寄稿・インタビュー
岸田総理大臣対面インタビュー(2023年1月11日付、ワシントン・ポスト紙(米国))
「日本の首相は、今日のウクライナは明日のアジアになり得ると警告」
東アジアで戦争の恐れが高まる中、米国の太平洋地域の最も重要な同盟国である日本は、数十年にわたる自制から脱却し、第二次世界大戦以来最大の防衛費増強に着手している。地域の緊張が高まる中、日本の岸田文雄首相は米国に対し、この歴史的だが危険な瞬間の緊急性と重大性を理解するよう求めている。
金曜日にホワイトハウスでバイデン大統領と会談して終了する予定の5か国歴訪の直前、官邸でのロングインタビューで、岸田氏は「世界の安全保障環境は大きく変化している」と私に語ってくれた。「日本は防衛力を強化するという大きな、大きな決断をした。そのために、米国との二国間協力もさらに深めていきたい」と述べた。
日本は、3年に及ぶコロナによる隔離から抜け出し、中国と北朝鮮が軍備を拡大し、ミサイル能力を進化させている近隣地域に直面している、と首相は述べた。米インド太平洋軍のジョン・C・アクイリノ司令官(Adm. John C. Aquilino)は、中国政府による軍備拡張を「史上最大の軍備増強」と表現している。北朝鮮は2022年に90発以上の巡航ミサイルと弾道ミサイルを発射し、しばしば日本国民を脅かしてきた。
12月、岸田内閣は日本の国家安全保障戦略を構成する3つの重要文書の改訂を終えた。1976年以来初めて、日本は防衛費を国内総生産(GDP)の1%に制限しないことになった。それに伴う防衛予算の5か年計画では、2027年までに防衛費は2倍近くになり、GDPの2%にすることが決まっている。これにより、日本の防衛予算は米国と中国に次いで世界第3位となる見込みだ。
その目的は、中国と北朝鮮に対する抑止力を高めることであり、北京と平壌の指導者が、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナで行った暴力的な侵略の行使を検討するのを阻止することを期待しているのだ。
「これは大きな決断であった」と岸田氏は語った。「日本国と、日本国民の生命、生活、産業を我々が守ることができるのか自問しなければならなかった」。
日本はこれまで、長く続く領土問題を解決するために、ロシアに対して融和的な政策を追求してきた。しかし、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降、岸田氏はその姿勢を完全に翻し、日本は今やアジア諸国の中で最もウクライナに支援的な国となっている。ロシアによる無謀な攻撃と核の脅威は、アジアで増長する独裁主義に直面する国々への警告である、と首相は私に語った。
「今日のウクライナは明日のアジアかもしれない」と岸田氏は語った。「武力で現状を変えようとする一方的な試みは許されない」。
戦略文書には明記されていないが、日本の最大の懸念は、中国による台湾への攻撃の可能性である。日本の防衛再編成は、台湾に近い日本の南西諸島に資源をシフトする。日本の防衛改革は、多くの艦船や航空機を購入することではなく、すでに大規模である自衛隊を台湾関連のシナリオで対応できるようにすることに重点を置いている。
岸田氏は11月のバンコクでの会談で、中国の習近平国家主席に直接、台湾の平和と安定を重視することを強調した。私との面談の中で、岸田氏は「台湾の平和と安定は、国際社会にとっても極めて重要だ」と述べた。
ラーム・エマニュエル駐日米国大使は、バイデン政権は日本の防衛力の近代化と米軍との統合を支援し、沿岸警備、サイバー戦争、宇宙、海底の安全保障に関する協力を強化していると私に語った。また、日米は、中国がその経済力を利用して民主主義国家に圧力をかけることができないように、サプライチェーンの移転や重要産業のオンショアリングなど、経済安全保障に関するより高度な連携も追求している。同地域の多くの人々は、パンデミック時に中国政府が重要な公衆衛生物資の独占を利用して他国を恫喝したことを鮮明に記憶している。
エマニュエル氏は、「コロナ、威圧、紛争のすべてが、すべての人に自分たちの前提を見直させた」と述べた。
日本は、防衛的な役割と同時に外交的な役割も強化しようとしている。岸田氏は5月に開催される主要国首脳会議(G7サミット)を自身の出身地であり、1945年に原爆が投下された広島で開催する予定だ。岸田氏は今週、サミットの準備のためにG7諸国の5つの首都を訪問する。
岸田氏とバイデン氏は金曜日にワシントンで会談し、日本が地上目標を攻撃できるようになるトマホーク巡航ミサイルを(イギリスに次いで)アメリカの同盟国として2番目に購入する計画について話し合うことになりそうだ。日本は何十年もの間、この「反撃」あるいは「スタンドオフ」能力を意図的に獲得することを避けてきたが、もうそれはない。
東京で日本の政府関係者や専門家と話すと、日本は攻撃的な戦争遂行能力を自主的に放棄した国としてのアイデンティティから生まれたソフトパワーの一部を犠牲にしているという厳粛な認識を何度か耳にした。しかし、多くの日本人は、中国、ロシア、北朝鮮がエスカレートさせている敵対心に真剣に対応する姿を見せなければ、アジアに紛争が起こることを純粋に恐れているのである。
「残念ながら、これは軍拡競争なのだ」と、東京のシンクタンク、国際文化会館に所属するアジア・パシフィック・イニシアティブの創設者、船橋洋一氏は言う。「しかし、十分な抑止力を獲得できなければ、長期的には抑止力が失敗したときに多くの代償を払うことになる」。
日本が戦後の平和主義的な姿勢から脱した瞬間に、日本の与党である自民党の中のハト派に位置する岸田氏が政権を握っているのは皮肉なことである。実際、昨年7月に暗殺されたタカ派の安倍晋三元首相が推進したこれらの計画に対して、国内で大きな反対意見がないのは、彼のリベラルな誠実さが理由である可能性が高い。
「現実には、一国のリーダーは指導的立場に立つ時代を選ぶことはできない」と岸田氏は私に語った。
日本は紛争に備えることが、紛争を回避する機会を最大化する唯一の方法であるという結論に達した。ロシアと中国の隣国である日本には、欧州かアジアの一方だけに目を向けている余裕はない。東京の視点からは、地球の両側の運命は相互に関連し、切っても切れない関係にあるのだ。
東京にとっての最大の未解決問題は、次の通りだ。欧州での戦争に気を取られ、政治的に分裂したアメリカが、アジアへの注力を強めることを、不安な日本は当てにできるだろうか。実際の答えは誰にもわからない。しかし、日本は今、米国が日本とともに立ち上がるという希望に未来を賭けている。
岸田氏は私に、「アメリカの人々に、もっとインド・太平洋地域に関心を持ち、関与してくれるようお願いしたい」と語った。「そうすることで、この地域の平和と繁栄が約束されると確信している」。