謹んで新年のお慶びを申し上げます。
過ぐる平成18年、我が外交はいくつか深刻な挑戦を受けながらこれを見事に跳ね返し、結果として自らの足腰を鍛えられたと存じます。
7月の弾道ミサイル発射と、10月の核実験。北朝鮮は両再度にわたって、我が国に深刻な軍事的脅威を与えました。
国際社会の常識を無視して予告もなく周辺国近海にミサイルを発射するうえ、何はばかることなく核すら持ったと公言するごとき隣人を持ちながら、寝ぼけマナコでのらくらしているようでは誰の信用とて得ることはできません。眦(まなじり)を決しなければならない時というものが、国家にもあるのです。
いずれの場合とも、我が外交が一に敏感な感受性により、二に機敏な運動神経をもって、まずはこれをまごうかたなき脅威ととらえた後、間髪を容れず国際世論喚起に乗り出して所期の成果を挙げることができたのは、私のひそかに欣快とするところでありました。
とりわけ、弾道ミサイル発射を受け国連安全保障理事会が通した決議は、我が国が不退転の構えをもって推進し、採択へ漕ぎつけたものであった一事によって、日本外交に少なくない意味をもたらしたと言ってよいように思います。
しかし課題の大半は、未解決です。非核化、拉致問題の解決は、いずれも至上命題です。折よく我が国が安保理メンバーだったからこそ上述決議の採択を達成できたという経験は、国連安保理常任理事国入りという古くて新しい課題の喫緊ぶりを、今更ながら内外に強く印象づけるものでした。昨年の成果は、最低必要限度を満たしたに過ぎぬものだったととらえておく必要があります。
他方で昨年、我が外交は雄弁をもって旨と致しました。世界は秩序を大きく変えつつあります。テロとの戦いが続くかたわら、世界の勢力地図は、中国始め新興国家の伸張によって、常に書き換えを余儀なくされています。このような時期であればこそ、我が国は自ら思う所を明確に語り、信奉する価値観を力強く主張しなくてはなりません。一言をもってするなら、自らの言葉でビジョンを語ること。それがこれほど求められた時期は、戦後外交史において稀でありましょう。
私はかような時期に大臣となり、多々ますます弁ずことを自らに課しております。ほぼ月例かそれ以上の頻度でスピーチをし、日本外交の進路を明確に説いて参りました。当面の集大成を去る11月30日、「自由と繁栄の弧をつくる」と題し述べております。外務省ホームページを、ついでの折に覗いてご覧になりますよう。我が外交が向かう針路を、曇りなくご理解いただけるものと信じております。
日米同盟の強化発展を含め、本年も一つとして気の抜ける課題はありません。外交力の強化として要路の支持を頂いております件も、着実に実行へ移すと同時に、輿望に足る成果を出さねばなりませんから、外務省員一同とともに、私も身を引き締めて参ります。旧年に変わらぬ叱咤激励をお願い致しますとともに、皆様のご多幸をお祈り申し上げます。