再確認されました。すなわち、事務総長報告も指摘するとおり、途上国はMDGsを達成するための現実的な国家戦略、及びMDGs実現に向けた資源の効果的な活用並びにガバナンスとキャパシティ・ビルディングの改善を確保する手段を確立することが期待されています。ドナーには、こうした戦略を実践する途上国が必要とする支援を得られることを獲得するように対応することが期待されています。
MDGsを世界的規模で達成するには開発資金に関する包括的なアプローチが求められます。このような包括的なアプローチの一部としてODAのような公的資金があり、途上国の資金ギャップを埋めるためには当然ながらこうした公的資金が必要とされます。同様に、また時としてより重要となるのは途上国自身の財源であり、特に貿易・投資を通じて利用可能となる財源です。こうした財源は量においてしばしばODAを圧倒的に上回っており、自立的で持続可能な開発をもたらす上で、決定的に重要な役割を果たします。従って、こうした国内資源を効果的に動員することが重要となります。
「援助よりも貿易を」と長年叫ばれていますが、それには充分な理由があります。国際社会は、世界の貿易システムに途上国ができるだけ有利な条件で組み込まれるよう努力を強化すべきです。また、途上国において鍵となるインフラの整備や投資環境が改善されるために援助が増加されるべきです。この関連で、我が国は輸出補助金を排除しており、LDCからの全輸入額の93%の無税無枠化を実現していることを表明します。結果として、途上国からの輸入が全輸入に占める割合はOECD諸国の中でも有数に高くなっています。我が国は12月のWTO香港閣僚会議の成功とドーハ開発アジェンダの早期妥結に向けて努力していきます。
この10年間、最大のドナー国として世界全体のODAの五分の一を一国で供与してきた事実に示されているように、我が国のODAを通じた開発協力への強いコミットメントは変わりません。こうした強いコミットメントは続いており、我が国としてはMDGsに寄与するため、ODAの対GNI比0.7%目標の達成に向け引き続き努力する観点から、我が国に相応しい十分なODAの水準を確保します。
さらに、恐らくはMDGs実現のための有意義な資金の流れを反映するより良い指標である、総供与量、すなわちグロスによるODA実績においては、2004年に我が国は前年度比24.5%増となる161億ドルのODAを実際に供与しており、その殆どがMDGs達成に向けられたことも指摘されるべきと考えます。
債務救済も重要な課題です。我々の立場から留意すべき点がいくつかあります。第一に、日本は債務救済については世界最大の貢献国の一つであり、重債務貧困国に対して過去2年間で約50億ドルの債務救済を実施しており、引き続きHIPCs体制の下で債務救済を行う予定です。第二に、拡大HIPCイニシアティブを中心的メカニズムとして維持していく一方、国際開発金融機関における債務問題に対処するため更なる配慮が必要です。第三に、国際開発金融機関の債務の帳消しが議論されていますが、途上国の債務者の自助努力を弱めることのないようこの問題は注意深く検討されるべきです。第四に、完了時点に達したHIPCsについて債務が持続可能な水準になるまで削減することや、政策や環境の優れている国については更なる削減を行うことも認められるべきと考えます。
議長、
2005年はアフリカの年といわれています。多くのアフリカ諸国が直面する問題の解決なくして21世紀の世界の安定と繁栄はありません。MDGsの達成においてアフリカは決定的に重要です。アフリカ開発はG8サミット等、本年の主要国際会議の中心議題であります。先週には、歴史的なアジア・アフリカ首脳会議がインドネシアで開催され、アジア・アフリカ両地域の国々がこの半世紀で初めて一堂に会しました。
アジア・アフリカ首脳会議において、小泉総理は開発イニシアティブを発表し、以下の諸点が含まれています。
議長、
9月の首脳会合への準備過程において、内陸国や小島嶼国といった国々の特別の関心が充分に反映されることが確保される必要があると考えます。事務総長報告は気候変動や自然災害を強調しており、これらは我々の多くにとっても強い関心事項ですが、特別な分類に属する途上国にとっては一層強い関心であり、9月の首脳会合の成果として強調されるに値するものです。
気候変動は21世紀の直面する最重要課題の一つであり、世界的規模で取り組まれるべきです。京都議定書を超えてあり得べき新たな枠組みにつきどのような努力がなされるべきか首脳が議論することとなります。
自然災害も主要な脅威の一つであり、9月の首脳会合の成果で強調されるべきです。事務総長は世界規模の早期警戒システムを提案していますが、我が国は1月に神戸で開催された国連防災世界会議の決定に従って、インド洋における津波早期警戒システムに取り組んでいます。さらに、防災・災害復興対策分野については、我が国は今後5年間で25億ドル以上の支援を実施していきます。
議長、
開発問題は、政治、経済、社会、科学技術及び文化を包含する多面的な問題であり、開発問題に画一的な政策は存在しません。9月の首脳会合に向けてバランスの取れた議論が事務総長報告をベースとして行われることを我が国は希望しています。