演説

小泉総理大臣演説

日経新聞社主催「アジアの未来」晩餐会(5月25日)小泉総理挨拶

平成17年5月25日
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 アブドラ・アフマッド・バダウィ・マレーシア首相閣下、
 会議にご参加の皆様、
 御列席の皆様、

 今日アジアは、目覚ましい発展をつづけ、世界の活力の源泉として、国際社会の安定と繁栄に重要な役割を果たしています。経済連携、金融、IT、環境、テロ対策など広汎な地域協力が進展し、将来の東アジア共同体構築が重要な共通課題となっています。一方、アジアには、北朝鮮の核開発問題のように、地域の平和と安定に関わる課題も残されています。こうした中、今回の国際交流会議「アジアの未来」に、各国の政府と民間の指導者の皆さんが集まり、地域の未来について話し合うことは誠に意義深いものです。

 今回の会議のテーマは「アジア経済統合」と伺っています。経済連携ネットワークの形成は、経済統合、更には共同体構築の基軸となるものです。我が国は、シンガポールと経済連携協定を締結し、フィリピンとも大筋合意しています。つい先ほどは、アブドラ首相と日マレーシア交渉の大筋合意を確認しました。

 今後、タイ、アセアン全体との交渉を加速し、インドネシアとの交渉開始も検討します。韓国についても、速やかに交渉を軌道に乗せることが重要です。また、経済関係強化に向けてインド、豪州との研究も進める考えです。アジアが国際経済と調和した発展を遂げるには、エネルギー、環境、知的財産権、経済格差などの課題に取り組むことも必要です。

 未曾有の被害を出したインド洋大津波は大きな悲劇でした。同時にこの危機が、地域の連帯の重要性を再認識させることにもなりました。災害発生後直ちに、アジアはもとより全世界から支援の手がさしのべられ、その総額は50億ドルに達しました。我が国も、自衛隊や民間の緊急支援隊派遣、無償緊急支援、津波早期警報体制構築への貢献を表明しました。先月のアジア・アフリカ首脳会議では、今後5年で25億ドル以上の防災・復興支援を表明しました。

 このように、アジアの連帯と協力が急速に深化しつつある中、本年12月、歴史的な第一回東アジア・サミットがマレーシアで開催されます。私は、議長であるアブドラ首相を支援し、同サミット成功のため最大限の協力をします。

 現在、東アジア・サミットのあり方について様々な議論が行われています。我が国は、開かれた地域協力の原則が反映されるべきであると考えており、アセアンと日中韓だけではなく、地域協力に不可欠の役割を果たす豪州、ニュージーランド、インドが参加する方向性となったことを歓迎します。

 私は、クアラルンプールにおいて各国首脳と、将来の東アジア共同体の構築も視野に入れ、地域協力の基本理念を確認しあいたいと考えます。首脳会合までに、開発格差是正、経済連携推進などのための具体策をとりまとめ、アジア諸国との新たなパートナーシップ構築に役立てる考えです。

 先月私は、アチェの津波被災地を視察しました。被害の爪痕は未だ生々しいものでしたが、子供たちから、歌や踊りで暖かいもてなしてを受けました。日本が支援したフラフープにうち興じる子供たちの姿に、励まされる思いがしました。私は、地域の未来を担う子供たちのためにも、アジアの連帯を深め、平和で繁栄したアジアの将来を実現しようという決意を新たにしました。

「アジアの未来」の会議が、進化するアジアの発展のために有益な議論の場を提供していることに敬意を表し、今年も実りある会合となることを期待しつつご挨拶とします。

 ご静聴どうもありがとうございました。

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