寄稿・インタビュー

「『人類に対する敵対行為』林芳正外務大臣、プーチン露大統領に核戦争を起こさぬよう警告、西側諸国の団結を呼びかける」

令和4年11月25日

 危機に際して、パートナー諸国が団結することを、G7外相は今週ミュンスターで世界に示す方針である。アジア唯一のメンバーである日本も、今回の会合を機に、安全保障政策や経済安全保障の強化などでドイツとの協力関係を強化したい考えだ。日本の林外務大臣は本紙にこのように語った。世界は「ウクライナ侵略、大量破壊兵器の使用リスクの高まりという未曾有の危機に直面」しており、このような状況でドイツは日本にとり、「自由、民主主義、法の支配といった普遍的価値を共有する極めて重要なパートナー」であると林大臣は述べる。
 協力関係を強化する分野のひとつに、経済安全保障の改善がある。コロナ・パンデミックによるサプライチェーンの混乱、そしてとりわけウクライナ戦争勃発後に生じたロシア産天然ガスへの依存による問題によって、G7諸国は「経済安全保障」に注目するようになった。日本政府は以前からこの問題に取り組んできた。今は、他のG7諸国と協力して、「重要物資の特定国への依存を克服するよう」取り組みたいと林大臣は述べる。3日及び4日に開催されるG7外相会合では、経済関係の多元化が主な議題のひとつとなる予定だ。ベアボック独外相は2日、「我々の価値を共有する」地域との協力に焦点を当てると述べている。林大臣によれば、こうした経済的自立と強靭性の概念は、自由で公正な貿易に基づく多角的貿易体制と矛盾するものではない。近年、自国の経済的影響力を濫用しようとする国も見られるようになってきたという。そのような国は「相手に対し、恣意的で不透明な貿易措置を取る」という経済的威圧をかけてきたという。そのため、国際経済秩序を維持・強化するために連携することが不可欠だと林大臣は述べる。米国と中国の間の緊張の高まりを受け、特にハイテク分野で西側諸国の中国からのデカップリングが起こるのではないかという懸念が増している。ミュンスターでのG7外相会合を前に、輸出国であるドイツと日本の外務・防衛閣僚が、いわゆる2+2会合で協議することになっている。林大臣は、経済安全保障の強化に向けて、さらには安全保障政策の分野においても、日独間でどのような協力が可能か、具体的に議論していきたいとの考えである。
 EUとドイツの安全保障政策がインド太平洋地域に目を向けるにつれて、日本政府との戦略的な共通点が増えていく。林大臣は、独政府の「インド太平洋ガイドライン」や、最近の独連邦軍の日本訪問を強調する。昨年はフリゲート艦「バイエルン」がアジアを航行し、今年は独空軍がユーロファイターを同地域に派遣し、豪州での演習に参加するとともに、パートナーである日韓を訪問した。岸田総理は今週、シュタインマイヤー独大統領と東京で会談した後、「欧州とインド太平洋地域の安全保障は不可分」であると述べた。中国は日本が実効支配する島嶼の領有権を主張するだけでなく、必要とあれば台湾を軍事的に併合すると脅している。北朝鮮の核武装はもう一つの脅威である。岸田総理とシュタインマイヤー大統領は、「防衛協力の強化」と外交関係の拡大についても言及した。台湾への脅威の高まりは、日本の意識の中で重要性を増している。林大臣は、「両岸関係については、経済分野を中心に深い結びつきを有している一方で、その軍事バランスは全体として中国側に有利に変化しており、その差は年々拡大する傾向が見られる」と警告し、台湾海峡の平和と安定は、日本の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要であると言う。日本は平和的解決の立場を貫く一方で、同時に軍備を整え、豪州や英国といった米国の同盟国と新たな軍事面での協定を結んでいる。ドイツと同様に、日本にとっても中国への対応は極めて重要であることを林大臣は明確に示し、中国は、政治、経済、軍事等様々な面で、国際社会への影響力を増していると指摘する。林大臣は、「特に尖閣諸島を含む東シナ海情勢や、日本周辺における軍事的圧力の高まり、南シナ海の状況について我が国として大きな懸念を持っている」と説明しつつ、「諸懸案も含め対話をしっかりと」重ねていくと述べる。
 日本は来年、ドイツからG7議長国を引き継ぐ。経済的安全保障の推進に加えて、核兵器に対する戦いが来年の焦点の一つとなる。この点、林大臣は、ロシアとプーチン大統領に対して明確な言葉を用いる。林大臣はドイツ訪問の直前に、核兵器使用の脅しは「断じて受け入れることはできない」とし、「仮に核兵器が使用されることがあれば、それは人類に対する敵対行為である」と述べている。国際社会はその行為を決して許すことはできないとし、日本はG7サミットで他のメンバーと共に、「武力侵略も核兵器による脅しも国際秩序の転覆の試みも断固として拒否する」と述べた。核軍縮を強く支持する岸田総理は、2023年のG7サミットの開催地を、1945年8月に米国の原爆投下で壊滅した故郷の広島に決めたことで、すでに方向性を示している。

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