寄稿・インタビュー

「日本とUAEの協力により水素及びアンモニアの国際サプライチェーンが構築される可能性:外務副大臣」

令和3年3月5日

水素及びアンモニア分野における日UAE協力が、国際サプライチェーンの構築につながる可能性があると鷲尾副大臣はWAMに対して述べた。
 
「実際、UAEは原油・ガスだけでなく日照にも恵まれているため、将来的に高い水素供給のポテンシャルを持っています。」と、WAMからのEメール取材に対し、鷲尾英一郎外務副大臣は述べた。
 
専門家は、温室効果ガス排出量を減らす大きな助けとなる水素のことを「将来の石油」と呼ぶ。鷲尾副大臣は、クリーンな水素の生産性を高めるためのUAEの取り組みについて触れた。
 
「ブルー水素」とは、従来の水素よりクリーンな水素のことを指し、二酸化炭素を大気に排出する前に回収・保管、あるいは再利用することにより温室効果をゼロにするもの。さらにクリーンな水素は「グリーン水素」と呼ばれ、これは太陽光や風力などの再生可能エネルギーを用いることで、そもそも二酸化炭素を排出することなく生産される水素である。
 
<水素・アンモニア分野における日UAE協力>
「一方、日本は水素・アンモニアを供給する技術を模索しています。例えば水素については、昨年、我が国では、20MWの太陽光発電による世界最大級の10MWの水電解施設を福島で稼働しました。」と鷲尾副大臣は述べた。
 
今年1月には、経済産業省とアブダビ国立石油会社(ADNOC)との間で、燃料アンモニア及びカーボンリサイクルに関する協力覚書(MOC)が署名された。
 
「このように、UAE・日本間の協力の素地はできていると考えます。」と鷲尾副大臣は協調した。
 
副大臣は、ポストコロナの経済復興策として、「いわゆるグリーン・リカバリー」の動きが世界で加速していると指摘する。
 
「この点で言えば、水素やアンモニアの国際サプライチェーン構築に関して、日・UAE両国で協力できる可能性があると考えています。」と鷲尾副大臣は述べた。
 
副大臣のコメントは、UAEにおける水素生産にかかわる昨今の開発の動きに沿ったものである。
 
<UAEにおける昨今の水素イニシアティブ>
スルターン・アル・ジャーベル産業・先端技術大臣兼ADNOCグループCEOは、今年1月、UAEは「エネルギー転換におけるゲームチェンジャー」となりうる水素等の新たな燃料の可能性を探っている、と述べた。
 
ADNOCは現在の産業プロセスの一環として既に年間30万トンの水素を生産しており、「ADNOCはアジア・欧州マーケットの可能性を探っている。これらのマーケットが発展するにしたがい、UAEをブルー水素の主要供給元として位置付けるようビジネスを立ち上げていく。」とジャーベル大臣は説明した。
 
1月17日、ムバダラ、ADNOCとADQの3社は、国際市場においてアブダビをグリーン水素・ブルー水素分野(低炭素水素分野)の信頼すべきリーダーとして確立すべく、アブダビ水素アライアンスを設立した。同3社は今後、UAEにおいてグリーン水素経済を作り上げるために協力し合う。
 
<日本は脱炭素化をけん引する存在となるか>
日本は現在、現実的かつ着実に再生可能エネルギーを最大限導入するための具体的な計画策定に取り組んでいる、と副大臣は続けて述べた。
 
「日本は2050年までにカーボンニュートラルを目指す旨宣言し、再生可能エネルギー最大限導入を中心とするエネルギー転換へのコミットメントを示しました。」と副大臣は述べた。
 
副大臣は、IRENA第11回総会への参加についても触れた。今次総会は、アブダビ・サステナビリティ・ウィーク(ADSW)の一環として今年1月にバーチャルで開催されたものである。なお、ADSWは、マスダール社が世界の持続可能な開発を促進するために毎年開催しているグローバルイベントである。
 
日本は、調整力の確保や電力システム全体のコスト評価、蓄電池やモーター等に使われる鉱物資源の確保、そして、2030年代に迎える太陽光パネル等の大量廃棄への対処といった重要課題に真正面から向き合っている、と副大臣は説明した。
 
「我が国はこれらの課題を技術とイノベーションによって解決し、世界の脱炭素化に向けた取組をリードしていきたいと考えています。」と副大臣は強調した。
 
<日UAE関係>
コロナ禍においても、日本とUAEは、「包括的・戦略的パートーナーシップ・イニシアティブ(CSPI)」の下、首脳や閣僚級を含む様々なレベルでの電話会談やバーチャル形式の協議等を通じ、様々な分野の協力案件を着実に進めてきていると副大臣は指摘した。
 
副大臣は、日UAE関係深化の例として、UAE火星ミッション(ホープ・プローブ)が日本の種子島宇宙センターから2020年7月に打ち上げられたことと、投資の促進及び保護に関する協定が2020年8月に発効されたことを挙げた。
 
「来年の外交関係樹立50周年も見据え、今後も二国間関係の強化に一層尽力したいと考えています。」と副大臣は述べた。
 

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