寄稿・インタビュー

令和4年7月7日

 ロシアによるウクライナ侵略から4か月が経った。ロシアの暴挙は、国際秩序の根幹を踏みにじり、エネルギーや食料価格の高騰をもたらし、世界経済や人々の暮らしに大きな影響を及ぼしている。
 こうした中、G7エルマウ・サミット、そして、マドリードでのNATO首脳会合は、ポスト冷戦期の次の時代を占う重要な局面となる。普遍的価値を大事にする日本とドイツ、そして、G7、NATOメンバーの結束が今ほど求められている時はない。対露制裁やウクライナ支援に関し、アジア各国へのアウトリーチを含めた日本ならではの貢献を、G7やNATOと連携して積極的に行っていく決意。
 食料・エネルギー危機への対応も喫緊の課題。G7の制裁が食料危機を招いているというロシアの主張は全くの偽り。ロシアがウクライナの生産能力を破壊し、世界の安定供給を阻害していることが真の原因。
我が国は、食料価格高騰対策のため、ウクライナでの農業生産回復支援や、影響を受けている脆弱国への支援を実施しており、G7とも連携して具体的な支援を行っていきたい。
 ウクライナ侵略は、エネルギー安全保障をめぐる環境を一変させ、燃料価格の高騰をもたらした。しかし、我々は、気候変動への取組を緩めてはならない。エネルギー安全保障とのバランスに留意し、日独が重視する水素分野でのイノベーションも加速させていきたい。
 また、今回のサミットでは、私が推進する「新しい資本主義」も議論したい。グローバル化が進展し経済は成長したが、我々は、格差の拡大、気候変動問題等、多くの課題に直面している。局面を転換すべく、我々は資本主義をバージョンアップすべき。
 「新しい資本主義」の下、経済社会が直面する課題を障害物ととらえず、経済成長のエンジンに転換していく。「市場も国家も」、「官も民も」という考えで、官民連携を抜本的に強化してプラットフォームとし、人、技術、スタートアップ、グリーン及びデジタルへの投資を進めていく。
 我々が、権威主義に対峙しつつ、持続可能な成長を実現するためには、こうした「新しい資本主義」の実現が求められている。G7首脳と新たな経済政策の潮流を生み出したい。
 また、日本は、地域及び世界の平和秩序を守り抜くための外交・安全保障上の役割を一層拡大していく。国際法を無視し他国の領土を侵略するという暴挙を目の当たりにし、世界の安全保障観は大きく変容した。ドイツは、防衛予算をGDP比2%に引き上げることを表明し、ロシアの隣国であるフィンランドやスウェーデンは、伝統的な中立政策を転換し、NATO加盟申請を表明した。
 私自身、「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」という危機感の下、対露政策を転換した。東アジアの厳しさを増す安全保障環境も踏まえ、本年末までに新たな国家安全保障戦略を策定し、5年以内に防衛力を抜本的に強化する決意。
 いずれの国もその国の安全を1か国だけで守ることはできない。私自身、首脳外交を活発に行い、強力に「新時代リアリズム外交」を展開し、外交と安全保障を両輪として動かしていく。
インド太平洋地域において、欧州各国やNATOとの協力が決定的な役割を果たす。近年、ドイツが、インド太平洋地域への関心を強めていることを歓迎。次回「2+2」の場などを通じて、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力を進めていきたい。
 現在、核兵器の使用が現実の問題として議論されていることを深刻に懸念。被爆地広島出身の総理大臣として、ロシアが行っているような核兵器の威嚇、使用は、決して許されないことを強調したい。そこに向けた道のりは厳しいものだが、「核兵器のない世界」に向けた機運を再び高めるため、私自身、政治的リーダーシップを発揮し、各国のリーダーと、現実的な核軍縮に向けた道筋について、エルマウで、また、来年の広島G7サミットで議論していきたい。
また、我が国は平和国家として、国連安保理改革を含む国連の機能強化に向けた議論を主導していく。ドイツを始めとしたG7各国とも連携して、国際社会の新たな課題に対応したグローバルガバナンスの在り方についても模索していきたい。
 私はショルツ首相からバトンを受け取り、来年、G7議長国として広島でサミットを開催する。武力侵略も核兵器による脅かしも国際秩序の転覆の試みも断固として拒否するというG7の意思を歴史に残る重みをもって示したい。

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