寄稿・インタビュー
ビエンチャンタイムズ紙(ラオス)への上川外務大臣寄稿(令和5年10月11日)
「ラオス訪問に寄せて 日本国外務大臣」
ラオスの皆様、こんにちは。9月13日に、日本の外務大臣に就任した後、初めての二国間訪問先として、ラオスを始めとする東南アジア4か国を訪問します。豊かな自然と豊富な資源を有する、この美しい国ラオスは、私がこれまでずっと訪れたかった国でした。
ラオスと日本は、長い信頼と友好の歴史を有し、価値や原則を共有しております。ラオスの皆様にとって、日本は実は最も馴染み深い国の一つかもしれません。皆様がお持ちの1万キープ札には、日本の無償資金協力で建設された「パクセー橋」が描かれています。国章にも描かれている、1971年に完成したナムグムダムは「東南アジアのバッテリー」を目指したラオスの代表的な水力発電による電源開発事業であり、日本も支援しました。さらに、日本が建設に携わった、ワッタイ空港とラオス・タイ友好橋をつなぐビエンチャン1号線は、都市環境や文化財保護にも考慮し、完成後、年月を経ても劣化しない質の高い道路として、ラオスの皆様に高く評価いただいたと伺いました。日本として、ラオスの発展・成長に共に取り組んできたことを光栄に思っています。
ラオスは内陸国からこの地域の連結国への発展を目指し、来年のASEAN議長国として「連結性と強靱性の強化」をテーマに取り組んでいらっしゃると承知します。これまでラオスにおいて、連結性の向上に資するインフラ整備のみならず、人材育成、教育、保健、法制度整備、財政安定化、不発弾除去など幅広い分野で協力し、ラオスにおける強靱かつ持続的・自立的な社会経済開発に貢献してきました。
1965年、日本が初めて青年海外協力隊を派遣した国がラオスです。また、2020年5月に施行されたラオス初の民法典は、ラオスと日本の約20年にもわたる法制度整備での協力の集大成でもあります。私自身も、この民法典作成の支援に、当時の法務大臣として携わりました。今後は、従来の協力分野に加え、気候変動、クリーンエネルギーやデジタル等の新しい分野でも、ラオスとの協力を拡大していきたいと考えております。ラオスという国がその可能性を十分に開花させ、ラオス国民の皆様がその果実を享受できるように、日本として、引き続き最大限協力していきます。
今やラオスには160社以上の日本企業が進出しております。ラオスにおける日本企業は、現地での雇用を創出し、生産技術や経営ノウハウ等の技術を移転しながら人材育成を行っており、ラオス経済の持続的な発展を後押ししてきました。同時に、日本による対ラオス投資にはまだ潜在性があり、ラオスの皆さんと共に、より一層の投資拡大に努めたいと思います。両国間の人物交流も活発化してきました。近年、ラオスの日本語学習者数は大きく増加し、留学生やJENESYS等の青少年交流も含め、若い人々の交流もますます活発化してきています。「心と心」の繋がる真の友人であるラオスとの交流を一層深めていきたいと思います。
本年は日本ASEAN友好協力50周年の節目の年です。フアパン県にある桜公園の日本の桜の花のつぼみがほころぶ12月、東京で日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議を開催いたします。日本は長年にわたりASEANに寄り添ってその発展を後押しし、信頼を深めてきました。特別首脳会議は、この貴重な財産を基礎に、日本・ASEAN両者が共有する課題を見据えた将来の日ASEANの関係の方向性と新たな協力のビションを共同で打ち出す極めて重要な機会であると捉えております。
来年はラオスがASEAN議長国となり、2025年には、ラオスと日本は外交関係樹立70周年を迎えることとなります。これらの機会を捉えて、日ASEAN関係を更に強化するとともに、両国の「戦略的パートナーシップ」を新たな高みに押し上げるべく、皆様と一層協力していきたいと考えております。新たな時代を牽引し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序、インド太平洋、さらには世界の持続可能で繁栄した未来を共に作っていく信頼できるパートナーとして、手を携えて、外務大臣として両国の友好関係の発展に向けて全力を尽くしていきたいと思います。