寄稿・インタビュー
茂木外務大臣書面インタビュー (2021年8月19日付、ドストール紙)
日本国外務大臣、ドストール紙独占インタビュー
茂木大臣:国王の地域安定化に向けた取組に敬意
令和3年8月24日
ハーシム王家がエルサレムの守護者であることから、和平の実現にヨルダンの役割は重要
- 国王による訪日が両国の友好関係を更に強固に
- 「自由で開かれたインド太平洋」の実現を目指す
- ヨルダンは「困った時の友こそ真の友」であることを証明
- 日本は難民問題に対するヨルダンの努力への支援を継続
- ヨルダンは「平和と繁栄の回廊」構想の重要なパートナー
- ヨルダンの役割は地域の安定化に不可欠
- 「二国家解決」を支持する日本の姿勢に変わりない
- ハーシム王家がエルサレムの守護者であることから、和平の実現にヨルダンの役割は重要
(ニーヴィーン・アブドゥル=ハーディー記者)
- (1)ヨルダンと日本との関係の維持・深化のため、茂木敏充日本国外務大臣はヨルダンに到着した。今回の公式訪問において、ヨルダン政府高官等との会談が予定されている。
茂木大臣は、和平実現において、エルサレムにおけるハーシム王家の守護者としてのヨルダンの役割は極めて重要と考えており、アブドッラー2世国王陛下の地域安定化に向けた取組に敬意を表すると述べた。
また、茂木大臣はドストール紙の独占インタビューにおいて、ヨルダンは、東日本大震災の際には医療支援チームを派遣し、コロナ禍ではマスク及び医療物資を提供するなど、まさに「困った時の友こそ真の友」であることを実感したと明かした。
さらに、難民問題におけるヨルダンの役割の重要性を指摘。130万人を超えるシリア難民を受け入れるヨルダンの対応に敬意を表するとともに、ワクチン接種キャンペーンにおいて難民に対しても平等に接種を推進するといった取組に感銘を受けていると述べた。 - (2)以下は、ドストール紙による茂木外務大臣への独占インタビューの全文である。
- (問)ヨルダン・日本の二国間関係の現状をどのように評価していますか。また、二国間関係の強化や、コロナ対策を含む協力の裾野の拡大の方策に関し、どのように考えていますか。
- (答)
- 1954年の外交関係樹立以来、日本の皇室とヨルダン王室は伝統的な友好関係にあります。アブドッラー国王による訪日は10回以上にのぼり、両国は大変良好な関係を維持しています。
- 両国は、常に助け合ってきました。日本は、長年に亘りヨルダンに対し幅広い分野で経済協力を行ってきた他、新型コロナ対策においてはCOVAXを通じたワクチンの供給や医療機材の供与、雇用創出を促す職業訓練等の支援を実施してきました。
- また、ヨルダンから日本に対しても、東日本大震災の際の医療支援チームの派遣やコロナ禍を受けたマスク及び医療物資の支給など、様々な支援を頂き、まさに困った時の友こそ真の友であることを実感した次第です。
- 両国は戦略的パートナー関係にあり、新型コロナ対策を含む経済協力、中東地域の安定化、また、「自由で開かれたインド太平洋」の実現を見据え、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化のため、今後更に協力を深化できる素地があると確信しています。
- こうした考えの下、この度、ヨルダンを訪れてサファディ副首相兼外相と第2回外相間戦略対話を実施し、更なる協力関係の強化に向けて協議したいと思います。
- (問)アブドッラー2世国王のリーダーシップの下、平和、とりわけパレスチナ問題は、ヨルダンの重要課題です。パレスチナ問題やエルサレムにおけるイスラム・キリストの聖地を守護することに関するヨルダンの役割をどのように考えますか。また、ハーシム王家の守護権に関してどのような考えを持っていますか。さらに、二国家解決の原則に基づく公正で包括的な和平を実現するための方策は何でしょう。
- (答)
- 中東和平について、地域の安定化に欠かせない存在であるヨルダンの様々な努力を極めて高く評価しています。日本としては、イスラエルと将来の独立したパレスチナ国家が平和裏に共存する「二国家解決」を支持する姿勢に変わりなく、ヨルダンと協力して中東和平の実現に向けて尽力していきます。 また、日本は、エルサレムにおける、ハーシム王家の守護権に基づくヨルダンの役割を極めて重要と考えており、アブドッラー2世国王陛下の地域安定化に向けた取組に敬意を表します。
- 日本が主導する「平和と繁栄の回廊」構想は、二国家解決に向けて信頼醸成を図る、ユニークな取組です。この構想は、日本、パレスチナ、イスラエル、ヨルダンの4者による地域協力によりパレスチナの経済的自立を促進するもので、これまでパレスチナ民間企業18社の工場が操業を開始し、約200名の雇用を創出しています。ヨルダンはこのプロジェクトの重要なパートナーです。
- 日本は、長年に亘り友好関係を築き、中東諸国から得てきた信頼を土台として、このような独自の取組を継続し、粘り強く二国家解決の実現に向けて貢献していきます。
- (問)ヨルダンは特にシリア難民を始め、多くの難民を受け入れることの負担を負っています。このヨルダンの立場をどのように見ていますか。また、この観点からヨルダンへの支援の方向はありますか。
- (答)
- シリア危機は今年で11年目を迎え、日本は現状の固定化と、危機解決に向けたモメンタムの後退を懸念しています。危機の長期化に加え、特に、新型コロナ流行後は、ヨルダンを始め、難民を受け入れる周辺国自身が一層厳しい経済・社会状況に直面する中、最も脆弱な人々を含め誰一人取り残さない対応が不可欠です。
- このような中、我が国は、130万人を超えるシリア難民を受け入れるヨルダンの対応に改めて敬意を表します。また、ヨルダンがそうした状況の下で経済的困難を乗り越えるべく、包括的な改革努力を行っていることを高く評価しています。さらに、ワクチン接種キャンペーンにおいて難民に対しても平等に接種を推進するといった取組に感銘を受けています。
- 我が国は、ヨルダンの持続的成長のため、2018年には3億ドルの開発政策借款に署名し、2020年12月にその支払いを全て完了しました。加えて、2019年2月のロンドン会合では、4.3億ドルの追加支援を表明しています。
- シリア難民に加えて、ヨルダンには多数のパレスチナ難民も生活していますが、日本はUNRWAを通じて、彼らに対する支援も積極的に実施しています。JICAの支援によるアラビア語母子手帳の導入は、パレスチナ難民の母子の健康を守るものとして大変評価されています。難民問題は、受入国だけの問題ではなく、国際社会全体の問題であり、日本は引き続きヨルダンの努力を支えていきます。