寄稿・インタビュー
茂木外務大臣書面インタビュー(2021年5月6日付、ジェチポスポリタ紙(ポーランド))
「米国は我々の共通の主要同盟国である」
日米同盟は日本外交・安全保障の基軸であり、インド太平洋地域と国際社会の平和と繁栄の基盤となるものである。中国との間には様々な懸案が存在しているが、首脳会談や外相会談等のハイレベルの機会を活用して、主張すべきはしっかりと主張し、懸案を一つ一つ解決し、中国側の具体的行動を強く求めていきたいと考えている。茂木敏充外務大臣はジェチポスポリタ紙にこのように語った。
【問】日本の対EU政策において、ポーランド及びV4はどの程度重要ですか。
【茂木外務大臣】今回の私の欧州訪問では、本年後半のEU議長国スロベニア、欧州全体の安定の鍵であるボスニア・ヘルツェゴビナを訪問した後に、英国でのG7外務・開発大臣会合に出席し、締めくくりにV4議長国のポーランドを日本の外相として約3年ぶりに訪問します。
中東欧の大国であるポーランドは、日本にとって、2019年に国交樹立100周年を迎えた歴史的な友好国です。両国は戦略的パートナーとして、政治、経済、文化等、幅広い分野で協力を発展させてきました。
日本は、ポーランドが現在議長国を務めるV4との協力を重視しており、世界に先駆けて2003年から「V4+日本」協力を行ってきました。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化するため、日・EU協力、そしてEU内で存在感を高めるポーランド及びV4との連携強化の意義が一層高まっています。
【問】世界第三位の経済大国の観点から、ポーランドとの関係でより重要なのは経済と外交政策のどちらでしょうか。
【茂木外務大臣】どちらも重要です。ポーランドには300社以上の日本企業が進出し、4万人以上の雇用を創出しています。2019年の日EU・EPAの発効後、日ポーランド間の貿易は対前年比約25%増となり、2020年も新型コロナの下でも底堅く好調を維持しました。
【問】地政学的な観点から、日本はポーランド及び中・東欧地域を戦略的に重視していますか。
【茂木外務大臣】日本とポーランドは共に米国の同盟国でもあります。日本は米国等と共に、基本的価値や原則に基づく国際秩序の構築を目指す「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を推進しており、先般、EUが「インド太平洋協力のための戦略」文書を発表したことを歓迎します。ポーランド及びV4の積極的な支持を得て、EUが結束してインド太平洋地域への関与を深めていくことを期待しています。
V4発足30周年に当たる本年、第7回目となる「V4+日本」外相会合で、「V4+日本」協力の更なる深化やポスト・コロナの秩序作り等について、率直に意見交換することを楽しみにしています。
【問】日米関係において、日本にとって重要となるバイデン政権の政策課題は何でしょうか。
【茂木外務大臣】日米同盟は、日本外交・安全保障の基軸であり、インド太平洋地域と国際社会の平和と繁栄の基盤となるものです。
バイデン政権の外交のキーワードは、「同盟国・同志国の結束」です。政権発足当初から、同盟国・同志国と緊密に連携して、「自由で開かれたインド太平洋」の実現や、新型コロナや気候変動といった国際社会共通の課題、そして力による現状変更を試みる中国への対応に取り組む姿勢を明確にしています。
日本は、バイデン政権との間で、「2+2」や首脳会談といった二国間の対話に加え、日米豪印の協力も進めています。こうした枠組みを通じて、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、同志国とも連携しつつ、日米両国の結束を固め、日米同盟を一層強化していく考えです。
【問】バイデン政権の発足後、米国の外交に新しい変化は見られますか。
【茂木外務大臣】同様に、バイデン政権は、欧州との関係でも同盟関係の再活性化に取り組んでいます。例えば、3月には、ポーランドを含むV4諸国との間で、初の「V4+米」外相会合を実施しました。また6月には、バイデン大統領は初外遊で欧州を訪問し、G7サミットやNATO首脳会議に出席することが発表されました。
このように、日本にとってもポーランドを含む欧州諸国にとっても、米国との強固な信頼関係の下で様々な協力を進め、法の支配に基づく、自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け、積極的な役割を果たしていくことが重要と考えています。
【問】米中対立が激化する中、日中関係の将来をどう見据えていますか。
【茂木外務大臣】中国については、気候変動や新型コロナ対策で中国との協力も模索しつつも、それによって、民主主義、基本的人権の尊重といった普遍的価値で譲ることはないというのが、日米共通の立場です。
先般の日米首脳会談や「2+2」でも、地域情勢につきやり取りをする中で、中国についても意見交換を行うとともに、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有しました。そして、こうした問題を背景に、中国と率直な対話を行うことが必要であること、また、普遍的価値を擁護しつつ、国際関係における安定を追求していくことで一致しています。
【問】中国は最近ますます態度を硬化させているのでしょうか。
【茂木外務大臣】日本と中国は、世界第三及び第二の経済大国であり、重要な隣国です。日本は、日米同盟を基軸としつつ、中国と安定的な関係を構築していく考えです。中国との安定した関係は、日中両国のみならず、地域及び国際社会の平和と繁栄のために重要です。先般行った日中外相電話会談においても、王毅国務委員との間で、両国が共に責任ある大国として地域・国際社会に貢献していくことの重要性を確認しました。
【問】つまり、課題はあっても協力が必要ということですか。
【茂木外務大臣】中国との間では、経済や気候変動など協力すべき課題はありますが、同時に、一方的な現状変更の試みや、香港及び新疆ウイグル自治区の人権状況等、日本のみならず国際社会が共有する懸念はしっかり表明していくことが必要です。
中国との間には様々な懸案が存在していますが、引き続き首脳会談や外相会談等のハイレベルの機会を活用して、主張すべきはしっかりと主張し、懸案を一つ一つ解決し、中国側の具体的行動を強く求めていきたいと考えています。