寄稿・インタビュー


(2019年11月4日付)

「日本の外務大臣,米国の自動車関税撤廃に向け進展を見る」

令和元年11月7日

 新しい日米貿易協定は,日本の産業にとっての勝利であり,米国の自動車関税撤廃への道を開く,と同協定の交渉責任者である茂木外務大臣はフィナンシャル・タイムズ紙によるインタビューにおいて述べた。

 米国との貿易協定の交渉妥結後,9月に外務大臣に就任した茂木敏充氏は,新しい日米貿易協定を「大きな成果」とし,両国は第2段階の交渉においてどの分野を対象とするか今後協議する予定であると述べた。

 今回の協定が日本の自動車や自動車部品に対する米国の関税を引き下げることなく,米国からの牛肉その他の農産品に対する日本の関税を引き下げる内容であることについて日本国内で一部から批判を受ける中,この茂木大臣の発言は,彼がいかにしてこの協定について国会の承認を得ようとしているかを示している。

 安倍総理と緊密な関係にあり,将来の総理候補とも見られている茂木大臣は,米国は輸入される日本車に対して米国通商拡大法232条に基づく国家安全保障を理由とする関税を課したり,数量割当を追求したりしないということにつき「非常に明確な」保証を与えたと述べた 。

 このような関税が課されていた場合,日本のいくつかの大企業は壊滅的な打撃を受けていただろう。

 茂木大臣は,自動車に対する米国の関税撤廃という長年の目標を達成することはまだ可能であると指摘し,「自動車と自動車部品については,交渉を継続するだけでなく,関税を撤廃するためにさらなる交渉を行うと協定に明確に記載されている」と述べた。

 米国の関税は,オバマ前大統領の下で交渉された12か国による環太平洋パートナーシップ協定(TPP)で引き下げられることになっていたが,同協定からの脱退は,トランプ大統領が就任直後に行ったことの一つであった。残りの11か国がTPPを発効させたため,米国の農産物生産者は日本市場で販売する際に不利な立場に置かれることになった。トランプ米大統領の圧力を受け,日本は小規模な二国間協定を交渉することで合意し,最終的には,自らによる農業関税の引き下げを,それよりも控えめな工作機械や楽器などの分野における米国による譲歩と引き換えに受け入れた。「農業に関し,関税削減のレベルは過去の貿易協定の範囲内であり,TPP11が既に発効していることから,これは米国が他の国と比較して不利な立場ではなくなることを意味する」と茂木大臣は語った。

 茂木大臣が直面する最大の問題の一つは,第二次世界大戦中の強制労働に対する損害賠償を認めた韓国の裁判判決を巡る同国政府との争いだ。茂木大臣は韓国に対し,損害賠償の支払いのために日本企業の資産を現金化しないよう警告した。彼は,韓国が現金化に踏み切る場合には,報復措置に出る可能性をほのめかし,日本政府はすべての選択肢を検討すると述べた。

 「現金化は一方的に状況を悪化させ,事態をより深刻にするだろう」,「我々は韓国政府に対し,国際法に違反した状況を改善するよう強く求める」と茂木大臣は述べた。

 日本は,戦争に関連するあらゆる請求権は1965年の協定によって解決されたと主張し,国際仲裁を求めてきた。 韓国は,個人の請求権は協定の対象ではないと主張している。

 「今後,日本企業による正当な経済活動を保護する観点から,すべての可能な選択肢を検討し,断固とした対応をする」と茂木大臣は述べた。しかし,茂木大臣は,日本が韓国の半導体産業に不可欠な化学物質につき輸出管理を実施し,韓国が日韓秘密軍事情報保護協定を破棄して以降激化するこの問題を日本は外交的に解決することを望んでいると強調した。「ボールは明らかに韓国政府側にある」と茂木大臣は述べ,「韓国側から,問題を改善するための具体的な提案があれば,もちろんそれらに耳を傾ける用意がある」とした。

 安倍総理は最近,李洛淵首相と会談を行った。両者は,この問題を解決するために対話が必要であることに同意した。


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