談話・コメント

中曽根外務大臣談話

WTO紛争処理における米国のアンチ・ダンピング手続(ゼロイング)に関する報告書について

平成21年8月18日
  1. 本18日(火曜日)、ジュネーブにおいて、WTO協定違反が既に確定している米国のアンチ・ダンピング手続におけるゼロイングの問題に関する米国の履行状況について、WTO上級委員会が我が国の主張を認める報告書を発出したことを歓迎します。
  2. 今回の上級委員会報告書は、本年4月に示された履行確認パネルの判断を踏襲し、米国がWTOの是正勧告を履行しておらず、また履行のために採られた措置はWTO協定に違反していることを認定しました。同報告書は、不当なアンチ・ダンピング税賦課による貿易の制限は容認されないことを明確にするものであり、ルールに基づく自由貿易体制の維持・発展に寄与するものとして高く評価します。

(参考)

  1. 米国のアンチ・ダンピング手続におけるゼロイング
     アンチ・ダンピング税は、輸出価格と輸出国の国内価格等の正常価格とを比較して、輸出価格が正常価格よりも低い場合に、これを不当な廉売としてその差額(ダンピング・マージン)について関税を課すもの。米国は、一定期間の平均のダンピング・マージンを計算することとしており、その際、輸出価格が国内価格よりも高い場合の価格差を「マイナス」ではなく「ゼロ」とみなすことで税率を不当に高くする手法(ゼロイング)を用いている。
  2. 我が国の主張
     我が国は、平成16年11月、米国のゼロイング方式自体とその実際の適用がWTO協定(アンチ・ダンピング協定等)に違反するとして、WTOに申し立てた。我が国は、ダンピングは産品全体で判断すべきであり、「マイナス」の価格差を無視することはこれに反するとの立場から、定期見直し等におけるゼロイングもWTO協定違反であると主張。
  3. 履行確認パネルの判断
     米国のアンチ・ダンピング手続におけるゼロイングは平成19年1月にWTO上級委員会が我が国の主張を認める報告書を発出しWTO協定違反が確定したが、米国による是正勧告の履行が不十分であったことから、我が国の要請に基づき昨年4月に履行確認パネルが設置された。本年4月に我が国の主張を全面的に認めるパネル報告書が発出され、これに対し、同5月米国が上級委員会に上訴した。
  4. WTO上級委員会
     WTO紛争解決制度は二審制であり、上級委員会は最終審となる。上級委員会報告書は、WTO紛争解決機関が採択することにより拘束力を有することとなるが、報告書はほぼ自動的に採択される。今回は、この上級委員会において日本の主張が認められたことになる。
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