平成17年4月29日
カマル・ナート商工大臣、インド工業連盟ムンジャル会長、インド商工会議所連合カンワール会長、インド商工会議所連盟 サンギ会長、御来賓、御列席の皆様、
本日、インド3経済団体主催昼食会にお招き頂き、光栄です。日本インド関係について一言発言する機会を与えて下さったインド工業連盟、インド商工会議所連合及びインド商工会議所連盟に感謝申し上げます。
私は、総理に就任以来、この魅力に満ちたインドを訪問することを常に考えておりました。この度日本の総理として5年ぶりにインド訪問を実現することができ、非常に意義深く感じております。
今、世界はインドの目覚ましい躍進、そしてアジアにおける新たな潮流に注目しています。東アジア共同体の形成や経済連携へ向けた動きは「アジアの世紀」、「アジア新時代」の到来を予感させるものであります。私は、今回の訪問にあたり、アジアにはインドという日本の友がいることを改めて強調したく思います。
日本とインドの間には、永い友情の歴史があります。東京裁判でのパール判事の真摯な姿勢や、ネルー首相から贈られた象は、両国の友好の象徴として今日でも多くの日本人の心に刻まれています。経済関係においても、インドの綿花は近代化しつつある日本の産業振興を支え、インドの鉄鉱石は第二次世界大戦後の日本の復興を支えました。日本も、91年にインドにおいて通貨危機が発生した際には、財政支援の手を差し伸べました。
今日、日本とインドは、力強く、繁栄する両国をお互いに必要としております。日本とインドは、マンモハン・シン首相がおっしゃる「繁栄の弧」をアジアに実現する上で、また、テロや環境、エネルギー、国連改革など国際社会の課題に取り組んでいく上でも、戦略的な利益を共有しています。インドは、その東方政策により東アジアとの関係を強化しつつあります。日本は、こうしたインドの動きを歓迎し、また、東アジア・サミットへの参加も支持しております。
日本とインドは、「アジア新時代」において、二国間協力、アジアでの地域協力、地球規模の協力という三層すべてにおける協力を発展させていくべきであります。
日本とインドは、5年前に「グローバル・パートナーシップ」を構築しました。この「グローバル・パートナーシップ」を発展させていく上での中心的な課題は経済関係の強化です。
シン首相と私は、いわば改革の同志であります。シン首相は大蔵大臣であった1991年当時に経済自由化政策導入を英断され、15年間でインドは大きく発展しました。
私も改革なくして成長なしとの信念で改革に取り組んできており、その成果がでてきております。
日本とインドとの間の貿易と投資は停滞しているとのイメージがありますが、実は貿易も投資も現在増加傾向にあります。日印関係は経済を含め正しい方向に向かっているのです。貿易総額は、2004年は対前年比で16%増加し、投資でも、インドに進出している日本企業数は、2001年に220社程度であったのが2004年現在では300社を越えました。進出企業の約7割が黒字を計上し、約9割がインドでの事業拡大を検討しているとの調査があります。また日本企業が考える将来の投資先として、インドは中国、タイに次いで第3位に上昇したとの調査もあります。
今後は、こうした流れを更に拡大していくことが重要であり、スズキなどのインドにおける成功体験を、より多くの日本企業が共有することを期待します。私とシン首相は、日印経済関係の抜本的強化のために日印共同研究会を発足させることで合意しています。
日印経済関係には、大きな潜在性があります。しかし、日印経済界はまだお互いの魅力に十分気付いているとは言えません。現在の前向きな動きを更に発展させていけるよう、本日ここにいらっしゃる日本の経済界代表の方々、そしてインド側ビジネス界の方々のお力を得て、両国間の潜在力が最大限に顕在化されることを願っております。
「成功は向こうからやってくるものではなく、あなたが行ってつかむものだ(Success doesn't come to you, you go to it)」という言葉があります。私はこの言葉を日本企業の方々に、そしてインド財界の方々にも差し上げたく存じます。皆様が、将来の日本とインドの関係を見据え、先見の明をもって積極的に取り組まれることを期待します。
私は、今回のインド訪問を通じ、「日印グローバル・パートナーシップ」を一層実質的なものとし、日本とインドが真の友人、パートナーとして、地域や世界の課題にともに取り組んでいく責任を共有できるようになることを楽しみにしております。
ご静聴ありがとうございました。