寄稿・インタビュー

「パラグアイの政治・経済の安定性が日本の投資を誘致」

令和5年6月1日

 林芳正日本国外務大臣が、中南米地域歴訪の中で、我が国を訪問している。ウルティマ・オラとの独占インタビューでは、同大臣は両国の良好な歴史的関係を強調し、次期大統領と協力して投資協定の締結と二国間関係の強化に取り組むことを表明。また、200社以上の日系企業が進出しているパラグアイの政治・経済の安定性を評価し、パラグアイが発展に向けて前進することを強く期待していると述べた。
 今回のインタビューを通して、林外務大臣は、物流改善のための浚渫関連機材供与や、電力システムの効率性改善、教育分野における強化プロジェクト、両洋横断回廊の重要性について説明した。また農業や、人工衛星及びデジタル接続についてより一層の発展に向けた協力など、他の分野についても言及した。

 一問一答形式のインタビューは、以下のとおり。

(問)4月30日の選挙のあと、日本とパラグアイの二国間関係に関する見通しはどのようなものか。

(答)日本とパラグアイは100年以上にわたる友好関係を有しており、価値や原則を共有する重要なパートナー。  また、政治・経済が安定していることから、パラグアイは日本にとって魅力的な投資先となっており、200社以上の日系企業が進出。現在交渉中の日パラグアイ投資協定が更なる投資環境の向上に資するものとなることを期待
 4月30日の選挙で選ばれたサンティアゴ・ペニャ次期大統領率いるパラグアイの新政権とも、これまでと変わることなく、様々な分野において二国間関係をますます緊密化させていきたい。
 また、パラグアイは、国際場裡においても日本の心強い友人。国際社会が今、歴史の転換期を迎えている中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けてパラグアイ新政権、パラグアイ国民の皆様と緊密に連携していきたい。

(問)パラグアイにおける直近の政治動向に関して、日本政府はどう見ているか。

(答)まずは、総選挙が平和裏に実施されたことを歓迎するとともに、サンティアゴ・ペニャ候補が次期大統領に選出されたことに祝意を表する。新大統領の指導の下で、パラグアイの更なる発展が図られることを強く期待する。
 パラグアイ国民が選択した新政権と引き続き友好協力関係を構築し、二国間関係の増進のみならず、国際場裏においても国際社会の平和と安定、繁栄のために協働したい。

(問)日本のパラグアイとの協力の方向性は何か?デジタル分野の連結性、気候変動、産業化におけるイノベーション、電力モビリティ等、日本の(パラグアイとの)交流の関心は何か。また、パラグアイの農業の向上のために、どのようなプロジェクトがあるか。

(答)日本は、パラグアイの発展と日・パラグアイの友好関係の一層の強化のため、パラグアイに寄り添った協力を展開。
 開発協力については、日本は農業振興、電力・運輸・水・衛生分野を始めとする経済社会インフラ整備、保健、教育等の多岐の分野にわたりパラグアイの発展に向けた協力を実施。例えば、パラグアイにとり重要産業である農業・畜産業に関しては、生産者の生計向上とともに、国際市場を目指した農牧業バリューチェーン構築に関する協力を実施。その他、河川輸送が最も重要な輸出入経路であるパラグアイにおいて、パラグアイ川の物流が円滑化・改善されるための浚渫関連機材供与や、首都圏の電力システムの効率性改善に資する協力を実施中。パラグアイの未来を支える若者を対象とした、地域と歩む学校づくりなども協力してきた。
 二国間の協力は、開発協力に限られない。電気モビリティは地球規模課題の一つであるゼロカーボンに貢献するものであり、日本も重視。デジタル分野の連結性にも取り組んでいる。これらに加え、日本の対パラグアイ協力の新分野として宇宙分野を挙げたい。2021年に打ち上げられた、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、九州工業大学、JICAによる協力を通じてパラグアイ人技術者が開発したパラグアイ初の人工衛星「GuaraniSat-1」は、昨年、その使命を終えたが、この分野における日本とパラグアイの協力は継続している。
 日本として、引き続き両国にとってウィン・ウィンとなる協力を進めていきたい。

(問)エネルギー分野のポテンシャルに鑑み、パラグアイにおける電力モビリティ向上のための具体的なプロジェクトはあるか。

(答)パラグアイは、豊富な水資源を活用し国内の電力の100%を水力発電で賄っている希有な国である。こうしたパラグアイとの間の、エネルギー分野での二国間協力は、大きなポテンシャルを有すると考えている。
 近年、パラグアイは、安価で豊富な電力により、グリーン水素の生産地として注目を集めつつある。昨年は、東京で開催された水素閣僚会合に公共事業通信省(MOPC)副大臣がビデオメッセージにより参加したほか、”Creating a Hydrogen Society in Paraguay: Possibility of cooperation with Japan“と題するセミナーにおいて日本の有識者が講演した。
 「水素エネルギーの利用促進」をテーマとした日本による技術協力の研修にパラグアイからの参加を想定している。さらに、日本が第2位の拠出国、理事国として活動の中核を担う緑の気候基金を通じ、グリーン水素の製造及びトラック等車両での水素利用に関する実証事業が開始される予定となっている。
 このように、日本としては、水素等の再生可能エネルギーを含む気候変動分野におけるパラグアイへの支援に高い関心を有しており、パラグアイの電力モビリティに関する政策の動向についても関心を持っている。

(問)アジア諸国、特に貴国との関係で、メルコスールに期待する行動は何か。

(答)メルコスールは、域内人口は約3億人、域内GDPは約2.3兆ドルと大きな経済的ポテンシャルを有しており、日本にとり魅力的な市場。
 パラグアイ経済は、メルコスールのバリューチェーンの一角を構成している。豊富な若い労働力、豊富でクリーンかつ安価な再生可能エネルギー、安定的な政治・経済・治安といった、投資家にとって魅力的で良好な投資環境に着目し、自動車の車内配線などに使用されるワイヤーハーネスの製造企業等の日本企業がパラグアイに進出し、製品をブラジルやアルゼンチンに輸出している。また、昨年には、中南米市場を睨んだ製造拠点として、日本の化学繊維製品メーカーがパラグアイに進出した。
 チャコ地方で進んでいる両洋横断回廊の建設プロジェクトは、パラグアイとアジア、パラグアイと日本が連結するものであり、大きな期待を持って注目している。

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