寄稿・インタビュー

令和6年9月5日

(和訳)

「我々は世界の歴史の転換点に立たされている」
 ―日本の総裁選の出馬者は、豪州政府と日本政府は威圧による一方的な試みに対し自由で開かれた国際秩序を支持すると述べる。―

 このたび、11回目となる日豪外務・防衛閣僚協議(日豪「2+2」)実施のため、2019年以来5年ぶりに、また外務大臣としては初めて豪州を訪問すること、とても嬉しく思います。

 猛暑の日本を発ち、漸く和やかな春を迎えつつある豪州への10時間を超える移動は、日豪が南北の異なる半球に位置していることを実感させます。しかし、こと外交の世界においては、日豪ほど互いに近い存在を他に見つけることは容易ではありません。両国は、あらゆる国際課題への対応において、強固な戦略的一致を土台として、共に手を携えてきました。そして日豪の連携は、二国間にとどまらず、G20、APEC、CPTPP、WTO、日米豪印、IP4(日豪NZ韓)といった様々な枠組みの中においても、両国外交の大きな推進力の一つとなってきました。

 これこそが、日豪が「特別な戦略的パートナー」であると呼ばれる所以です。日本にとって、価値・原則を堅固に共有し、共に緊密な米国の同盟国として「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて取り組む豪州が、同じ太平洋に結ばれて日本のすぐ「近く」にいることほど心強いことはありません。

 日豪は、戦後、その協力関係の裾野を劇的に拡大してきました。戦後の和解を経て、人的交流や文化交流は拡大し、人口10万人あたりの日本語学習者数は豪州が世界一になるに至りました。両国は経済面でも分かちがたく結ばれ、いまや日本は豪州の第2位の貿易相手国、豪州は日本の第3位の貿易相手国です。特に日豪EPAは、豪州ワインや豪州産牛肉も、日本中のレストランや一般家庭の食卓で多く見られるようになっています。そして、日本の投資が豪州の資源・エネルギー産業の発展に貢献し、豪州のLNGが日本の経済活動を支えています。

 日豪間で緊密化する数多の協力分野の中でも、近年特に目覚ましく強固になっているのが安全保障協力です。地域情勢さらには世界情勢が厳しさを増す中、近しい友人である日豪が、地域のパートナー国とも連携しながら、安全保障分野においても協力を深めていくことはとても自然なことです。

 特に日本にとってのこの分野における豪州の重要性は、一昨年に発出した日本の国家安全保障戦略や国家防衛戦略に如実に表れています。そこでは、自由で開かれた国際秩序の維持・発展に向けて連携する同志国として一番に豪州が挙げられています。日本は、豪州と共に日米防衛協力に次ぐ緊密な協力関係を構築していきます。  

 そして、日豪は2022年に新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を発出し、昨年には日本としては初めてとなる部隊間協力円滑化協定を豪州との間で発効させた上で、同協定下で既に数多くの共同演習や共同活動を実施してきました。また、豪州を含むAUKUS諸国は、AUKUS第2の柱である先進能力プロジェクトについて日本との協力を検討しているところであり、日本としてこれを歓迎しています。さらに、複雑化する安全保障上の挑戦に直面して、日豪間の協力は、伝統的な防衛協力に留まらず、サイバー・情報空間や経済安全保障、WPSなど、幅広い分野にまで広がり続けています。

 我々は歴史の転換点に立たされており、平和で安定した国際環境が力又は威圧による現状変更の試みを含む深刻な脅威にさらされています。かかる国際情勢において、かつてなく強固となった日豪間の安全保障協力を今後もたゆみなく更に強化する、そして共に幅広いパートナー国に関与しつつ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に先導的役割を果たしていく、これこそが、今回の私の豪州訪問の主たる目的です。

 今回の日豪「2+2」はビクトリア州のクイーンズクリフにて実施されます。外海からメルボルンに通ずる航路を見下ろし、古くから豪州の沿岸線防衛に主要な役割を果たしてきた港と要塞を有する歴史的なこの町で、今後の日豪間の安全保障協力の新たな1ページを刻むことができることは大きな喜びです。紺青の海と緑鮮やかな自然に囲まれた静かな地で、木原防衛大臣とともに、ウォン外相そしてマールズ国防相との間で膝をつき合わせて、両国が直面する戦略課題について率直な意見交換を交わすことができることを楽しみにしています。


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