寄稿・インタビュー
茂木外務大臣書面インタビュー(2021年7月14日付、EFE通信社、東京発)
「日本の外相、中米及びカリブ諸国において「経済関係の強化」を目指す」
茂木外相は、7月15日から中米・カリブ諸国4か国を歴訪する。EFE通信のインタビューの中で、同外相は、今回の訪問で「経済関係を強化する」ことを目指すと述べた。
1週間でグアテマラ、パナマ、キューバ及びジャマイカを訪れる今回の歴訪で、茂木外相は、新型コロナウイルス対策、気候変動、自然災害といった「グローバルな課題における協力を緊密化させる」ことも目指す。
EFE通信社が茂木外相に対し書面で実施したインタビューのテキストは以下のとおり。
【問】今回の訪問の主要な目的はどのようなことでしょうか。また、中米カリブ訪問にこれら訪問国を選んだ理由をお聞かせください。
【大臣】本年1月に外務大臣に就任して初めての中南米訪問でメキシコ、ウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイ及びブラジルの5か国を訪問したのに続き、今回、グアテマラ、パナマ、キューバ及びジャマイカの中米カリブ4か国を訪問します。 中南米9か国への訪問は日本の歴代の外務大臣で最多となります。日本と中南米諸国は長い友好関係を享受する重要なパートナーであり、今年1月と今回の訪問を通じて、この地域で、私が目標とする「包容力と力強さを兼ね備えた外交」を自ら実践したいと考えています。
日本にとって、中米諸国は太平洋を挟んだ隣国です。本年、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア及びコスタリカの中米5か国は独立200周年を迎えます。
この佳節に中米統合機構(SICA)の議長国を務めているグアテマラで二国間会談のみならず第4回日本・SICA外相会合を開催し、中米地域全体との連携を深めたいと考えています。
中南米の経済ハブであるとともに世界の海上物流の要であるパナマは、パナマ運河を通航する貨物量の約14%が日本関係である他、地政学的にも重要な日本のパートナーです。新体制となったキューバとも、様々なテーマについて意見交換を行いたいと考えています。 さらに、日本の外務大臣として初の訪問となるジャマイカでは、二国間会談に加えて、オンラインも活用して、カリブ共同体(CARICOM)14か国と外相会合を開催する予定です。
今回の訪問には、以下の3つの目的があります。第1に、日本は、伝統的な友好関係にあり、重要なパートナーである中南米諸国と、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・拡大のために連携していく方針です。今回の訪問でも、自分から中米カリブ諸国に直接そのような連携を呼び掛けていきます。
第2に、グローバルな課題への対応です。中米カリブ諸国は、台風、地震、火山といった自然災害に常に備える必要があります。
昨年に中米地域を襲ったハリケーンのイータ及びイオタ、今年のセント・ビンセント島での火山爆発では、日本は緊急支援を行いました。今回の訪問でも、防災や気候変動といった地球規模課題で、引き続き連携していくことを確認したいと考えています。
新型コロナへの対応も重要です。日本はこれまで中南米諸国に対して、二国間での医療用機材等の供与、汎米保健機関(PAHO)を通じた医療機材供与、米州開発銀行(IDB)の日本信託基金を用いた保健医療分野等における能力強化や物資提供等、総額115百万ドルの支援を実施してきています。
また、世界的には、COVAXを通じたワクチン供与のために、10億ドルの拠出を約束しています。今回の訪問でも、新型コロナという国際社会共通の課題をいかに乗り越えるか意見交換する予定です。
第3に、経済関係の一層の強化です。貿易・投資は持続可能な発展の鍵です。中米カリブ諸国は地理的優位性や豊かな特産品等それぞれの強みを持っており、日本企業も進出しています。
例えば、最初の訪問先であるグアテマラでは、昨年10月、工業用グローブを生産する日本のショーワグローブ社が1,200万米ドルに上る新規投資を行い、グアテマラ国内の工場を大規模に拡張しました。今回の訪問では、各国との更なる経済関係の強化について具体的に話し合いたいと考えています。
【問】最近、日本は、国連総会においてキューバへの制裁解除に賛成票を投じました。しかしながら、米国は政権交代があったにもかかわらず、制裁を維持しています。日本はキューバへの制裁を終わらせるために同盟国である米国政府との仲介ができるでしょうか。
【大臣】日本とキューバは、400年以上前までさかのぼる交流の歴史、90年以上の外交関係があり、2016年の安倍晋三総理、2015年の岸田文雄外務大臣の訪問を含む要人往来、活発な交流等を通じて関係が進展してきました。
今回の訪問を通じて、先の共産党大会で新体制となったキューバ政府と率直な意見交換を行い、関係を更に深めたいと考えています。
御指摘の国連総会における対キューバ制裁解除に係る決議については、日本は、1997年以降、一貫して賛成票を投じてきています。
米国とキューバの関係は、米国と同盟関係にある日本にとって重要な関心事項であるとともに、地域の安定の観点からも重要な問題であると考えています。米国とキューバの間で立場の違いはあると思いますが、対話を通じて両国関係が発展することを期待しています。
【問】中国は近年、中米、特にパナマにおいて存在感を増しています。中米は通商上及び戦略上の重要なパートナーだと思いますが、日本はこの傾向を懸念しているでしょうか。日本は中国との均衡を保つためにこの地域でのプレゼンスを強化する考えでしょうか。
【大臣】日本と中米諸国は、伝統的な友好関係にあり、重要なパートナーです。政治、経済を含む多岐にわたる分野で協力関係を築いてきています。
日本は、各国が直面する様々な課題に共に向き合い、人材育成、社会経済格差、財政の健全性などにも留意した中米諸国の持続的な成長への協力を重視しています。
そして、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の下、「共に発展」することを目指して、これからも協力していきたいと考えています。
日本はパナマで進められているメトロ3号線(高架モノレール)を含め中米地域での経済・社会基盤の整備を支援しています。インフラ整備の場合、単に初期費用だけなく、ライフサイクルコスト、環境・社会要因、調達の透明性といったことにも配慮し、中米の人々にとって真に役立つ「質の高い」インフラを目指しています。
日本は、これまでに築かれた協力関係や信頼を基礎として、新型コロナ対策を含む地球規模課題への対応を始め、中米との連携を一層強化していきたいと考えています。