寄稿・インタビュー

バンコクポスト紙(タイ)による安倍総理大臣書面インタビュー


(2019年11月4日付)
>「変化する情勢によって試される密接な関係」

令和元年11月6日

 日本とASEANは42年以上にわたり公式の対話を行っている。第22回日ASEAN首脳会議や第22回ASEAN+3首脳会議を始めとする一連の重要な首脳会議を前に,日本の安倍晋三総理はバンコクポストによるインタビューに応じた。

【問】今回のタイ訪問に係る所感いかん。

【安倍総理大臣】今回,タイを6年ぶりに訪問することができ,大変嬉しく思います。私は,2012年末に再び総理大臣に就任してから最初の外国訪問先として,2013年1月にタイを訪問しました。

 それ以前にもタイとは深い関わりがありました。2009年には「アジアの子供たちに学校をつくる議員の会」の活動の一環で,チェンマイ県の山奥の学校を訪問したこともあります。また,泰日工業大学の設立にも関わり,これまでに同大学を3度訪問し,日本の図書を寄贈したこともあります。

 タイを訪れる度に,その目ざましい経済発展に感嘆の念を新たにしています。タイは,ASEANの成長の模範です。タイはまた,東南アジア最大規模の日本企業の拠点であり,日タイ両国の経済パートナーシップは非常に緊密です。

 両国の交流は経済面にとどまりません。昨年,日本を訪問したタイの方々は113万人,タイを訪問した日本人は164万人を数え,共に過去最高を更新しました。日本からタイを含むASEAN諸国には,「文化のWAプロジェクト」により2014年から日本語教師の派遣や文化交流事業を実施しています。今後も日本とタイとの間の交流を一層強化していきます。

 今年は,日本では天皇陛下の即位礼正殿の儀,タイでは国王陛下の戴冠式が行われ,両国の皇室・王室が揃って慶事を迎えました。改めて心からのお祝いをお伝えするとともに,このような記念すべき年に再びタイを訪問できることを格別に嬉しく思います。

【問】「インド太平洋に関するASEANアウトルック」における具体的なプロジェクトの中で日本が推進していきたいと考えるものは何か。

【安倍総理大臣】地域の平和と繁栄の礎は,法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋にあります。そして,太平洋とインド洋,「2つの海の交わり」にはASEAN諸国が位置しています。

 今年の6月,ASEAN自身が,一体性と中心性を発揮し,「インド太平洋に関するASEANアウトルック」,AOIPを発表したことは,非常に画期的です。日本はASEAN諸国による,この記念すべき成果を大いに歓迎します。

 日本は,2016年に私が「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを発表して以来,(1)法の支配,航行の自由,自由貿易等の普及・定着,(2)経済的繁栄の追求,(3)平和と安定の確保に向けて取組を重ねてきました。

 例えば,巡視船供与等を通じた海上法執行能力の強化やタイを含むメコン地域に裨益する東西及び南部経済回廊の開発を通じた連結性の強化に向けた具体的な協力を重ねてきました。今年締結された日ASEAN技術協力協定は,このような協力を力強く前進させるものです。

 AOIPの下での協力のために,日本は今まで以上に,法の支配に基づく海洋安全保障の強化,質の高いインフラを通じた連結性の強化,違法漁業対策を含む海洋資源の持続可能な利用といった分野で,考え方を共有する全てのASEANの国々と共に取り組んでいきます。アジアの平和と繁栄に向けてASEAN各国と協力していくことを楽しみにしています。

【問】日本は,電子商取引における自由なデータ流通を確保するために,ASEANとの間で大阪トラックをどのように進めていくのか。

【安倍総理大臣】急速に進行するデジタル化の潜在力を最大限活用するには,それに後れを取らない国際的なルールが不可欠であり,そのような環境をつくり出すには,データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(DFFT),すなわち信頼たるルールの下でデータの自由な流通を促進しなければなりません。

 日本は,このような考えの下,本年6月,G20大阪サミットの機会に,タイを含む27か国のリーダーの参加を得て,「大阪トラック」を立ち上げました。

 「大阪トラック」を前に進めるため,現在,WTOにおいて電子商取引の貿易関連の側面に関する有志国によるルール作りが進められています。80か国に上る有志国の中には,ASEANからもタイを始め,シンガポール,ラオス,マレーシア,ミャンマーが名を連ねています。

 日本は,タイを始めとするこれらASEAN諸国と緊密に連携しつつ,「大阪トラック」の下,来年6月の第12回WTO閣僚会議までに実質的な進捗を得られるよう,取組を強化していきます。


このページのトップへ戻る
寄稿・インタビューへ戻る