寄稿・インタビュー

令和5年10月24日

 タイの皆様、こんにちは。9月13日に、日本の外務大臣に就任した後、初めての二国間訪問先として、タイをはじめとする東南アジア4カ国を訪問します。タイは、私にとって思い出の地です。2018年に法務大臣として国際仲裁など法務分野の協力強化のためにタイを訪問し、法務大臣と意見交換したことや少年院を訪問したことを今でも良く覚えています。

 日本とタイは、600年にわたる長い友好の歴史を持っています。その間、両国は、皇室・王室の関係を礎に、活発な国民間の交流も通じて、重層的に発展してきました。時代に応じて、日本とタイの協力の態様も変化してきました。
 第二次世界大戦後、日本のビジネスマンが経済活動を行うためにタイを訪れた時、日本に来られるタイの方は多くありませんでした。しかし、今や、多くのタイの方が日本に来られ、日本の桜や雪、それに日本食などを楽しんで下さっています。
 昨年、両国は修好135周年を迎え、新しい時代にふさわしい関係とすべく、両国間関係を「包括的戦略的パートナーシップ」に引き上げました。歴史の転換点ともいうべき時代において、両国は、気候変動やエネルギー・食料安全保障といった新しい分野でも協力を進めていきます。今後も、日本はタイと共に、スピード感をもち、互いの強みを活かした協力を進めていきます。
 タイにおいて新しい政権が誕生したこのタイミングで、新たに就任されたパーンプリー副首相兼外務大臣と今後の両国関係や、日ASEAN関係、それに地域や国際的な課題、地球規模の課題について意見交換し、新しいパートナーシップの下での両国関係を一層強化していきたいと思っています。今回の私の訪問では次の2点を目指します。

 第1に、日タイ関係の更なる推進です。約6千社の日本企業が進出するタイは、日本にとって東南アジア最大級の拠点であり、両国の経済関係は非常に強固です。日本企業によるタイへの投資は、過去40年間の累計で約3.5兆バーツに達し、外国投資の約4割を占めています。また、スワンナプーム空港やタイの都市鉄道など、タイの皆さんの生活の一部となっているインフラ整備を日本は長きにわたり支援してまいりました。このように切っても切れない強固な両国関係を更に推進したいと思います。

 第2に、地域・国際情勢における連携の強化です。世界が複合的な危機に直面する中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化が不可欠です。太平洋とインド洋に挟まれ、メコン地域の中心に位置するタイは、そうした国際秩序の実現において地政学的に重要です。地域の主要国であるタイは、メコン諸国による経済協力枠組みACMECSを主導して立ち上げるなどのイニシアティブをとっており、日本とタイはこの地域の発展に向けて共に取り組むパートナーです。今後も地域の安定的で持続的な発展をタイと共に後押ししていきます。また、偽情報の拡散や脱炭素化といった各国共通の新たな課題についても、タイと協力していくつもりです。

 本年は日本ASEAN友好協力50周年になります。1973年以来、我が国とASEANは、「心と心のパートナー」と呼ばれる強固なパートナーシップの下、アジア太平洋地域の平和と安定、発展と繁栄のために緊密な協力関係を築いてきました。12月に東京で開催する日ASEAN特別首脳会議では、新たな関係のビジョンを打ち出す考えです。日本とタイ、日本とASEANは、互いに協力し合い、国際社会が直面する共通の課題に対処しつつ、力や威圧とは無縁で、自由と法の支配を重んじる、豊かな地域を作っていきたいと思います。

 私の出身は日本の静岡県です。静岡県は、タイのアユタヤ時代に日本人町で頭領を務め、両国の交易促進等の功績によりアユタヤ王から高位の官位を与えられた「山田長政」の出身地です。山田長政が両国関係の促進に寄与したように、私も外務大臣として両国関係の発展に貢献していきたいと思います。

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