寄稿・インタビュー

「日本とカンボジア及びASEAN関係の重要性を示す日本の外務大臣へのインタビュー」

令和4年8月15日

(問1)今回のASEAN関連外相会議における日本の狙いいかん。

(答)ASEANは、我が国の長年にわたる緊密なパートナーであり、日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた要でもある。
 3年ぶりの対面での開催という機会を最大限活かして、FOIPと「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」の実現、また、来年の日ASEAN友好協力50周年に向けて、日本の方針や考えをしっかりと発信し、ASEAN各国と緊密な協力を確認したい。
 また、今回の会議では、ロシアによるウクライナ侵略、東シナ海・南シナ海、北朝鮮、ミャンマーを始めとする地域・国際情勢に関して意見交換を行う予定。その中で、我が国の立場を強く訴え、関係国との連携強化を確認する考えである。 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化していく上で、日本はカンボジアと連携していきたい。

(問2)日・カンボジア関係についてどう考えるか。

(答)日本とカンボジアの外交関係は1953年に樹立された。両国の親密さが増したのは、カンボジアの長く困難な内戦を経て、日本がカンボジアの和平と復興に向けて共に歩んだ80年代末から90年代初めの時期。この時の経験が、今も両国及び両国民間の信頼関係の根底にあることを実感している。
 カンボジアにおけるPKO、UNTACから30周年となる本年、両国は既に相互の訪問を伴う2度の首脳会談を行うなど、両国関係は史上最良レベルにある。3月の岸田総理の訪問の機会に、両首脳は共同声明を発出し、今後の二国間協力の方向性を示した。日本は、カンボジアの皆様と共に共同声明に掲げられた協力を具体化し、両国関係をますます発展させていきたい。

(問3)日本はかつてカンボジアの最大のドナー国であり、現在もカンボジアへの支援を続けている。カンボジアに対してこれまでに行ったODAの総額いかん。また、日本の援助で行われた最大かつ最も重要なプロジェクトは何か。

(答)我が国は、長年にわたってカンボジアの国造りを支援してきた。その内容は、港湾・橋梁・道路・上下水道・電力などの質の高いインフラ整備から、法整備支援、市民参加を通じたガバナンス強化、産業人材育成といったソフト面での支援に至るまで様々な分野に及ぶ。ODA累計総額は、円借款が約2070億円(約19.2億米ドル)、無償資金協力が約2260億円(約20.9億米ドル)、技術協力が約950億円(約8.8億米ドル)に達する。
 大規模で重要なプロジェクトは数多く、皆様が普段目にしている500リエル札に描かれた「きずな橋」や「つばさ橋」は象徴的なプロジェクトである。加えて、人々の暮らしに直接裨益するものとして、上水道整備が挙げられる。内戦終了直後の1993年より、首都プノンペンのみならず地方の主要都市で支援を実施してきており、支援総額は480億円(約4.4億米ドル)以上にのぼる。こうした支援はカンボジア人自身による水道運営ができるよう人材育成と合わせて実施してきており、特にプノンペン都においては、24時間の給水サービスを実現するなど、「プノンペンの奇跡」と称される目覚ましい成果を挙げている。
 また、貴国の重要な物流拠点であるシハヌークビル港に対して、我が国は1999年以降、ターミナル整備、専門家派遣、港湾システム整備等を通じて、多角的な支援を行ってきた。そして、今般、自分(大臣)が貴国を訪問する際には、新たな支援を発表したい。こうした協力が現場で共に働く日本人とカンボジア人の信頼関係を生み、両国政府及び国民の間の信頼関係を更に強くしていくと確信している。  

(問4)二国間の貿易に関し、貿易の増加は見られるか。また、カンボジアにおける日本の投資についてどう考えるか。日本からの投資を喚起するためにカンボジアは何をすべきか。

(答)両国間貿易額は、2010年の総額約3.7億米ドルから2021年の総額約23.3億ドルへと、この10年の間に約6倍に拡大している。新型コロナの影響で2020年には一旦減少したが、2021年には回復傾向となった。カンボジアから日本への輸出は縫製品が最も多いものの、最近では電気製品や自動車関連の部品などの工業製品も輸出されるようになっている。
 日系企業の投資は、ショッピング・モールやレストランなどのサービス業から不動産、金融、製造業など多岐にわたる。 加えて、カンボジアへの投資誘致、さらにはカンボジアの持続的な発展や産業の多角化には、専門技術を持った人材が欠かせない。今回の訪問中、私は国立職業訓練校を訪問予定。ここでは、JICAが技術協力を通じて開発した、産業界からのニーズの強い電気分野の人材育成のためのプログラムが行われている。またJICA専門家が常駐して、カンボジアの方々との協力の下、プログラムの運営と改善を図っている。
 こうした取組を通じ、日本は官民を挙げて今後更に両国間の経済的な結びつきを強化していく。
 また、発展した経済関係をマネージし、投資環境を更に向上させるために、日本とカンボジアは年2回「官民合同会議」を開催してきた。日系企業がカンボジアで直面する問題の解決に向けて引き続き協力していきたい。

(問5)カンボジア国民に対するメッセージいかん。

(答)カンボジアの皆様、日本とカンボジアは、来年外交関係樹立70周年を迎える。日本が重視していることは、長年築き上げた人と人との交流を促進し、国民間のつながりを更に強化していくこと、同時に、政府と政府が強い関係を築き、二国間協力を後押ししていくこと。来年は、カンボジアの皆様に、両国の関係の強さを実感していただけるような機会と発信を行っていきたい。
 本日、私は外務大臣として初めてカンボジアを訪問する。滞在中にお会いする多くの方々との親交を深め、カンボジアという国や人々、文化に対する理解を深め、両国関係の発展に生かしたい。プノンペンの美しい街並み、そして皆様の笑顔に出会えることを心から楽しみにしている。

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